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池上エリアリノベーションプロジェクト|池上を紡ぐvol.03「自分の行動が、新しい地域を作る」おおた助っ人の鈴木さん

東京都大田区、池上(いけがみ)駅。池上本門寺の門前町として発展してきた、どこか懐かしさを感じるまちです。大田区と東急株式会社の公民連携基本協定に基づく「池上エリアリノベーションプロジェクト」は、池上の魅力を掘り起こし、まちをさらに活性化させるために発足されました。
本プロジェクトの企画として立ち上がったのが、「池上を紡ぐ(つむぐ)」。長年池上で商売してきた方の歴史や想いを、丁寧に糸をつむぐように、池上で新しいことを始めたい次の世代に繋げていきたい。そんな気持ちで、この企画は誕生しました。

人から人へ、リレー形式に取材を重ねていく「池上を紡ぐ」。ご縁が糸のようにつむがれて、あっという間に本企画の第三弾目となりました。

前回お話を伺ったのは、新聞販売店の宮崎さん。そして、宮崎さんからご紹介いただいた方が……。「不動産クリニックⓇ 株式会社常盤不動産」の代表取締役でありながら、一般社団法人「おおた助っ人」の代表理事も務める鈴木豪一郎(すずき ごういちろう)さん!

お話の中で伝わってきたのは、会社の枠を飛び出してまで地域の困りごとを解消しようと奔走する、鈴木さんの厚い人情でした。

会社のお仕事内容は? おおた助っ人の取り組みは? 地域に溶け込むコツを教えて! などなど、詳しくお聞きしました。

各分野のスペシャリストが、困りごとを解決

―― まずは、鈴木さんが代表を務める「不動産クリニック 常盤不動産」の業務内容について教えてください!

基本的な業務は、不動産業をイメージしたときに多くの方が思い浮かぶものだと思いますよ。家を貸したり、売ったり、管理したり。

よくある不動産と違う点は、弊社の場合はコンサルティングの目線が入っているんです。「本当に土地を売ったほうがいいのか?」「本当に家を貸したほうがいいのか?」まで考えて、お客さまにとってベストな選択肢を提案しています。

―― 会社を立ち上げたのは、いつ頃だったんですか?

2009年設立なので、起業してもう13年目ですね。

生まれと育ちは東京都大田区の六郷という場所ですが、独身時代を池上で過ごし、結婚後も変わらず池上に自宅を構えたので、会社の場所も慣れ親しんだ池上を選びました。

“職住近接(しょくじゅうきんせつ)”ってやつです。職場と住居の距離が近くて、仕事も育児も無駄なくできる!

―― “不動産”“クリニック”が合体しているのを初めて見ました。

起業したときに、物件の売買や管理だけではなく、お客さまが抱えている困りごとをすべて解決できる会社にしたいと思ったんです。

いろいろな診療科目が入っているクリニックみたいに、「不動産関連の困りごとは、とにかくこの会社に相談すれば安心!」とお客さまに思っていただこうと。

そのために、弊社には各分野のスペシャリストを集結させました。賃貸が得意な人、売買が得意な人、物件や土地の管理が得意な人……。お客さまの困りごとに合わせて、適したスキルを持つ人間が対応できる仕組みを作ったんです。

―― 困りごとに合わせて、その道のプロが相談に乗ってくれるんですね。最近だと、どんなご相談がありましたか?

お客さまのご相談内容には守秘義務があるので、詳しくは言えないですけど……。土地や物件の相続問題や、マンションやアパートの空室対策は、やっぱり多いです。

夫婦問題のご相談もありますよ。DV(ドメスティック・バイオレンス)を受けている方から「アパートを借りたいけど、自分は働いていなくて、保証人もいない。他の不動産では断られたけど、どうにか部屋を借りられないか」とご連絡が入ったり。

もう、どうにか助けてあげたい! と思っちゃうんですよ。困っている人がいると、なにかせずにはいられない。自分にできることなら、なんでもやってあげたいんですよね。

娘の入院。そして生まれた「不動産クリニック」

―― 「お客さまの困りごとをすべて解決できる会社にしたい」と思ったのは、なにかきっかけがあったんですか?

それは、僕の子どもが関係しています。僕は今、子どもが7人いるんですけど。

―― 7人! 大家族ですね。

そうですね(笑)「お子さまが多くて大変ですね」と言われることもあるけど、僕からしたら人生の苦労は7分の1、幸せは7倍です。子どもには、本当にパワーをもらっています。

過去にさかのぼって、僕が38歳のとき。朝起きたら、当時1歳半だった三女の太ももに、蚊に刺されたような小さな痕があって。「刺されちゃったのかな? ここカイカイだねぇ」なんて言って、そのときはあまり気にせずに起業の準備で僕は外出したんです。

そしたら、お昼ごろに妻から電話があって。慌てた声で「三女が救急車で運ばれた」って言うんです。もう、びっくりしちゃって。

―― それは驚きますよね! 救急車で運ばれて、その後は……?

僕が病院に着いたら、治療室の前にたくさんのお医者さまがずらりと並んでいて。「小児科の〇〇です」「皮膚科の〇〇です」「アレルギー科の〇〇です」と名乗り終えてから、お医者さまのひとりが、僕に言ってくださったんです。

「各部署の専門家を招集して、娘さんの病気を特定します。なんとか最善を尽くします」と。その言葉を聞いて、この人たちにすべて託そう、お任せしようと思えたんです。

結果的には、2週間の入院で回復して、無事に退院できました。僕が虫刺されだと思った痕は、蜂窩織炎(ほうかしきえん)という、細菌感染によって起こる炎症だったんです。

娘がどうにかなってしまうんじゃないかと怖かったし、不安だったけど……。娘を治療してくれたお医者さまたちが、本当に頼もしかったんですよ。

―― その経験が、会社の成り立ちにも関わっている?

そうです。たくさんのお医者さまが娘を助けてくれたように、不動産業でも各分野のスペシャリストが集まって、お客さまを助けてあげられないかって。

そうして生まれた言葉が、「不動産クリニック」です。

―― 「クリニック」……。確かに、お医者さまのようにこちらが困っていることを診察して、適したアドバイスをくれそうな響きがあります!
鈴木さんは、一般社団法人「おおた助っ人」の理事も務めていますよね。おおた助っ人では、どのような活動をしているんですか?

「おおた助っ人」では、大田区民に対して、困りごとを解決するための無料相談会や勉強会を開催しています。

司法書士・弁護士・税理士・行政書士・一級建築士・宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナーなど、各分野の専門家で構成されているんですよ。

―― なんだか、常盤不動産と仕組みが似ているような? 会社の外でも、地域の方の困りごとに対して活動しているんですね。

そうです。そもそも「おおた助っ人」を立ち上げた理由も、さまざまな困りごとを解決するためには、不動産業の力だけではできないと確信していたからです。

法律や税金など、不動産以外の方向に特化している人が絶対に必要だと思って。会社を設立した時期とほぼ同じタイミングで、「おおた助っ人」を立ち上げたんです。

―― おぉ……! もし社内で対処できない問題があったとしても、「おおた助っ人」でカバーできるんですね。

そうそう。僕にできないことでも、僕が繋がっている人は解決できるかもしれない。僕に相談してくる人も、なにもすべて僕が解決してくれると期待しているわけではないんですよ。

「鈴木さんに相談すれば、わからなかったとしても、詳しい人と繋げてくれるでしょ?」と思っているんです。そう思っていただけるのは、うれしいことですよね。

自分の行動が、新しい「地域」を作っていく

―― 「池上で新しいことを始めたい」と思っている方の中には、未知の世界に飛び込む不安を抱えている方もいると思うんです。鈴木さんは、起業の際に不安はなかったですか?

僕が起業したときは、ちょうどリーマンショックだったんです。世界的な金融危機で経済は落ち込み、家は売れない。不動産業も大打撃を受けました。そりゃあ、不安でしたよ。

不安なとき、僕は想像するんです。「行動したら得られる可能性のある未来」「行動しなかった先の未来」。どちらも想像して、掴みたいのはどっち? と自分に問いかける。

想像したふたつの未来の差が大きいほど、自分のモチベーションになるから。不安で尻込みするくらいなら、やらない。本当にやりたいなら、もう飛び込むしかないですよ。

―― 自分が進みたい未来を想像して、それをモチベーションにするんですね。
今回の取材に鈴木さんをご紹介いただいたのは、新聞販売店の宮崎さんでした。宮崎さんとは、どのようにお知り合いになったんですか?

宮崎さんとも、やっぱり困りごと関連です(笑)不動産関連で、宮崎さんが悩んでいた時期があって。巡り巡って縁が繋がり、宮崎さんから相談を受けることになったんです。

問題は無事に解決して、そこから交流が始まって。もう、10年以上のお付き合いになりますねぇ。

―― 初めての土地に飛び込む場合、最初から地域の方たちに頼りにされる機会も少ないかと思うんです。どうすれば、自然に地域に馴染めるんでしょうか?

「早く地域に馴染もう!」と無理に意気込まなくても、別にいいと思いますよ。

僕が目指しているのは、地域を”作る”ことなんです。”地域に入ろう、属そう”とはあまり思っていない。

「僕の活動で、地域をこんな風に活性化できる。僕の子どもたちがこの地で過ごすことで、こんなドラマが生まれる」。僕は、そんな考え方をしています。

すべての自分の行動が、地域づくりに繋がるから。自分にはなにができるのか、どうすれば地域に貢献できるのか。その答えを、自分の中に探してほしいなと思います。

―― 「地域を作る」という言葉は、これから新しいことを始める方のやる気にも繋がると思います! では、次にインタビューする方のご紹介をお願いします。

フェイシャルサロン「メナード」を経営している、エステティシャンの丹羽さんを紹介させてください。5人の子育てをしながら、数年前に池上で起業された方です。

池上に住みながらサロンを運営して、さらには子育てもしているので、まちに根差した活動や思い出などをお聞きできると思いますよ。

一般社団法人 おおた助っ人
東京都大田区池上3-39-12
http://ota-suketto.org/

不動産クリニック 株式会社常盤不動産
東京都大田区池上3-39−12 常盤ビル4F
https://www.tokiwa-r.co.jp/

池上エリアリノベーションプロジェクトは、2022年3月をもって終了いたしました。公式サイトの運用停止にともない、取材記事をこちらに移動しています。

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