いちごはいちご|大人に刺さる「おかあさんといっしょ」の歌
仕事帰りにコンビニに立ち寄ると、いつの間にかいちごスイーツが並んでいた。
もういちごの季節なのか。
いちごの季節になると、必ずある歌を思い出す。
小さい頃、「おかあさんといっしょ」で聞いた「いちごはいちご」という歌だ。
2分ほどの短い歌だ。
簡単に歌詞を説明する。
いつかショートケーキの上に乗りたいと思っているいちごの女の子がいる。
すくすくと成長し、夢を叶えるために旅に出る。
でも、なぜか彼女は鍋の中に入れられてしまう。
そのまま砂糖と煮込まれジャムになってしまい、結局ショートケーキの上に乗る夢は叶わなかった。
夢は叶わなかったけれど、ジャムはジャムで幸せかなと思うところで歌は終わる。
小さい頃は「ジャムおいしいよね。」としか思わなかった。
でも、大人になってから、歌詞がかなり深いと思った。
小さい頃は誰でも大きな夢を持っている。
スポーツ選手、アイドル、漫画家、俳優などなど。
みんなショートケーキの上で輝くいちごになりたい。
そして自分は間違いなくショートケーキのてっぺんに乗ることができると信じている。
切り刻まれてスポンジとスポンジの間の生クリームと一緒に入れられたり、潰されて煮込まれてピューレやジャムになりたいとは誰も思わない。
でも、成長するとだんだん現実が見えてくる。
自分の限界もわかってくる。
ショートケーキの上に乗れるのは、ごく一部の限られた者だけだと。
形がきれいで、色が鮮やかで、どこにも傷がなくて、ツヤツヤと光り輝いていなければならない。
全てを兼ね備えたいちごだけがそこに乗ることを許される。
だから、多くのいちごはショートケーキの上に乗ることができない。
ほとんどは鍋の中でその他大勢のいちごと一緒くたにされ、ジャムにされる。
仕方がないことだ。
望んでも、どんなに努力しても夢が叶わないことはある。
もとから才能がなかったり、運がなかったり、努力が足りなかったり、努力の方向性が間違っていたり、理由はいろいろあると思う。
でも、叶わないなりに、他の幸せを見つけて生きていくしかないのだ。
と、いうことを言いたいんでしょ、この歌って。
すごい歌だよなと思う。
「おかあさんといっしょ」の対象年齢って2〜4歳らしい。
小さい子が楽しめるかわいいいちごの歌かと思いきや、夢破れたその先の歌じゃん。
大人にも普通に刺さるよ。
というより大人向けの歌なのかな。
大抵の大人は大なり小なり叶わない夢があるだろうし、「わかるわぁ〜。」ってなるでしょ。
子ども向けの歌なら「ショートケーキのてっぺんとったぜ。めでたし、めでたし。」で終わりそうなのに、どうしてジャムになってしまうんだろう?
一緒に見てるお母さんたちに向けて作った歌なのか?
人生そんなに甘くないぞってことを伝えたかったのか?
大人になって、夢破れた時に思い出してほしいから?
どういう意図でこの歌が作られたのかはわからない。
でも、私はいちごの季節になると必ずこの歌を思い出す。
あのいちごは、ジャムになって心から幸せだと思っているんだろうか。
なんであのいちごがショートケーキの上にいるのかと嫉妬しないのだろうか。
やっぱり本当はショートケーキかパフェのトップをはりたいんじゃないだろうか。
なんて、ジャムになったり、クリームと混ぜ込まれたいちごたちに思いを馳せてしまう。
それと同時におかあさんといっしょの深さとすごさを感じる。
成長すると意味がわかる時限爆弾を子どもの心に仕掛けてくるのだから。
そんなことを考えながら、今日も私はいちごのお菓子を頬張るのだった。