忘れられない言葉

以前の職場でお世話になっていた上司の言葉が忘れられない。

「自分のやりたいこと以外は7割までしか力が出ない」




この言葉を聞いた時の私は、仕事に対してのモチベーションを完全に失っていた。

周りが就職するからと「合わせて」就職した会社。
特段やりたいわけでもないのに「やりたい」とうそぶいた仕事。
自分の本当にやりたいことすら「逃げる言い訳」なのではないかと感じていた。

そんな感情を懐に入れたまま一年間働いたのちの面談で言われた。

自分の心を見透かされているのだと感じたと同時に理解してもらえたような気がした。

何をしてもやる気の無いだらけた社員として見ているのではなく、理解しようと努められているように感じた。
それがよほど嬉しかったのか、私は遠慮なくオフィスで泣いた。


それ以来私は自身のことを少しだけ理解できたような気がした。
自分が与えられた仕事に対してクオリティが低いことしかできなかった時でも自分ができない人間なのだと責めなくなった。
他人が10割でできていることを自分が7割どころか5割もできていなくても気にすることはないのだ。
自分のやりたいことに10割の力が出せれば何の問題もないのだから。




この言葉の肝は”7割までしか”という部分だと思っている。
”までしか”ということはそれ以下であっても何の問題もないのだ。
むしろ7割まで出せたら上出来だとも言える。

人間は誰しも自分がやりたいことだけをやって生きていきたいはずだ。
だからこそ多くの人はやりたいことでもないのに「やりたい」と自分にも会社にも嘘をつき、心の整合性を取り、給料を得るためだけの仕事に必死に就こうとする。
それ自体は何も悪いことではないし、むしろ普通に正しいことだろう。

ただ、そういった人たちは本当はもっとできる人たちなのだ。
7割までしか力を発揮できていないだけなのだ。
自分ができない人間だと卑下する必要は全くないのだ。

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