面白くない
「あいかわらずお前は面白くないな」
最近、出会って数か月の上司に言われて傷ついた言葉だ。
別に私はお笑い芸人でもないわけだから、そんなことを言われても特別傷つく必要はない。
ただ、気持ちの良いものではないのは確かだ。
家に帰ってシャワーを浴びながらボンヤリと言われたことが脳内に蘇る。
「面白くない」
何が面白くなかったのだろうか。
その時のことを思い返してみる。
話は前日に遡る。
LINEグループに突然熊の画像が貼られた。
続いて私をメンションし「XX動物園にくまがいるぞ」。
当然「はぁ…(私のこといじっているんだろうな)」と思った。
私は「よく見てください。人間でもねぇです」と返そうとした瞬間考えた。
そもそもこれはボケなのだろうか?
「XX動物園にくまがいるぞ」
これは何も間違っていない。
ただの事実の連絡だ。
おそらく「お前XX動物園に住んでいるのか」ということを言いたかったのだと思うが「XX動物園にくまがいるぞ」では情報不足ではないか。
更に送られてきた熊の画像も特段面白い点は無い。
動物園の檻の中にいるのであろう熊を人混みの隙間から撮っただけ。
熊も特に特徴的なポーズをしているわけではなく、ただ眠っているだけだ。
そもそもこれはボケですらないのかもしれない。
そう考えた私は、何の当たり障りのない「やっぱり熊は凛々しいですね」
と返すに留まった。
それに何もコメントを返すこともなく翌日に顔を合わせた際に
「あいかわらずお前は面白くないな」
と言われた。
思い出すとなんだかイライラしてきた。
これは私が全面的に面白くないのだろうか。
確かに、気の利いたコメントを送れなかった点においては私のセンスが至らなかった。
それは認めよう。
ただ、相手に全く非が無かったのかというとそうではないのではないか。
面白くないボケを面白くツッコむのは非常に難しい。
どんな腕の良いシェフでも吐瀉物で三ツ星を取る料理は作れないだろう。
そこまでとは言わないが、素人の私には難しいことだったのではないかと思う。
という感じで、自分の中である程度言い訳がまとまったので勝手に両成敗ということでこの件は水に流すことにした。