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読んだ・観た・聴いた

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本や雑誌などを読んで思いついたこと。書評とか感想は上手にまとめる人がたくさんいるので、そういうものはそういう人たちにお任せする。本の内容とは全く関係なく見えることも少なくないが、…
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#言葉

東直子 『とりつくしま』 ちくま文庫

『広辞苑』を紐解いてみたら、「とりつくしま」という見出し語はない。「とりつく【取り付く】…

熊本熊
3か月前
15

網野善彦『宮本常一『忘れられた日本人』を読む』岩波現代文庫

本書では「東日本と西日本」という章を設けている。宮本の方でも明確に東西を分ける境界のよう…

熊本熊
11か月前
34

田中克彦 『差別語からはいる言語学入門』 ちくま学芸文庫

やっぱり田中克彦はおもしろい。差別ということについては近頃妙に喧しい所為もあって、関心が…

熊本熊
1年前
29

中井久夫 『私の「本の世界」』 ちくま学芸文庫

ざっくり言ってしまえば、本書は中井のポール・ヴァレリー論と各種書評で構成されている。私は…

熊本熊
1年前
26

150人考 『危機言語 言語の消滅でわれわれは何を失うのか』

現在、世界で使われている言語は6,000〜8,000と言われている。言語集団は生活様式を共にする人…

熊本熊
1年前
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ニコラス・エヴァンズ 著 大西正幸、長田俊樹、森若葉 訳 『危機言語 言語の消滅で…

以前にも書いたように、毎週木曜日の昼休みの時間に職場で勉強会がある。11時30分から12時まで…

熊本熊
1年前
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真鍋昌弘 校注 『閑吟集』 岩波文庫

懲りもせず何度も試みているのだが、歌集とか句集のようなものを読みながら通勤したらオツかもしれないと、思い出したようにそういうものを手にしてみる。大抵は「やっぱりこういうのはオレには向かないな」と思って、そういうことが続くことはないのだが、間欠泉のように手に取ってみたいという衝動が湧くのである。 本書に収載されているのは歌謡で15世紀後半から16世紀前半に世間一般で流行したものらしい。今とは違って、娯楽の種類も限られていた時代なので、おそらく本書にあるものは国民常識のようなも

鈴木大拙 『日本的霊性 完全版』 角川ソフィア文庫

2016年3月12日に日本民藝館で岡村美穂子さんの講演を聴いた。岡村さんは鈴木大拙の秘書を務め…

熊本熊
1年前
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中井久夫 『私の日本語雑記』 岩波現代文庫

以前にも書いたが、言葉というものに興味がある。言語学者以外で言葉を職業として研究している…

熊本熊
1年前
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中西進 『新装版 万葉の時代と風土 万葉読本 I』 角川選書

万葉集に限らず、文学にまつわる語りは熱いものが多い気がする。短歌や俳句の雑誌の定期購読を…

熊本熊
2年前
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金田一秀穂 『ことばのことばっかし』 マガジンハウス

どうしてこの本が手元にあるのか、今となってはわからない。昔、『ダカーポ』という雑誌があっ…

熊本熊
2年前
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続 『和の思想 日本人の創造力』

で、その「らくごカフェ」を初めて訪れた日のこと。そのビルの外に長蛇の列があった。「えっ、…

熊本熊
2年前
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高間大介(NHK取材班) 『人間はどこから来たのか、どこへ行くのか』 角川文庫

これも職場で言葉について一席ぶつのにあれこれ下調べをする中で読んだ。本書を知ったのは山﨑…

熊本熊
2年前
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蛇足 『ことばとは何か 言語学という冒険』

今年の春にウクライナで戦争が始まった時、世界が驚愕したかのように感じられた。しかし、つい30年ほど前に、ロシア語と同じスラヴ語系地域であるユーゴスラビアが内戦で分裂した。戦乱の直接的な原因は違うだろうが、エスニックグループの対立として見れば、同じ種類の騒乱の連続と考えることもできるのかもしれない。 1989年の正月をドゥブロヴニクで迎えた。当時はイギリスのマンチェスターで学生として暮らしていて、冬休みを温暖な海辺で過ごしたいと思っていた時に、たまたま学内の旅行代理店で目につ