イバラシティのプロローグはnoteに置けばいいんだって気付いたヘッド
イバラシティに登録したEno.1263「小川咲with銀月瑠璃瑪」
http://lisge.com/ib/k/now/r1263.html
の導入とか諸々ダヨー、無駄に長いヤツだよー
①メインキャラ目線導入
②メインキャラ目線ルールブック内「導入:はじまり」遭遇時
③サブキャラ目線
④状況把握特化異能持ちお父さんから娘へのお手紙全文
⑤Introduction
⑥おまけのプロフ絵全体図+α
って感じの並びダヨー
①:【咲】
――もし、それをリアルで定義するならば、アタシは主人公になれなかった。
というより、主人公だったのは間違いなく別のヤツだったし、向こうからすりゃアタシはそこそこ強かった中ボス。しかも仲間になってからの戦績はイマイチ振るわないとまあ、我ながら至極残念な位置に立ってたもんだ。
そりゃ、フラれるよなーって。
いや別に告白とかしてないし? 本気で惚れてたかって言われるとそうでもないし? ただ、それなりに行動を共にしたわけで? アタシに惚れるのが筋じゃん? 全くアタシになびかなかったって、半ば振られたようなものじゃんっていう……。
……いや、うん。
あの子とアタシを比べて、どっちが魅力的かって言い換えると……正直勝てねぇーってなるんだけどさぁ……。
で、アタシは……結論から言えば、あーなんか学校に居づらいなって。
野郎はアタシなんざ欠片も気にしてないし?
あの子も……っつーか気を使った結果として避けるでしょーねこの話題。
表面的にはこれまでと変わらない毎日を過ごせるんでしょーけど、内心はどうやっても無理。
これから卒業までほぼ毎日顔合わせて、これまでみたいに過ごすのはちょっとしんどい。
せめてしんどくなくなるまでのインターバルが欲しいっつーの?
丁度我らが生徒会も解散シーズンといいますか、任期を終えて暇になった頃合いだから引き継ぎぶん投げるくらいは許してもらおう。
と、そんなノリで失恋旅行……ってやつかな?
便宜上そういうことにした一人旅に出たわけですよ。
いやねー! アタシとしてもさー! 惚れたわけでも告ったワケでもないのに失恋ってちょーっと気になるんだけどさー! でもただの旅行よりそのほうがまだ格好付くかなーって、ねー!?
でもって今は折角だからーって船なんか乗っちゃったりして?
潮風に髪を遊ばせてきっもちいぃー! 旅って感じ強まるー! みたいな、超満喫?
「フゥウウゥーーー!! 海風さいっこぉー!!!」
とか言っちゃうレベルよ。
いやー、アタシ父さん似でさぁ?
髪がこー、染めても無いのに薄茶色でちょっとふわふわしてて、割とめんどくさい時多いけどこういう時はアドだなー!
……父さんといえば、そうだ。
手紙、見つけちゃったんだよね……うん……ジャケットのポケットに入っててさ……このご時世に手紙とか、よーやるわ。
いやまあ、アタシもアタシでスマホだなんだ使わずアナログな置き手紙置いてきたんだけどさ……これでもアタシゃこう、何の兆しもなく旅に出たといいますか? 何も知らせず家を出たつもりなんだけど、バレてやんのね。
ま、父さん相手じゃ致し方なしといいますか。能力的なこともあり、隠し事できる相手じゃないけど……全部バレるのはホントなー。
……これでも父さんのことは信頼してるし、受け入れてますけどね。
ポジティブにもネガティブにも、ああはなりたくないって思ってるだけでね?
てかコレひっどい手紙だなあ! 形だけでも慰めてくんないかなあ!
娘の好感度ガン下がりなうですよーって言う為だけに帰りたいわこれ。
なーんて半分呆れながらも、一応はアタシのことを案じてくれてる文面にちょっと微笑ましくなりながら目を走らせてさ? 署名の後のなっげー追伸に辿り着いたら……めっちゃ引っかかる一文があるんですよ。
『もし咲が船の上でこれを読んでいる場合……』
なうですわ。
ドンピシャというか、言われてふっと気付いたんだけどさ。
アタシ……そりゃ北に向かっちゃあいたんだけど、北海道まで行く気はないっていうか、宮城あたりで一泊って思ってたし……船乗る理由も予定もなかったハズでね? つーか東京から北上コースでさ、仙台以南で船乗るとか何処行くのよアタシ?
…………。
……。
おっと、手紙続きあるじゃーん。
……あったっけ?
えー何々……
「……デスヨネー」
ま、案の定ってヤツ。
家の家系――というより、父さんの固有能力。
それがアタシに遺伝してる可能性は、ずっと不安視されていて……。
いざ目覚めてしまえば感覚で分かるもんだなと、ちょっと新鮮さを抱いてしまう。
選択の都度生じてしまう『もしかして』
自分が歩んだかもしれない道、その過程と果てにあるものを知覚してしまう越権能力。
それを、アタシ達……アタシの世界は、"可能性"と呼んでいる。
完全に覚醒した可能性は、言ってしまえばなんでもありだ。
自分が歩まなかった過去も、これから歩むであろう未来も、別の自分が歩む今も、そういった全てが得た知識や経験を望むがままに引き出すことで、過去現在未来を問わず人生をもっとも『上手くやる』ことが可能となるトンデモスキル。
ま、場合よっちゃ羨ましいと思われて然るべきな能力かもしれないわ。
デメリットっていうか、能力の仕組み考えるとぶっちゃけ余裕で精神の一つ二つブッ壊れるというか、父さんだって『何人か』ブッ壊れたとか言ってたし……正直アタシはずっと要らねーって思ってた。
何よりあれよ。
この可能性って能力っては完全覚醒しないと使いモノにならない。
今現在のアタシは、父さんのおかげで得た前知識から目覚めた事を知っただけで、この能力を使いこなすどころか知覚することさえできないというか、制御してないそれを垂れ流してるわけでもなしの、マジで一切合切なんにも生じていない状況にも関わらず……。
「……あー」
――完全覚醒の前段階で、"こうなる"のだ。
ほんの些細なものから、人生を決する重大なものまで。
あらゆる選択に付きまとい、分岐先を常時参照することで莫大に膨れあがる未来予想図。そんなものを……無限大を内に宿した人間を、莫大なリソースを喰らう異分子が無力だったなら、世界は、その存在を許さない。
世界は、それを吐き出すことで……有限な情報量を管理する。
つまり――世界から放逐されるのだ。
目を離した隙に、景色が変わる。
情景は赤黒く染まり、足下には拡がる大地。
……いや、これアレだな? 現実だけど現実じゃないな?
なんていうんだろう、脳内に送り込まれた映像的な?
とまあ、幸か不幸か即座に現状を認識し、少なくとも、海原とはまるで違う黄昏のそれを見遣りながら……。
「……ヤクザやんけ」
アタシは今、この瞬間――間違いなく世界を違えたことを知覚した。
②:【ハザマ】
※前提条件として※
http://lisge.com/ib/rule.php
を読もう! やくそく!!
はーはーはー……。
なーるほどねえ、アンジニティかあ、あの世界そーゆーことしそうだもんねーOKOK完っ全に理解した。
……ってなるわけないじゃん!?
いやアンジニティってむかーし父さんに聞いた気がするよ!
なんだっけ、セルフォリーフのご近所さんなんでしょ? アタシ的にはアレ多分父さん適当ぶっこいてるだけでしょって思ってたし正直半信半疑なんだけど。ていうか知ってる固有名詞出てきてちょっと安心したんだけど敵かよっていう! え、いや敵で合ってる?
……まー敵だよねー! アンジニティだもんねー!
ってことは? この船が辿り着く先がイバラシティって寸法ね?
そんでもってアレよ、団体戦つってたあのヤクザ(暫定)?
つまり世界と世界が乗っ取る乗っとらないって話をしてる場所に、その二つとは無関係な世界からコンニチハ! ってするのアタシ?
……誰も味方いなくね?
……どっちの味方になっても怪しさ大爆発じゃん?
……ヤバくない?
「ちょっ、ちょっと待って!
もうちょい詳しく説明して頂戴そこのヤクザ!
状況如何ではこのアタシが手ぇ貸してやるからっておいこら会話の途中で……」
あー……消えたなぁ。
ってか、これ通信そのものが消えかけてる的なあれ?
マジかぁ、まるで大勢いる参加者にバラ撒きましたみたいな業務連絡オンリーでアタシったら未知の土地の防衛戦に参戦するわけ? もっとこー、アタシ向けの特別講座始まるとかさあ、そういうの無いの?
モチベ持つかしら……。
「……ん?」
なんて。
ヤクザ(推定)も消え薄れていく脳内映像に目を凝らし――脳内で目を凝らすとかホントなんなんってアタシも思うけど、他に言いようないしさ――ていると、もう1人人影いることに気付いたのよ。
いやー、そうよね個別対応あるわよねそりゃ。
だってアタシ明らかにイレギュラーな事態じゃない?
一般ピーポォと同じ情報量で参戦したら足手纏いというか、ぶっちゃけ邪魔する自信あるレベルだわって話。
だからまあ、どこか安心感さえ覚えながらその人影をよぉく見てさ。
映像荒いせいで男か女かもわかんないけど、顔の印象残らないっつーの?
――あ、これ魔術障壁だ。
自分の印象が残らないよう魔術で対策している……?
そうと分かればジャミングブチ壊してツラ拝まないと失礼じゃない?
『…………』
ってことで魔術式への介入を試みた瞬間、まあ気付かれたわけでね。
いや、そりゃそうなんだけどさ。
ただでさえコッチを意識して魔術使ってる相手に介入とか秒で気付くわっていう。
こっちも気付かれる前提でキメた節あるんだけど、その後の行動が予想外というか。
「ちょおぉおぉっ、おまっ、ま、ままま待っ、ごめんて!!!」
気付いた瞬間、既に途絶えはじめている映像内をこちらに向けて急接近とかホラーかよ!! やめてよそういうのビビるじゃない! そういうのはせめて輪郭ハッキリしてからやってくれな……
『――見つ――けた』
セリフまでホラーかよ!!
というアタシの脳内ツッコミを残して、世界が反転する刹那。
元の船上へと戻る直前――垣間見た深い、深い"青"は、しばらく脳裏を離れなかった。
†
「……うわぉ!?」
……船上ね、うん。更に言えば黄昏時の船上だわ、コッチもいつのまにか夕方なってるじゃーん。
何今の、夢オチってことにならない?
……ならないよなぁー! 少なくともアタシの場合夢オチでもなんの救いにもならんしなぁー!
アタシの能力……ん? 能力……能力なんだけど、なんだろ。
なーんかしっくりこないわね……。
……あー、異能、そう、異能だ。
アタシったら疲れてるのかしら、そうよ異能だわ。
アタシの場合異能のせいで、夢と思い込んでるだけか、もしくはちゃんと意味と理由のある夢かの二択になるわけで……
あれ、今アタシ精神か認識あたり操作されなかった?
……ま、大丈夫か、致命的な操作なら気付くし、弄られても些細な部分でしょ忘れとこ。
『皆様、本線はまもなくオオキタ港に着岸いたします。
長らくのご乗船、お疲れさまでした』
とか言ってる内に到着アナウンスですよ。
……あ、マジだわもう島ついてるじゃーん……ここがイバラシティってわけね。
……それにしても、いやー……何処行きに乗ったんだっけ、アタシ?
少なくともオオキタ港行きにゃ乗ってなかったと思うんだよナー……まー着いちゃったもんはしょーがないかあ。
「オオキタねー……ほーん……」
……ちょいと寂しい港だわね。
てーか、ここ貿易港ってやつじゃない?
客船止まるの稀って空気プンプンしてる……いやまー、こういう到着する場所が不便な船って割安だったりするし、多分アタシが最初っからイバラシティ目指しててもこの船乗った気ぃするけど……。
案の定というかなんというか、アタシ以外に降りる客もいないっぽい?
ってーか殆ど荷物じゃん……なんでアタシこの船乗ってたのホント、やばいわーもう思い出せないし、世界移動したせいかなー……。
「……ん?」
なんて思ってると、岸に1人だけ立ってた人影に目が止まった。
腰まで伸びた白銀の髪と、眼鏡越しに覗く深紅の瞳。
両手をポッケにINして船を見てる感じは明らかに待ってました感。てかスーツの上に白衣ってどういうお仕事なんでしょ……科学者的な何か? 目当ての荷物でも積んでるのかしら……なんか着慣れてる感じしないなあ、コスプレみたい。
なんて見てたら目も合わない内に踵返しちゃったわ。
当たり前だけどアタシ目当てって線はなさそうねアッハッハ!
「……はー、ガチの一人ぼっちかあ」
アタシとしても最初からそのつもりで旅してたけどさあ、世界越えちゃうのは想定外じゃない? 知らない町で一人旅☆ と思ったら知らない世界にログインよ逆に笑うわこんなもん。
いやまあ、言うてる場合じゃないというか、切り替えないとなーって思うけどね。越えちまったものはしょうがないし、さっきの映像見た感じアタシの巻き込まれはもう確定。まだ見ても無い世界や街だし愛着もへったくれもないけれど、ただ、アンジニティって言葉にゃロクなイメージがないわけで……第一印象の差はでっかいわね。
んじゃま、とりあえずイバラシティ陣営につくかなーとか、
よく考えたら今それどころじゃなくね? とか。
何はなくともまず探すべきは今日の宿じゃない? とか。
異世界だし初手は野宿が安定よね、とか。
どっか人のこなそうな小高い丘とかないかな……とか。
「ま、なんとでもなるし、なんとでもできらあね。
……イバラシティ到着ーっ! っとぉ」
アタシは脳内で雑多な思考を回しながら、イバラシティの西岸。
オオキタ港に上陸した。
③:【瑠璃瑪】
――多分、私は主人公だった。
読み終えた文庫本を閉じる度、そうした思いが頭を過ぎる。
子供の頃からずっと、まるで歩むべき道を整備するかのよう周囲が状況を変えてくれた。当時は疎ましくも思ったけれど……いや、当時も今も、そうしろとばかりに整えられたそれが、良い物だとは思えないけど。
ただ、私はそれを……用意されたものを掴めなかった。
私は、パパのようにはなれなかった。
何を用意されても、どれだけ背中を押されても、少なくとも私が望んだ道には戻れなくて……。
だから今度は、自分の力でやってみようって。
掌をこぼれ落ちた分だけ、新しい物を集めることができたなら……そう思って走ってきたつもりだけど、結局、どこかで間違えちゃうらしい。
その都度、誰かに止められた。
私はそれなりに強かったつもりだけど、言ってしまえば、戦った誰よりも私のほうが強かったとさえ思うけど。
それでも、勝てなかった。
私の勝ちたいと思う理由を、相手のそれが上回った。
まるで誰も彼も、私の力でも存在でもなく、私の理由だけを否定するかのように。
……さすがに、そんなことを何度も繰り返したら私だって気付く。
きっと私は、戦ったらいけないんだ。
もう、私が力を振るうことそのものを、世界が悪と断じている。
そう思ってしまうくらい、ここぞという時だけ勝てなくて……。
そうだと仮定できるだけの根拠を、この世界は宿していて……。
だがら、私はもう戦わない。
長い長い空回りの果てに、ようやくとっておきの解法に辿り着いた。
私はもう、力を振るう必要はない。
私はもう、誰かと争う必要はない。
私はただ、誰かを。
たった一人の誰かを、全力で支援し……その誰かに、果てへ辿り着いてもらう。
それでいい。それだけでいい。
これなら、誰かを不幸にすることもない。
うまくいけば、みんなが幸せになる。
この島なら。
本来なら、私たちが辿り着けるはずもない場所なら。『神の戯れ』に乗じる形で、私なら辿り着けた此処でなら――きっと、誰の邪魔だって入らない。
私は手筈を確かめるよう脳内で繰り返しながら、整備された港の端。
たった今到着したらしい客船を見遣り、一瞬、目当ての少女を視認する。
嗚呼、すぐに分かった。
力だけでなく、武器まで受け継いだみたいだね。
そっちの刀で助かったよ。
思わず笑みさえ浮かべながら目を背け、街へと戻る。
ここから先は、ただ意思を強く保つだけだ。
今後、何が起きたところで此処に居る私は一切を記憶しない。
アチラ側で生じた全てを知らぬまま、ただ、アチラの私が上手くやることを信じる他、何もできない。
なんともヤキモキする状況だけど、その程度なら耐えてみせる。
ハザマの何処かに居るらしい世界線能力者。
それに近付けば、この街から世界線を辿ることができたなら。
――きっと、私の万感は必ず叶う。
黄昏色に染まる空。
先ほど一瞬覗いたそれを思い出させるかのような冬空を見上げていると、風が髪束をかきあげる。
白銀に輝くそれ。
最近ようやく慣れてきた自分の髪が遊ばぬように抑えながら……
「みんな、幸せになればいい」
いつか、何処かで告げられたコトノハを呟いて。
それを告げてくれた女性の顔が一瞬浮かんで、すぐに消えた。
④:【手紙】
『咲へ
君がこの手紙を読むのは旅に出た後、移動中だと思う。
いやあ、色々大変だったとは聞いてるけど、失恋旅行とはね……。
本当、咲は父さんにも母さんにも似てるなあって正直笑いが止まりません。
詳しく話したっけ?
父さんは咲と同年代の頃、振られて旅に出ましたし、
母さんは父さんが他の子に告白したのを知ってしばらくしょんぼりしてました。あの時の母さんはそれはもう可愛くて、すぐ拗ねて、面倒臭くて……ぶっちゃけ、最近の咲はそっくりです。
咲には悪いけど父さんニヤニヤしちゃうなー!
本当、父さん母さんそれぞれに似てる所とか、咲の年頃とか。
そういう色々なことを考えるたび、あっという間に大人になるもんだなあとしみじみしてます。
ま、旅はいいものだよ! 父さんは止めないから、楽しんでおいで!
あと一度や二度振られた程度、人生における良いスパイスだって、次の恋が運命のそれかもしれないし。
閑話休題。
さて、父さんの能力については覚えてるかな?
その能力が発現したのも、そういった一人旅の最中でした。
咲には今のところ兆しもなさそうだけど、もしも、咲に能力が覚醒するとすれば旅の最中だと思います。
対処法に関しては以前も話した通り、さしてできることはありません。
ただ、今から覚悟を決めておくくらいならできるはず……ま、そもそもにして女の子の一人旅だし、常に最悪の事態を覚悟して動くようにしてください。
一応、もう少し込み入った助言をすると、咲が国外に出ている場合は問題ありません。短い旅行になるとは思うけど楽しんで欲しい。
咲が電車やバスでの移動中に読んだ場合も、そんなに気にする必要はないでしょう。北国はご飯が美味しいし、人も暖かいです。
良い旅になることを祈っています。
それじゃあ、また咲に会える日を楽しみにしているよ。
お土産は要らないから、気が向いたら連絡してください。
絶対しないだろうなーって正直思ってるけどさ!
父さんより』
『PS
話は変わるけど、それ以外。
もし咲が船の上でこれを読んでいる場合……それは、貴女の可能性です。
能力が発現してしまった以上、咲の旅は、それなりに長いものになるかと思われます。最悪、そのまま帰ってこない未来も有り得るでしょう。
帰りが遅い場合はこちらも手を尽くすけど、多分助けにはなれないと思ってる。だからまあ、何があっても咲らしく、できることをやり、できないことを避け、毎日を楽しんでくれることを願っているよ。
それと……船に乗ってしまったなら、これから咲は、世界線の概念が絡む事象に巻き込まれることになると思う。
父さんも咲もその辺は耐性を持っているし、自然と受け入れられるとは思うけど、普通の人にとってはそうじゃないことも分かるよね?
家の世界には昔から、手段を問わず別の世界線を手繰り寄せたいと企んでいる人がちょいちょい居ます。
船に乗った以上、咲が向かうのは特殊な土地だし、そういった連中も9割9分辿り着けないとは思うけど、一人だけ。特殊な土地だからこそ、縁を頼りに辿り着けるかもしれない人がいることを覚えておいて。
もし、青い瞳と髪の女剣士に出会ったなら、抜刀を許可する。
その時だけは旅を忘れて、どんな状況でも殺し合いだと思うこと。
油断せず、咲の命を第一に考えるよう心掛けて欲しい』
⑤【If-酸っぱい葡萄の物語-】
子供の頃からずっと、アタシは普通をやりそびれた。
大抵のことは自力で出来たし、他人を助けるとか思いつきさえしなかった。体格差がある時期もない時期も大抵の男子よりは強かったし、弱いヤツを立ててやろうって発想も皆無。
そーゆーのに興味を抱いた頃にはもう、相応のポジションに収まってたもんで……有り体に言えばモてなかった。
別にモテなくてもいいしって、子供の頃からそう思ってた。
でもある時、イソップ寓話にある酸っぱい葡萄の話ってヤツ。
高いとこに実った葡萄を食べたがった狐が、どうやっても葡萄にゃ届かなくてどうせ酸っぱいに違いない、と捨て台詞を吐く。
それを読んでさ、アタシはマジそんな感じだなーって思ったの。
マジで興味ゼロならまだしも、多少は興味あった癖に何かと理由をつけて避けっぱなし。いざ今更自分を変えられるかーいってトコまで来ちゃったら、あんなもん酸っぱい葡萄に違いないって思い込もうとしてるの、普通にダサイなーって。
あんまりにも凹んで、父さんに愚痴ったこともある。
父さんは半笑いで。
「言わんとしてることは分かるけど、その葡萄は多分ホントに酸っぱいよ」
なんて、アタシに悪い虫つかないで欲しいの透けて見えたわ超ウケる。
……今になって思えば、アタシが恋い焦がれていたのは最初からそれで。
甘さなんて求めてない。
どうせ酸っぱいと断じた自分の、アタシの期待した通りのモノを。
眉根を歪めるほど強い酸味を、心底から求めていたんだと。
アイツを知れば知るほど、気付かされる。
アイツは、それを味わってしまったから。
とびきりの美味だと。
今はもう届かない実もきっと美味しいに違いないと。
そう、思い込んでしまったから。
だから、アタシには到底美味しいとも、ましてやもう一度食べられるとも思えない果実が、何よりも尊いかのよう笑うのだ。
結局、アタシはその味を知らないままだし、これから知るかもわからない……暫定として、甘酸っぱくて喰えたもんじゃないということにしておくけれど。
ただ、いつかそれを口にしても、自然に、普通に、眉を蹙めることができるように。
例えば――失恋を失恋だと認めたときに。
鼻で笑って、次の恋を探すことができるように。
アタシは、誰よりもアタシのために。
嘘くさい笑みを纏った女と共に、騒乱を乗り越えなければならない。
今にして思えば、最初で最後になるであろうアタシの異世界旅行は徹頭徹尾それが全て。
だからこれは、アタシとアイツの……酸っぱい葡萄の物語だ。
⑥おまけ
プロフ絵全体図+α
小川咲
コンセプト:初期栗鼠ゲー時代からずっと愛用してたキャラの次世代で、当時やってたロールの進化版な大暴れを決めたい
銀月瑠璃瑪
コンセプト:栗鼠ゲーの〆と意識したら手が勝手に動いてたヘッド
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