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「#旅のようなお出かけ」企画に参加してくれた、 船石和花さんの「美ら海に漂う愛」を読んだ感想。

 9月に入ってしまいましたが、まだまだ夏のような暑い日が続いています。そんな暑い夏と言えば常夏の島と海。私の場合だと東南アジア諸国をついつい思い出しますが、日本には沖縄という常夏の島・美ら海があります。
 12弾目の参加者である船石和花さんのこちらの作品は、そんな沖縄を味わえる作品。但し本物の沖縄ではなく、リトル沖縄へのお出かけです。


1、欧米の香りがする明るい新婚さんの悩み

 主人公は新婚の船井夫婦。新婚さんだから仲が良くてアツアツなのは当たり前ですが、この夫婦は一味違う独特の明るさに満ちています。夫・ワカシを『ダーリン』、妻・シュワカを『ハニー』と呼び合う関係。実はこのふたりって金髪姿の欧米人ではとの錯覚に陥ります。
 さらにダーリン・ワカシは指立て伏せを1000回もやるという相当体力に自信があるようで、ムキムキのボディに満ち溢れているのでしょうか?
 何となくテレビショッピングとかで、健康器具を笑顔で操作しているような人っぽいですね。

 一方の沖縄のお菓子をつまむ妻・シュワカも優雅な雰囲気で味わうジャスミン茶。しかし彼らの悩みは、新婚旅行で沖縄に行けなかったことです。2020年は「567」のせいでこのような事態はリアルにあり得ること。この企画でもそのようなニュアンスの作品がありました。通常それはどうしても非常に暗い雰囲気になります。
 ところがこの夫婦。根が明るすぎるのか?そんな暗い雰囲気が感じないのに好感が持てます。読んでいる方までワクワクしてきます。でも、沖縄に行けないのは事実。ここで無事にこの日のトレーニングを終えたダーリン・ワカシはある提案を、ハニー・シュワカに提示します。


2、住宅街の中にあるリトル沖縄へ

 薄紫色の住宅街、ダーリン・ワカシはある家の前に、ハニー・シュワカを連れてきました。個人の家に見えてその正体は店だという。チェーン店みたいに派手な看板ではなく、ある意味知る人ぞ知る『隠れ家』という名にふさわしい場所。シーサーの並んだ門柱から中に入り庭に向かうと、その世界観が広がります。

「うちな〜料理・うふぐすく」というお店には、5メートル四方のプールがありました。そしてハイビスカスでしょうか?南国の花々の植木鉢で覆われた世界。正しく知る人ぞ知る「リトル沖縄」です。

 出迎えたのは、沖縄にいそうな店主の大城ケン。ダーリン・ワカシとは同期という。土足のまま店内に入るふたりは、ここでミニハネムーンを体験します。店内も沖縄民謡の緩やかなBGM。熱帯魚の泳ぐ水槽に観葉植物。琉球グラス細工など、仮に沖縄に行ったことが無くても『これが沖縄かあ』と思わず頷いてしまいます。


3、リトル沖縄で旅気分爆発!

 窓際の席に座ったふたりは、沖縄の蒸留酒でもある泡盛を飲み、そして並ぶ沖縄料理の数々を目の前に。具体的な料理名が並んでいます。一口口に含めば、その味わいだけで沖縄にトリップするハニーシュワカ。目の前に沖縄の有名な観光地が、自然に目に浮かぶから不思議なもの。まさかこんな素敵なお出かけになるとは想像できない。本当に料理の力はすごいですね。

 あまりにも堪能したために、思わず狸のように腹も叩きたくなる。満足そのものかと思いきや。


4、今までリトル沖縄に来なかった本当の理由とは

 ここまでだとパーフェクトと思ったこのショートトリップには、かすかに影があったのです。それは大城の妻・メリーの存在でした。オリエンタルな顔立ちをした魅力的な女性。彼女は大城と、ダーリン・ワカシと一緒の写真などもあります。

 大学時代から知っているというメリー。大城との結婚式にも出席したほどの間がら。このときのハニー・シュワカは複雑な気持ちになります。
恐らくは私の知らないダーリン・ワカシの記憶がこの場所にあるのだろう。

そしてあの人…メリーさんのことを忘れてね、とは口にしなかった。

 こちらの想いに、すべてが凝縮されていると言っても過言ではありません。ハニー・シュワカが微妙な質問をしても、うまくかわすダーリン・ワカシ。しかし彼にとっても今まで私を案内しなかった真の理由は、このことにあるのだろう。彼女はそう悟ります。

 とはいっても、ダーリン・ワカシは私・ハニー・シュワカの事しか今は見ていない。だからもっと仲良くしたい。泡盛の酔いも手伝ってか、帰り際におねだり。それに答える彼。新婚夫婦の愛はさらに高まるのでした。

5、もし私がこの小説書いたら?

 そうですね。例えばこの明るい新婚夫婦が微妙な気持ちにさせたメリーの存在をもっと際立たせたら面白いかなと思いました。
 例えば同じ「常夏の島」つながりだけど、実はハワイ好きというメリーにする。そして「アロハ!」と言って料理を持って来るのを後ろから「またハワイの挨拶しているよ!」と指摘する大城のシーン。
 それに対して「いいのよ。沖縄もハワイも同じ南国の島。このゴーヤチャンプルーで使っているスパムは、ハワイならスパムむびよ」とやり返すような夫婦の賭けあいなどを加えて見ても面白いかなと思いました。
 それを見ながら懐かしそうに目を細めて笑うダーリン・ワカシ。さらにそれを見て複雑な気持ちになるハニー・シュワカというシーンとか。


まとめ

 読んでいる方が明るく感じる作品というのはいいですね。そこに沖縄という南国の香りを感じる楽しい作品でした。
 ちなみに作者の船石和花さんは、noteでは硬い名前なのにツイッターでは「エスパーワカ」と少し飛び跳ねたような雰囲気の明るい名前。あたかもこのダーリンとハニーのふたりと重なってしまいます。

 沖縄に限らず東南アジアの国々あるいはそれ以外のエスニック料理のレストランに行けば、その場所に疑似トリップできるのは事実。もし行けなくてもそういうところで、ヴァーチャルトリップを楽しむ。でも料理そのものはリアルだからヴァーチャル以上ですね。これも「旅のようなお出かけ」の楽しい手段。読みながらそう感じました。


※事前エントリ不要! 飛び入りも歓迎します。
10月10日までまだまだ募集しております。(優劣決めませんので、小説を書いたことが無い人もぜひ)


#旅のようなお出かけ #感想 #船石和花さん #美ら海に漂う愛 #読書感想文  

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