2年間ニートをしていた話
地方公務員1年目、30歳の私は、過去に2年間ニートをしていた時期がある。サラリーマンを辞めた後、働かずに社会から離れて暮らしていたのだ。その2年間は、傷病手当金を1年6カ月、失業手当を3カ月受給し、さらに未払い残業代を会社に請求して得た300万円を使って生活していた。ニートとしての暮らしを経済的に成り立たせるために、かなり計画的に動いた結果である。
ただし、傷病手当金を受け取っていたにも関わらず、病気で休んでいたと表現せずに、ニートをしていたと書いている。行間を汲み取っていただければ幸いだ。
「働かない時間」の意義
日本社会では、「働くこと」が美徳とされている。多くの人が、1年の大半を仕事に費やし、家庭を守り、社会を支えている。もちろん、それ自体は素晴らしいことだし、働くことで人生に充実感を得る人も多いだろう。しかし、もし時間とお金、そして周囲の目を気にしなくていいのであれば、一度「働かない時間」を持つ価値を考えてみてほしい。
働かないためには、確かにある程度の資金が必要だ。しかし、実際に社会に縛られ続けている最大の理由は「世間体」だと私は思う。人は自分の選択よりも、周囲の評価を優先しがちだ。けれども、人生は他人のためではなく、自分自身のためにある。世間の常識や偏見に縛られず、自分の人生をどう使いたいか、一度考えるべきではないだろうか。
ニート期間で得られたもの
1. 本当に楽しめる「趣味」を見つけた
2年間のニート生活で、最も大きな収穫は「趣味」を見つけたことだ。ここで言う趣味とは、ただの娯楽や隙間時間を埋める活動ではなく、自分をリフレッシュさせ、本質的に楽しめるものを指す。
世間には多くの「趣味」がある。ゴルフ、映画鑑賞、キャンプ、読書など、一見華やかで充実感を与えそうなものばかりだ。しかし、それらは本当に「自分のため」の趣味なのか?他人への見栄や、空いた時間を埋めるだけの行為に過ぎないのではないか?
私が気づいたのは、趣味は「暇」からしか生まれないということだ。多くの人は、日々忙しさに追われて「趣味」を考える余裕すらない。だからこそ、まとまった時間を使って、自分が本当にやりたいことを見つける作業が必要なのだ。ニート期間はそのための貴重な時間だった。
趣味を見つけるには、膨大な時間と体験が必要だ。私の場合は、様々なことに挑戦し、その中から「これだ」と思えるものを見つけた。それは、働きながらの生活では到底できなかったことだと思う。
2. 働くことの価値を再認識した
一見すると矛盾しているようだが、「働かないことで、働くことの良さが見えてくる」というのは本当だ。働くことから離れることで、仕事の意味や価値を改めて考えるきっかけになる。
例えば、海外旅行で長期間白米を食べられないと、急に「日本のお米が恋しい」と感じるようになる。働かない時間は、これと同じような感覚を生む。働いている時には当たり前すぎて気づけなかった「仕事の良さ」や「社会との繋がりの大切さ」が、ニート期間を通じて見えてきたのだ。
また、多くの人が「宝くじが当たったら毎日休みたい」と夢見るが、ニート生活はその「毎日が休み」の状態を疑似体験するチャンスでもある。その結果わかったのは、毎日が休みだと意外に退屈だということだ。むしろ、何かに打ち込んでいる方が心が満たされる。
これは、70代や80代の高齢者が再雇用やボランティア活動を積極的に行う理由とも繋がるだろう。彼らは、お金のためだけではなく、働くことがもたらす「生きがい」を知っているのだ。働くことには、単にお金を稼ぐ以上の価値がある。ニートにならなければ、この感覚を知ることはできなかっただろう。
ニート期間を振り返って
もちろん、ニート生活は楽なだけではない。世間の目は冷たいし、家族や友人からも不安の声を多く受けた。それでも、その期間に得られたものは、それ以上に大きな価値があった。
特に、自分自身と向き合う時間を持つことができたのは大きかった。働いていると、どうしても目の前の業務に追われ、自分の将来や本当に大切にしたいものを考える余裕がなくなる。だからこそ、一度立ち止まる時間を持つことは非常に重要だと感じた。
結論:働かない時間の価値
現在、私は地方公務員として社会復帰している。ニート期間を経て改めて思うのは、「働かない時間を持つ勇気」がどれほど大切かということだ。
ただし、それを実現するためには、お金、時間、そして世間体を乗り越える覚悟が必要だ。しかし、それらをクリアできた時、自分自身と向き合い、人生を再構築するための大切な時間を得られる。
ニート生活は決して無駄ではない。それは、「働く意味」を見つけるための重要なステップだった。そして、今の社会に疲れている人には、一度「働かない時間」を持つ選択肢を考えてほしい。それは、これからの人生をより良い方向に導くきっかけになるかもしれない。