裏山に最も早く現れる夏鳥 センダイムシクイ
5月になり、裏山に飛来する夏鳥も勢揃い。例年、裏山には、オオルリ、キビタキ、センダイムシクイ、ヤブサメなどが現れます。そんなメンバーの中で、最も早く姿を見せてくれるのが、センダイムシクイ。「チョチョビー」と鳴き声が聞こえてくると、センダイムシクイの帰還です。裏山では、4月の初旬には飛来します。今年は、全体的にどの夏鳥も移動が早く、3月28日に鳴き声を確認しました。
センダイムシクイは、マレー半島・ジャワ島・スマトラ島などで、冬を過ごし、春になると日本に帰ってきます。
センダイムシクイは、体長約12.5cm。頭・背・翼は、淡い緑色。胸・腹は、白っぽい色。嘴から眼の上を通って後頭部まで続く、白っぽい眉斑があります。
センダイムシクイが属するムシクイの仲間には、エゾムシクイやメボソムシクイなどがいます。ムシクイの仲間は、鳴いてくれれば種を特定することはできますが、外見だけで判別することは難しいと言えます。
では、外見では判別することができないのかと言うと、僅かながら違いがあります。センダイムシクイには、頭の上部を通る頭央線があります。頭央線が確認できれば、センダイムシクイであると判断できます。
また、下嘴や足の色でも判別できますが、こちらは光の具合で見え方が変わるので、即座の判別は難しいと言えます。
センダイムシクイを漢字で表すと「仙台虫喰」。「虫喰」は、ムシクイの仲間の漢字表記で、名前の通り昆虫を主食とすることから名付けと考えられます。
一方、「仙台」は、宮城県の仙台市から名付けられたかと言うと、そうではないようです。既に江戸時代には、センダイムシクイと呼ばれていたようです。文献などに由来が残っていればいいのですが、ハッキリとはしていないようで、ネットなどで調べると、大きく2つの説があるようです。
一つは、鳴き声が「ツル チヨ ビー」と聞こえることから、「ツルチヨムシクイ」(鶴千代虫喰)と呼ばれ、さらに鶴がなくなって「チヨムシクイ」(千代虫喰)となり、漢字の「千代」の読み方が、「センダイ」に変わったという説。もう一つは、鳴き声が「ツル チヨ ギミー」(鶴千代君)と聞こえることから、鶴千代君を主題とした人形浄瑠璃・歌舞伎の題目である「伽羅先代萩」(めいぼくせんだいはぎ)からセンダイムシクイになった説があり、最終的に「千代」「先代」が「仙台」という漢字表記になったというものです。ただ、何故、「仙台」という漢字が当てられたかは、明確にはわかりませんでした。
多分、鶴千代君を取り上げた「伽羅先代萩」が、仙台藩伊達家の御家騒動をモデルにしたものであり、センダイムシクイと聞けば、仙台藩伊達家を思い浮かべて、仙台虫喰になったのだと思います。そう言う意味では、宮城県の仙台市とは関係ないと言うことではなさそうです。
野鳥の囀りを人間の言葉に置き換えたものを「聞きなし」といいます。センダイムシクイの聞きなしは、「焼酎、一杯、ぐぃー」と言われます。実際には、「焼酎、一杯、ぐぃー」には聞こえないような気がします。これは、野鳥のあるあるネタの一つです。
センダイムシクイは、夏鳥として関西で観察することができます。
渡ってきた当初は、ペアになるために盛んに囀ります。木の頭頂部や枯れ枝の先で、姿を見せつけるかのように囀ってくれるので、比較的、姿を確認しやすい時期になります。
その後、時間が経過して、繁殖の時期になり、新緑が深まってくると、センダイムシクイを確認しにくくなります。「チョチョビー」の特徴的な鳴き声は聞こえているのに、どこにいるのかわからない、姿を確認しても動きが早すぎて、見失ってしまうなど、観察時にイライラすることになります。それでも、ムシクイという名前が示すような、昆虫などを食べるために木の葉の中を移動しているので、鳴き声を確認したら、虫がいそうな葉の付け根や枝先などを集中的に見ていると、以外と姿を確認することができます。
さらに時間が進んで、繁殖が終わった8月ぐらいになると姿を見る機会も増えてくるのですが、囀ってくれないので、ムシクイと確認できても、センダイムシクイと判別することが難しくなります。
こんな感じなので、センダイムシクイは、最も身近な夏鳥だけど、意外と確認(撮影)できない野鳥というイメージです。
こんな感じでセンダイムシクイを観察しています。
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