日本初のクリスマス パラレルワールド本能寺2

こちら に出てくる話の続編が完成しました。

日本初のクリスマス 作:伊豆茂(代筆・旅野そよかぜ)

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 天正十年に突然起きた本能寺の変。史実では明智光秀の謀反により織田信長が殺された事件である。
 ところが、意外なことが起こっていた。実は信長は本能寺では死んでいないというのだ。それはイズなる存在が突然本能寺の床下から現れ、信長の逃亡を手助けし生き残った。そして森蘭丸もついていく。そうとは知らず光秀は、三日天下と呼ばれる瞬間を味わっている。

「光秀様、嫡男の信忠も打ち取った模様」「そうか、よしこれで魔物・信長とその後継者がは消えたということだな」「は、今や光秀様こそが天下人でございます」家臣からでた『天下人』と言う言葉に口元が緩む光秀。

「ふふふ、私が天下人か。非常に素晴らしい。ではいまから奴の本拠地安土に向かうぞ」

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「もう大丈夫でございます。いったん休憩いたしましょう」イズの案内により、本能寺床下から続く長い洞窟を走り抜け、ついに地上に出てきた信長と蘭丸。

「ここはどこじゃ」「はい、京都から遠く離れた地に来ております」「とりあえず命は助かったようだな。伊豆とやら、礼を申す。あとで褒美を使わせてやろう。よし今から安土に戻ろうか」

「いえ信長様、今安土は危険です」「なぜじゃ、我が本拠地であるぞ」「そうです、信長様の拠点、危険と言うのはどういうことですか?」横にいた蘭丸も不満そうに反論。

 イズは信長の前でひざまずく。「どうやら明智が、信長様を討ち取り天下人になったとばかりに安土に向かっている模様。今この少数で行ったとしても『偽者』と言う口実で消されまする」
「くぅ、あんな奴。いつもなら足蹴にできるものを。我らには蘭丸と伊豆だけしかおらんな。確かにそのほうの申す通りじゃ」
「では、伊豆殿。私と信長様はどうすればよいのですか」「蘭丸殿、とりあえず家康様を頼りましょう」

「何、家康?」信長の顔色が変わった。
「はい、実は家康様も、少人数で堺におられ、間もなく今回のことを知ることになるでしょう。今の我ら同様、兵を持っていない家康様は三河に戻ることを考えるかと存じます。予定では伊賀を越えて伊勢湾に向かうかと。そこで私どもも、伊賀に向かい家康様と合流しましょう。

「何ということだ。家康に助けてもらうことになるとはな。他の家臣ではだめなのか?秀吉とか勝家とか」
「戦国は弱肉強食の世。いくら信長様が本人とわかっていても、この状況では他の大名たちどころか、信長様の重臣すらも油断なりませぬ。そう言う意味では、家康様も微妙ではありますが、まだ可能性があります。少なくとも秀吉殿と比べれば」
「秀吉、あの猿がか?」信長は腕を組んで唸る。
「はい、あの男こそ相当な野望を持っております。油断なさいますな」

 しばらく目をつぶり考え事をする信長。しかし目を大きく見開くと「わかった、伊豆の申す通りにしよう。ワシの命を救った男。蘭丸以外ではお前しか頼れないからな。よし案内せよ」

「はい、ではこちらでございます」イズは方角がわかるようで、迷うことなく信長たちを案内する。
 10分ほど夜道を歩く。しばらく沈黙が続いたが、やがて信長が口を開いた。「ところで、そのほうなぜわしを助けた」「はい、話せば長くなりますが、私が8歳のころにあったある出来事がきっかけ。30年ほど前(1551年)のことでございます」横で歩きながらイズが語る。
「30年前か。ちょうどそのころはまだ父・信秀が生きておった。ちょうど美濃の斎藤道三の娘・濃と結婚したころじゃ」

「蘭丸は?」「まだ生まれておりません」「そうじゃな。ハハハハアア」信長は大声で笑う。「その30年前に何があったのですか」笑う信長の斜め後ろにいた蘭丸が質問。

「私は周防の国(山口)で生まれ育ちます。そのとき南蛮からフランシスコ・ザビエル様が来ておりました。
「ザビエル。聞いたことがあるな」「南蛮から我が国に来た。最初の天主(キリスト)教の宣教師でございます」蘭丸が横で信長に耳打ちする。

「そのザビエル様が、故郷でデウス(神)様の生誕祭なるものをこの国で行いました。コスメ・デ・トーレス神父様が私たちを招いて下さいました」「デウスの生誕祭か」「はい、ナタラのまつりと呼ばれるものです」
 ※これは日本で初めて行われたクリスマスのことで、当時はクリスマスではなくラテン語のナタル(誕生)からこう呼ばれていた。そして現在の暦で12月10日に行われたと伝わっている。

「ナタラのまつりとは、どのようなことをしておったのじゃ」「はい、南蛮の珍しい歌を歌いながら、デウス様を賛美しておりました」イズは視線を遠くに置きながら、30年前の楽しい記憶を思い出し語っていく。
「周防は、毛利が支配しておる。それを秀吉が攻めている最中で、救援要請があったから出陣したというのに、あの光秀め!」信長が怒号に満ちた声を出す。
「信長様!」「あ、蘭丸すまん。つい怒りで声が震えてしまったわ」
「はい、当時の大名でした大内様が、天主教の布教が認められたので、村人の多くが信じました。私の両親もデウス様の信徒となったのです」「ほう、それはわかった。で、なぜわしを助けたのじゃ」

「それは信長様が、天主教に対して比較的寛容だったからでございます」
「あ、それはまあ物珍しいからのう。あと一向宗の本願寺にせよ延暦寺にせよ、仏の教えを説くのではなく、武器を持って刃向かってくる連中らばかりではないか。寺のくせに戦国大名のようなことをしよって。
 あいつらこそ仏の顔をした邪悪な鬼だ。それと比べればまだ天主教は純粋に教えを広めようとしたところが、納得できるわけだ」

「そのためにも信長様にこのタイミングで死なれては困るのです」
「確かに天主教の布教は許可したが、ワシ自身は信じてはおらんぞ」「はい、承知しております。ただそうでなければ、このあと天下を取る秀吉様が弾圧を開始し、そのあと天下を取る家康様によって完全につぶされてしまいまする」

「秀吉や家康が天下を取るじゃと! 貴様なぜそのようなことがわかる」
 信長の目が鋭さを増す。イズは信長の視線を避けながら、「こちらでございます」とわざと話題を変えるのだった。



追記:この作品は、私の短編小説で登場する伊豆茂さん作の歴史小説を、本人了承の元、私が代行してnoteで公開しました。
ちょっとややこしいパラレルワールドです。

こちらもよろしくお願いします。

9日はぽちさんが担当してくださいました。

こちらもよろしくお願いします。

電子書籍です。千夜一夜物語第3弾発売しました!

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シリーズ 日々掌編短編小説 324

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