
森林が地球を救う
昨日は午後から熊本県南の人吉へ。
記事制作でお世話になった五木村の下内森林組合長、
球磨杉を用いた「木の家」で熊本初のモデルハウスを1月オープンした未来工房の金原社長。
そのお二人が登壇する
「森と木でつくる住まいを考えるシンポジウム」に
参加することが目的だった。
小雨の天候だったが、
森林関係者の方々を中心に会場の席は埋まっていた。
地元テレビ局の撮影隊もいた。
令和2年豪雨で甚大な被害が生じた球磨川流域が大水害。
流域治水の取り組みの一つとして、
今回のシンポジウムが行われた。
2時間半という長丁場の中、
予定の1時間を軽くオーバーしたのが
九州大学農学部准教授の清水邦義先生の講演。
内容は明解でわかりやすく、興味深かった。
前のめりになりそうなぐらい、
惹きつけられたお話内容だった。

世の中に浸透して久しい温暖化問題。
18世紀後半の産業革命以後に急速に進んだ
「地球の限界」(プラネタリー・バウンダリー)。
80億の地球人が暮らしていくには
地球2.5倍の資源が必要なのだとか。
すでに限界値を超えているため
地球温暖化問題は
不可逆的に「延命治療」に過ぎないという事実。
工業製品が流通し、
科学が発展すると共に
二酸化炭素排出は進行してしまう。。
2050年ゼロカーボンの目標達成、
究極的には「森林資源の活用」こそ、
地球規模の環境を救う存在なのだという。
森林は、適切な間伐に加え、「伐って使って植える」
そのサイクルを回していくことが大事だ。
清水先生のお話では、
木を「植える」「育てる」「収穫する」までは
流れができてきているが
「使う」に課題を抱えている。
講演では、清水先生が研究し取り組んでいる、
木の「香り成分」に着目した内容だった。
無垢材と非無垢材、抗ウイルス効果、リラックス効果など数々の実験・・・
結論として、「杉の香り成分」には希少な持続性があり、
居心地よく健康に良い「空間」を作り出す存在。
木の家の良さ、杉をつかった木の家・・・
自然素材にこだわった「木の家」に対し、
新建材(自然素材に似せ、その欠点を改良した合成樹脂系建材)を
多用した家づくりは、現代の主流を占める。
自然素材の木の家は、手間暇のコストがかかるし、
必然的に高価格帯になることも理由だ。
子守唄やダム建設で全国的にも知られる、球磨郡五木村。
村の94%が森林。住宅と相性の良い、杉と檜が多く、
「葉枯らし天然乾燥材」を住宅会社や工務店に提供している。
原価を抑える取り組みとして、直接納品するなど、
コストカットに最善尽くしているが、
天然乾燥に対する「付加価値」への理解がないと
価格帯で市場競争では負けてしまう。

清水先生の取り組みの一つが
国産杉材の香り(セスキテルペン含有量)をJAS規格で評価できるようにすること。
天然乾燥の利点を証明する一例として、
木材の優れた部分をコストに反映することが
科学者としての仕事だと考えている。

未来工房は、木の家にこだわり、
全国の工務店イベント「森のとびら」開催を率先して行うなど、
木育活動を旗振り役として発信している工務店だ。
森林の従事者に利益が取れる仕組みづくりが求められている中、
木の家の魅力を地域に伝える試みを行い、
森への理解を深める活動を行い、
産地・球磨地区との関係づくりを大事に活動する。
長年の未来工房の取り組みの事例も貴重だ。
シンポジウムが終わったあとに清水先生とお話ができた。
年齢は2つ上で、先生から「中3のときの中1かぁ笑」と
僕に声をかけてくれた。
文献や資料を読むより、実際に会ってお話を聞くと
100倍ぐらい理解できた気がするー
昨日は参加して本当によかった。
森林への取り組みのことから、
科学者としての立場、仕事の使命、
愛をもって関係者に関わる・・・
と教えてくれた清水先生。
置き換えると自分にも通じること。
記録としてnoteに残したかった。
目の前に山積している課題、
がんばって乗り切るぞー