ある日の出来事 選挙に行こう2021
20~30年前のとある夕方。
帰宅ラッシュで混み合う、下り電車を待つ始発の電車のホーム。
そこに10人位の、身なりのよい初老の紳士の集団。
白髪の者も黒い頭の者もいるが、全員50~60代位だろうか。
にこにこ上機嫌で高らかな笑い声を出しながら、
「あなたはすごいですな」「いやいやあなたこそ」
中心にいる2人がお互いに褒め合っている。
周りの者はお付きの者のようだ。
企業の幹部か、政治家か何かだろうか。
そこへ電車が入って来た。
夕方の上り電車の折り返しなので電車はガラガラ。
乗っている人はほとんどいない。
老紳士集団は真っ先に乗り込んで行った。
するとガラガラの車内のガラガラの椅子に1人の男が横になっていた。
肌は日に焼けて服はだいぶ汚れている。ホームレスのようだ。
疲れているのか、終点についたのに気づかずにぐっすりと眠り込んでいる。
「何だ、こいつは」
老紳士集団は、眠っているホームレスの両腕と両足をと、お付きの者が掴み持ち上げて振り子のように大きく降って、そしてなんと、電車のホームにぶん投げてしまった。
ホームレスは驚いて飛び起きて何も言わず去っていった。
老紳士集団は空いた椅子の前で、
「あなたがどうぞお座り下さい」
「いやあなたこそどうぞお座り下さい」
とにこにこやっている。
そこに他の乗客達が恐る恐るゆっくり入って来た。
1人の茶髪の若者が老紳士達に向かって言った。
「おじさん達ひどいよ。あの人何もしていないよ。」
すると老紳士達は、
「何だお前は」「生意気な」
10対1の口論が始まった。
皆が心配そうに見守っている中で若者は大きな声で叫んだ。
「おじさん達うるさいよ!出て行ってくれよ!」
その時、乗客から一斉に拍手が起こった。
「ぐっ。では出ていってやる!」
老紳士たちは電車を降りた。
あの老害達は今頃何をしているだろう。
何もしていない人に暴力を振るった罪を償っている訳もなく、
相変わらずにこにこ、自分達を紳士であるかのように勘違いをし、
よい身なりで紳士であるかのように化け続けているのだろう。
これは日本社会の縮図だ。
大勢の人の見ている前で様々な暴力を振るう紳士に化けた犯罪者。
忖度出世、天下り、上級国民の親戚、親ガチャ。
どこにでもいる横暴な老害やその子孫達、忖度の取り巻き。
乗客の拍手がなかったらどうなっていただろうか。
もし何もできない、と1人1人が手を叩いていなかったら。
若者もホームレスを同じように暴力で追い出されただろう。
老紳士達を逮捕させる事はできなかった。
でも追い出せた。
老害に立ち向かう若者を守る事もできた。
1人1人が手を叩いただけだけで。
みんなの力で。
選挙も同じ。たったの一票、じゃない。
大昔だったらホームレスも若者も殺されていたかもしれない。
選挙権がない時代もあった。
非常にゆっくりだけど、世の中は少しだけどよくなっている。
それは先人達の努力によるもの。
選挙に行っても何も変わらないわけじゃない。
ほんの少しずつだから見えないだけ。
長い時間をかけて「今」は作られている。
あきらめて何もできなかった先人。
あきらめず何かをした先人。
自分達がどちらの未来の先人になるかを僕達は選ぶ。
選挙に行こう。
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