忘れ癖
とある雨の日。
私は近所の図書館で資格試験の勉強をしていた。
突然近くに座っていたおじいさんが立ち上がり声を上げ始めた。
「あちゃー…やっちまった。また忘れてた…」
何かを思い出したショックで声が出てしまったようだ。
「こりゃまた母ちゃんに怒られる…」
おじいさんは奥さんにだいぶ尻に敷かれているようだった。
「昨日も大根忘れて怒られたし、こないだはニンジン忘れて怒られたし、どうしようもねぇなおれの忘れ癖は…」
おじいさんは物忘れが激しいようだ。
「また、かみさんに叩かれちまうよー。かみさん怒ると手がつけらんないからな…」
おじいさんが少し可哀そうに思えた。
「若い頃に結婚記念日忘れた時もだいぶやられたしなー」
(それはさすがに覚えておこうよ)
「早く帰って猫に餌あげなきゃ…」
急いで帰り支度を始めるおじいさん。立ち上がり鞄の中身を確認する。
「本、財布、図書館のカード、免許証、大丈夫そうだな」
続いて、時計やポケットの中身を確認するおじいさん。
「よし!忘れ物は無いな…おっといかんいかん早く帰らんと」
そう言うとおじいさんは…傘を忘れて帰った。