県知事に要望書を提出しました
11月20日(水)熊本の水質・環境の管理に関する要望書を提出しました
TSMC本格稼働にあたり、排水・排気に関して完全クローズドシステムを取り入れて欲しい旨を要望するものです。
要望書の提出後、40分ほどお時間を頂いて、県の担当者の方(環境政策課・環境保全課)と意見交換ができましたので、その概要をお知らせいたします。
①熊本の環境を考える会より
これまでの活動を紹介
PFASの学習会・調査等、半導体産業についての講演会等を開催してきた。
今回は、TSMCの本格稼働前に完全クローズドシステムの導入をお願いしたいので、要望書を持参した。
②県担当者より
要望については、庁内関係各課で検討したい(環境生活部、商工労働部、土木部、企業局等)。農林水産部も関係しているが、主には先の4部門となる。
TSMCと半導体企業の集積という事態に、県民からの多くの不安の声が聞こえる。地下水の現状やどのように守っていくかをパンフレットにまとめた(今回の要望の内容に関連する箇所は見開き右端)。
県 法規制物質は、それぞれ排出される段階ごとに県や市町村で監視をしており、監視した内容については公表することになっている。
法令で決まっていない化学物質については昨年度から環境モニタリング調査を実施している。モニタリングでは工場が稼働する前後で変化がないかを確認する。
金属類で約20項目、有機フッ素化合物やその他の化学物質は10000項目以上あるので、専門家の意見を聞きながらモニタリングの結果についても公表することにしている。
大気についてもモニタリングしている。
県の方で監視をした結果については県民に結果をお知らせする。
化学物質を環境に出さないことが大事だと考えている。
環境負荷を減らさないといけないという認識は同じ。
水の使用量や取水量であるとか、河川などに流す量の減量も必要かと考えている。企業に対しては、法令を守ることはもちろん、環境保全に対して、働きかけをしていきたいと考えている。
③意見交換
(データの公表について)
熊本の環境を考える会メンバー(以下 メンバー)
熊本は水や環境、農業がブランドになっている。基準値内だからいいだろうでは、評価が下がる。熊本は宝物を持っているのに、あって当たり前と思っていて、気楽に手放している感じがする。非常に不安がある。
データはどのように公開するのか、HPで毎日出していくとか、疑問のある人に対応する窓口など具体的なことを知りたい。
県担当者(以下 県) 法令に基づく監視をしていく。モニタリングは規制物質以外のもの。規制のないものはちょっと出ていても問題があるのか分からない。基準のあるものは法律に基づいて調査している。
環境調査は今までは年1回まとめて公表していたが、今年度からは途中経過ではあるが毎月のデータをHPに載せている。
メンバー 2ヶ月に一回大学の教授が県と連携して調べるという話を聞いた。排水を75%はリサイクルして、残りもストレートには流さないとも聞いている。
パンフレットのようなもので具体的に誰が読んでも分かるように公表していただきたい。
メンバー 関係機関を見ると健康に関するのはどこになるのか分からない。(PFASに関する)海外の規制は、健康を害するのが明らかになっているから。実際、健康にどのくらいの害があるか心配している。水俣でも魚に水銀がたくさん入っていたことが分かっていたのに食べてしまっていて、今でも解決していない。PFAS がそういう状況にならないようにと思っている。
そのためには75ではなくて100%のクローズドシステムが必要になってくるし、モニタリングも稼働前後で見る必要がある。
稼働前の数値はどこかに公表されているのか?
県 データは蓄積している。委員会を立ち上げたが規制値がないものは県だとなかなか判断できないところもある。聞いたことのない物質が出ているというデータだけ出してしまうと風評被害の恐れがある。
メンバー 生でオープンに出した方が風評被害は出ないと思う。分からないことは隠されていると取られる。風評被害を避けるために公表しないというより、風評被害にならないために公表するべきでは。知らない物質については説明付きで出したらいいと思う。
県 出すからには意見とか注釈等ちゃんと説明を含めた上で出す。PFOS、PFOAも目標値しかないが、速やかにHPで公表している。
(有機フッ素化合物の)PFOS、PFOA以外は、委員の方の意見を踏まえて国が検討している途中なので、それを見ていく。
環境モニタリングにはPFOS、PFOA以外のものも含めているので、基準はないが差を見ていくことから確認していきたい。
メンバー PFOS、PFOA以外は公表はされていないということだが、熊本に特有のPFASが出ていることは会の調査で確認している。
(PFASの目標値)
メンバー 日本の目標値は50ng/Lだが、目標値50がどういう意味を持つのか分からない人は多いと思う。
例えば海外で、アメリカでは以前はたくさん出ていたが、今はゼロを目指している。ゼロを目指さないといけないような物質なんだということは、海外と比較して初めて分かると思う。熊本でこれだけ出ているが、海外ではこんなふうに規制されている物質なんだと比較対象を置いてほしい。
TSMCを誘致した熊本としては経済的に難しいところがあるかもしれないが、それをやってこそ、世界的なモデルになれると思う。そこをぜひ取り組んでほしい。
メンバー すでにPFAS全体で言えばかなり出ている。井芹川のあたりから出ているので、不安に思っている県民はたくさんいる。アメリカの基準値は今はこれ以上は対処できないというレベルで設定されている。
一月ほど前、有識者会議を傍聴していたら、日本ではそこまで厳しくしたら対応できない、だから50でいきましょうみたいな会話があった。問題だと思いながら会議を傍聴していた。そんなことで決められている数値を県や企業が守ろうとしているのを甘いと感じている。
(半導体企業の環境負荷)
メンバー 半導体は産業のコメと言われていて、これから絶対必要なもの。私たちも使っていて社会は半導体なしでは生きていけない。それを無くさないという前提でこれからも動いていくが、環境にどれだけ負荷をかけずにやれるかというのが企業の価値基準になってくると思う。
PFASは体に蓄積してフォーエバーケミカルと言われている。すぐには害は出ないと、首長がそういう発言をしてしまっている県もあるが、すごく問題になってくると思う。熊本は水俣と同じ轍を踏んではいけないと思う。
(クローズドシステムについて)
メンバー TSMCの誘致により、農家の人がTSMCが来て畑をできなくなっているとか、中小企業の人手不足だとか、社会的に色々な問題が起きてきている。そのことについても多くの声が上がっていると思うが、今回私たちが特にお願いしたいのはクローズドシステムを取り入れて欲しいということ。
茨城県で1980年代から完全クローズドシステムでやっているテキサスインスツルメンツという企業がある。(資料参照)
昨年、地域の高校生を招いて企業の見学をしてもらったりという活動もしている。実際にできることなので、ぜひ熊本でやっていただきたいと、今回はメインで要望している。
メンバー 私たちはずっとPFASの独自の調査もやっていて、川などで出ているのは知っている。土壌にも出ていることは確認している。
本当は県や市の方でそういう調査もしていただきたいと思っているが、全ての元になるのは水や大気の汚染ということである。完全クローズドシステムというものをやっているところがあるので、それをぜひ取り入れていただきたい。
日本の法令の基準が緩いということも言われている。法令ではなく熊本が今まで保ってきた美しい水と空気を、ぜひこれからも維持していけるようにお願いしたい。
県 規制されていない物質についてもしっかりモニタリングをしていく。他の県はやっていないことなので、そういった取り組みをしっかりやりながら、熊本の環境を守っていきたい。
(住民の健康不安への対応)
メンバー 汚染値の高い地域で、自分の健康を心配している人がいる。県民に対して、対策をどんどん打っていく姿勢を見せることが安心につながると思う。やっていることが見えないと不安がずっと消えない。
県 結果はマスコミの記者を集めて説明したりしている。
メンバー 記者に説明するときに、一般住民にも説明をぜひしてほしい。
県 熊本市は政令市なので、自分の方で調査している。
メンバー 県と市が連携して、情報をきちんと出してほしい。
(土壌・食物への移行)
メンバー 土壌の検査はされているのか。水が汚染されているということは、土も汚染されている可能性があるし、作物に移行する可能性もある。調査はぜひやっていただきたい。
食べ物に入ってしまった時の危険性を考えていかないといけない。
相模川の支流、道保川で魚にPFASが生体濃縮されているという東京新聞の記事がある。無視していると後で大変なことになる可能性がある、すでに日本人の許容量を超えているのではないかという話も聞かれるくらい大問題だと思う。
県 基準が日本は緩いという報道もあるが、国によってバラバラだ。
メンバー 予防原則というか、危険の可能性があったら安全側に立ってものを考えて欲しい。後からでは取り返しがつかないので、そこはぜひお願いしたい。
例えば、水道水の検査をしているが、市の検査でも改寄公園の水道水から20ng/Lくらい出ている。
日本の基準でいえば50以下だから問題ないということかもしれないが、それを毎日取り込んでいるとしたら、結構危険な数値だと思う。
メンバー アメリカの基準値は4だが、目標はゼロで、4はそれ以上低くすると達成できないからという理由でそうなっている。
貝だと2000倍くらい濃縮する。中国産の缶詰のアサリは、調べてみたら大変高濃度が出ている。産地偽装されるほど有名な熊本県のアサリがPFAS汚染されたら困る。
メンバー 中国産よりずっと少ないと思うが、汚染されているのではないか。
(下水汚泥の再利用について)
メンバー 浄化センターなどの下水汚泥を肥料に再利用しなさいと国の指示が出ている。各県でやっているが、汚泥の中にはPFASが含まれている。それを肥料にして畑に撒いたら土壌が汚染されてしまうことになる。大きな問題だと思うので、検討していただきたい。
県 下水処理場の管理はうちの部ではないが、話はしておきたい。
(地下水量について)
メンバー 菊陽町の酪農家で、井戸の水位が下がってポンプで吸い上げられなくなっているという。完全に涸れてはいないが、ポンプで吸い上げるには、ある程度水圧がないと空回りしてしまう。水の質だけではなく量に関しても、確実に減っているということがある。企業の方に伝えてもらいたい。
(秘密保持契約について)
メンバー 秘密保持契約と言われるが、公益性のあるものは公開しないといけない。個人情報やTSMCの独自技術等は公表できないかもしれないが、公益性の高い情報に関しては出さないといけない。
全てが秘密保持契約ということにはならない。公益性の強いものに関しては、県は市民側・国民側についてほしい。
TSMCがどうあれ、私たちは住み続けなければならない。フォーエバーケミカルの話なので、窓口になっていただいている県の皆さんにご相談したいと思った。
(回答期限について)
県 11月29日は時間的に難しい。いくつかの課にまたがっているので、なるべく早めにという形で回答したい。(会として了承)
参考情報
*日経ヴェリタス2024年9月30日より抜粋
TSMCは用水に占める再生水の割合について、30年までに現状の12%から60%以上に高めることを目指す。
半導体工場の現場で特に必要とされるのが、ミネラルや溶存ガスといった不純物を極限まで取り除いた「超純水」だ。
世界の超純水市場の規模は足元で約80億ドル(1.1兆円)と言われており、今後5年程度は年率1割程度の伸びが続くと予想されている。
主なプレーヤーは大手の化学企業などだ。米デュポン、フランスのヴェオリア、米新興企業のグラディアントなど。
日本企業のオルガノは半導体メーカーなど向けに、超純水の製造装置や管理サービスを提供する。同じく半導体製造の洗浄工程に必要な純水などの製造装置をてがける野村マイクロ・サイエンスも注目度が高い。
海水淡水化では日本企業の存在感も高まっている。
技術を駆使して水の使用を管理する「スマートウォーター」市場に参入する企業が増えている。
投資家や周辺地域への悪影響を意識し、水資源を有効に使う動きが世界中でみられるという。企業の生産活動で使用される水の規模は莫大で、節水の効果は大きい。
instagram
twitter
Facebook
YouTube
8