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Vol.24 三隅 将吾|”感染症研究”、”ワクチン開発”、”天然物創薬”の三矢で感染症と闘う博士

#いまのせいいっぱいで #やってみないとわからない #終即始

1.どのような研究をしていますか?

 私は、”感染症研究”、”ワクチン開発”、”天然物創薬”の分野で研究を行っており、これらの分野を横断的に探究しながら、感染症に対する予防策や治療法の開発を模索しています。
 感染症やワクチン開発の分野では、感染実験や動物モデルを用いて、ウイルス感染のメカニズムを解明し、それに基づいて次世代ワクチンや新しい治療薬の開発に挑戦しています。特に、効果的で安全なワクチンアジュバント(ワクチンの働きを助けるために添加する物質)や粘膜ワクチンの開発を通じて、感染症の予防に力を入れています。さらに新興感染症に対応するための治療戦略や治療薬の開発にも注力しています。
 また、天然物創薬の分野では、自然界に存在する有用植物や微生物を基に、抗ウイルス作用や免疫調節作用を持つ物質を探索し、それらを予防と治療の両面で活用できるように研究を進めています。有用植物や微生物から得られる生物活性物質を探索し、それらの予防効果や治療効果を明らかにすることで、自然界の恵みを新しい治療法に応用することを目指しています。
新しい感染症治療法の確立やワクチン開発は、病気に苦しむ世界中の人々を救い、感染症の予防と治療の両面で大きな貢献を果たすことが期待されています。さらに、天然物創薬は、持続可能な医療資源を提供する手段として、未来の健康社会を支える重要な役割を果たす可能性を秘めています。
 私がこれらの研究を続ける理由は、単に知識を得ることだけではなく、その知識が予防と治療を通じて人類の健康に直接貢献したいという気持ちがあるからです。現代社会が直面する課題—感染症やパンデミックへの対応—には、予防策と効果的な治療法が不可欠であり、一人では立ち向かうことはできません。仲間とビジョンを共有し、共に困難な壁を乗り越える過程は、私たちの研究において何よりも重要であり、常に挑戦の意欲を掻き立てるものです。
 新たな予防策と革新的な治療開発に対し仲間と共に挑む喜び。私たちの研究によって救われる人々がいる可能性があり、私たちの努力はその未来を創り出す礎となることを信じて続けています。

国際的な連携を視野に入れ、世界の感染症に対する課題解決に向けて取り組んでいます。特に、粘膜から侵入する病原体を排除するためのワクチン開発を進めるとともに、根治療法が確立されていないHIV感染症やB型肝炎感染症、そして新興感染症に対する予防および治療戦略の開発にひたむきに取り組んでいます。

2.どのような人生を経て、熊本大学に?

 10代は、良き指導者に巡り会えたことも有り、美術とバスケットボールの両方にはまってしまいまいした。この2つの活動が、「辛抱強さ」と「集中力」を養うきっかけになったと思います。
 大学入学後は、熊本大学薬学部のバスケットボール部に入り、キャプテンも務め、バスケ三昧でした。大学卒業後は進学して博士の学位を取得したいと考えていました。しかし、4年生の7月に生化学研究室の教授から『来年の4月から研究室のスタッフとして研究を継続しないか?』とお誘いを受け、大学院の進学をせずに助手として働くことになりました。「やってみないとわからない」という私のモットーにぴったりな研究環境があり、研究の面白さに引き寄せられるような形での選択でした。
 私が助手の頃の薬学部では、”不夜城”と呼ばれる研究室がいくつかあり、夜でも昼のように明るく電気をつけて熱心に研究しているところがありました。研究をはじめた頃は、タンパク質の機能を左右する翻訳後修飾に関して、質量分析装置を使って解析する研究を行いました。私の指導者は教授だけでなく、ドイツ人の研究者もいて、プロジェクトを共に進めていきました。現在では、タンパク質を質量分析装置で解析し、アミノ酸配列を特定したり、疾患原因タンパク質を瞬時に特定することは当たり前となっていますが、当時は熊本大学薬学部に日本初の質量分析装置が導入され、その対応を私が任されるという幸運に恵まれました。多くの研究者は『型破り』を目指す前に、まずはしっかりとした『型』を学ぶ助走期間が与えられます。しかし私の場合は、誰も(教授でさえも)触れたことのない質量分析装置を使って研究をすることになり、日付が変わる頃にアパートに帰ることが当たり前の日々を過ごしました。それほどのめり込む理由が、当時は十分にありました。
 このような日々がきっかけとなり、感染症研究にいち早く質量分析装置を導入できました。そして、私のこの研究に関する学術論文の審査をしていたエディターの元へ海外研究留学するチャンスにも恵まれました。留学中は、mRNAが自己複製する仕組みを使ってHIVワクチンを開発する研究を行いました。この海外での経験が、帰国後にワクチン研究を続けるきっかけになったと思います。また、平成29年に『地域イノベーション・エコシステム形成プログラム事業』に採択されたことをきっかけに、天然物創薬の研究にも取り組み始めました。
 『センター長/教授』という立場は、多くの方々に支えられ、偶然に就くことができたという感覚ですが、この役職の重責を果たすために、自己研鑽を積み、多くのステークホルダーとビジョンを共有しながら、前に進んでいきたいと考えています。
これらの研究生活をふと振り返ると、「やってみないとわからない」という価値観が常に自分の行動指針にありました。研究も人生も、挑戦を恐れずに時間をかけて少しずつ前に進むことが重要だと考えています。また、小学校時代の恩師から教わった「こつこつと粘り強く」という言葉は、今でも私の道標であり続けています。

左手前は、東京理科大の礒濱教授、右の黒いユニホームが私。
助手になって2年目の集合写真。中心のスーツ姿の先生は、私の指導者の庄司省三名誉教授。当時は、研究室で白衣を着ていないと「研究する気が無いのだろう!」とよくいわれたものです。

3.研究以外で実は没頭していて自分にとって欠かせないものは?

 私が大切にしているのは、「自分に今できる精一杯を尽くすこと」です。ただし、一人でできることには限界があります。そのため、他者と協力し、学び合いながら進むことが何より重要だと感じています。また、挑戦し続ける姿勢も大事にしています。どんな困難に直面しても、諦めさえしなければ、それは失敗ではなく、いつか成功につながる道の一部だと思っています。これまでの人生は、幸運にも素晴らしい指導者や世界的な研究者の教えに触れる機会があり、そこで得た哲学や姿勢が今の私の考え方に大きな影響を与えています。”完璧な人間はいないからこそ、失敗を恐れず果敢に挑むこと”が、真の成功への鍵だと信じています。

この写真は、研究室を主催して10周年のパーティをしてくれた時の写真です。
天然痘ワクチンの二股針。
世界で唯一ワクチンで天然痘ウイルスを撲滅したのは、この針のおかげ。

▼所属研究室▼

▼紹介記事1▼

熊大通信 vol.57

▼紹介記事2▼

熊大通信 vol.82


(編集担当:織畠知香、石本太我、前田龍成、赤池麻実)

***What is KUMADAI-HUB ?***

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日時:12/1(日) 12:30~18:00
場所:熊本大学工学部百周年記念館
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Kumadai-Hub事務局 :kumadaihub@gmail.com

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