形容詞。(34/366)
形容詞で何かを伝えようとするデザイナーは信用が置けないと思っています。形容詞では伝えたいことが曖昧にしか伝わらないから。
分かりやすい例を挙げると、男子が考える「可愛い」と女子が考える「可愛い」が全くの別物であるように、「可愛い」という言葉自体が持つ定義が曖昧で、且つその言葉を使うひとそれぞれがそれぞれの価値基準を持っているから。
だから、「格好良くデザインしてほしい」という依頼の仕方をされると、「じゃあ、私(が思う格好良いという感覚)にお任せということで良いですか?」と切り返すか、「ちなみに、あなたが格好良いと思うものは何ですか?」という価値基準を擦り合わせるというところからスタートするしかないんですよね。
デザインで「伝えること」を仕事にしている以上、そういう曖昧な言葉を使って、いまからつくろうとしているものの方向性をまとめてはいけないし(まとまったとは言えないし)、そういう曖昧な部分にこそ鋭くメスを入れていかなくては、と思っています。
でも、付き合いが何年にもなる、自分のデザインの癖のようなものまで知っている相手だったら「これを分かりやすくして」「じゃあ、分かりやすくしておきますね」となっちゃいますね。もちろん付き合いが長いがゆえにお互いの価値基準を正確に理解できているというベースがあるというのもあるけど、それこそが信用がある状態なんでしょうね。
デザイナーは形容詞を使うなと言っているわけではなく、「格好良い」ものを見たら「格好良い」と言えばいいし、「美しい」ものを見たら「美しい」と言えばいいと思うんです。「ヤバい」はちょっと万能すぎるので、あまり使わないほうが良いかもしれませんが。ただ、形容詞を使って「伝える」ということをしても、そこには「伝えたいことが伝わらない」というリスクがあると思うわけです。