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敦賀にむかって叫ぶ
何度,叫んだことだろう。
冬の日本海に向かって...
いいえ、バスに向かって!!!
旅のゆくあて
平日の午後,ぱぱっと下着と洗面道具だけトートバッグに詰め,旅にでた。 旅行ではない。まったく計画なんてしてなかった。
大阪から乗換えなし電車一本で行けるところ,あんまり人が多くなく行ったことがないところへ。 中部か山陰か北陸あたりか。
ふとJR大阪駅のフリーペーパー 『西Navi』が目に入り,衝動にまかせ特急サンダーバードの終着駅「敦賀」行の切符を買った。
さて,福井県へは15年ぶり。過去には小浜に行ったことがあるけれど,何をしよう,どこに泊まろう? 駅前ビジホは嫌だし,ひとりで料理旅館を予約するのはもったい無い。
ゲストハウスだ!
古民家を改装なら落ち着けるだろうし,ビジホの2/3値段とお値打ちだ。特急の車内で予約し,到着後90分で食事と移動できるだろうと,20時過ぎ到着予定とメールを打つ。
人生に迷い,道にも迷って
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夕食は好評価の魚自慢の居酒屋さん。
水曜夜だが,なかなかの混み具合の人気店。若狭フグや越前カニに惹かれるが,はじめての店で五千円超えはちとシンドイ。ここは刺身盛り合せと日本酒でサクッといっとこ。
そして,カウンター隣席のひとり男性客も同じ刺身メニューだったため,大阪人のひと懐っこさでひと声あいさつすると...。
捕まってしまった
つい接客業のクセが出てしまい,彼の身の上話を聴きこんでしまい,思わぬ長居してしまった。 人生いろいろ,しかし亡くされた奥様の墓参りを毎月欠かさずのお話,静かにジワった。
店を出るともう8時半,しかも小雨。不慣れな土地の上,商店街から出ると街灯まばらで足元が濡れる。案の定,道に迷い,コンビニで道を尋ねたら,もっと前の角を曲がるべきだったと判明。あちゃー。宿に21時半になるとメールを打ち,濡れそぼり,くたくたで到着したのだった。
その古民家を改装したゲストハウスは床の間付だった。立派な欄間がしつらえられた十畳の和室に転がり込むと移動疲れと日本酒の酔いのせいで “おやすみ十秒“だった。乾燥が苦手だから,部屋の暖房を切って深く眠った。
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雪国の朝
ふと肌寒さで目覚めたのが朝の四時,つけっぱなしだった天井灯りを消して,二度寝し,今度はかすかな音で目覚めた。昨夜の雨が雪となり,屋根に降り積もった雪がとけていく水音だった。 福井県は雪国だった。
ところで,宿を発つとき「博物館通り」に立地していたことに気づく。シェアサイクルで博物館や神社や赤煉瓦倉庫をまわる案に反してあいにくの雨。歩くのは苦じゃないが,スニーカーが濡れて冷たいのよね。周遊バス(1日乗り放題500円)一択やな。昨日定休日だった銭湯も楽しみ!出発だ。
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名所スタンプを手ぬぐいに押してゆくラリーに参加し,「博物館」見学後,隣の山車の展示や「紙わらべ館」のスタンプも押し,バス発着の時間をつぶす。この10分が長ーーーい。雨で冷たいバス停に待つひとはなく,屋根もないのでちょっと風が吹くと(身体も気持ちも)冷え切って寒かった。通りを歩くひともない。ド平日の11時だもの,そんなもんかも? ここは順番に名所めぐりしよう。
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さて,赤煉瓦倉庫に到着。
バス時刻表 では 赤煉瓦発 12:01
その次が13:33とあるので, この1時間半はもったいないが,しゃあない。身体も冷えたし,鉄道ジオラマをみて和む。意外にもミニチュア電車や通行人が可愛く,敦賀の街並みや歴史の紹介もあり,面白かった。
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私は叫んだ
バス発車時刻まで,まだまだ。平日と土日とで,バス発着時刻が変わるのがややこしい。
旧駅舎 や ユダヤ人が入港した記念館 をみて時間をつぶすうちに,雨が小雪に変わった。
旧駅舎係員に聞いた時刻より1分早くバス停に着く。バスを待つ人は他に誰もいない。寒い。カイロをどっかで買おうと思ったが途中でコンビニ一軒もなく,身体が冷えてほんまに寒い。
10分待った。バスは来ない。
じっと待ってると寒い。 たぶん定刻1分より前に出発してしまったに違いない。あーぁやっちゃったな,トボトボ歩き出す。
と。バスがやってきた。
え! ちょい待って!!話が違うやん
あわててバス停まで戻ろうと駆けるが,路面が滑って走れない。たったの100m程なのに
こらー!待って!
ばかやろー
あほんだら
〇〇ったれ
汚い言葉で力いっぱい叫んだが,
運転手に聞こえるわけがなく
バスは走り去ってしまった。
去った男とバスは追いかけてはダメ.
絶対に追いつけないから
(続く)
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