母の家、わたしの家。
遺産の分配も喪中ハガキの手配も済み、友人から借りっぱなしの書籍「母の遺産」でも読もうか、と枕元に置きまだページを開かないうちに眠ってしまった。すると、母があらわれた。
ウチはまだ死んでへんで。
喪中ハガキなんか出したら、死んだことになるやろ、やめといて、たのむから。
と母が言うのだ。
いつもの表情で、しっかりした声で。
困った私が黙り込んでいると、
あんなぁ、願い事あるねん。
と手を握るぐらい近くに来て、つぶやいた。
家に帰りたいな。おうちに帰りたいねん。
母さんの家はお姉ちゃんが売却契約を結んで… と伝えるべきかそれとも?
迷うわたし、まだ声に出してないのに
母の瞳から涙がこみあげ、あふれて、幼女の泣き顔のように大雨のように頬をざぁざぁ涙がつたって。
嫌やー!
叫んで、すぅー、と姿を消した。
大丈夫か?
と相方に起こされて、うたた寝から目覚めた。
夢だった。
まだまだ喪失感.無力感は、わたしの身体を支配している。日にちくすりというけれど、母離れができず、いまだに母の存在の大きさに打ちのめされている。
そして、姉からのメールが絶たれ、いま現在どこに住まっているのかすら知らされてない。
その夜、相方に今まで一番長く住んだ場所について聞いてみた。留学時期やら転勤やら引っ越しやら。
「ここだよ。来日してもう二十数年住んでるし」。その答えに、わたしの家は相方の第二の家でもあることに気づかされた。居場所って大切だ。帰る場所と寄り添ってくれるひとがいて助かった、ホンマに。
コロナ禍で、自分の家や故郷に帰れないひと達が早くホームベースに帰宅できることを祈る。
写真:(この本はまだ読むタイミングではないらしい)
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