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何故か嫌われるエフェクターペダルのチップ部品

久しぶりでございます。
記事にするほどのボリュームの内容を考えたりまとめたりすることもないので最近は筆が重くなっております。
いのくまです。
最近はこれといって自分の活動もなく相変わらず隠居おじさんです。

写真は焦ってる僕と大リスペクトしてる推しのギタリストの後ろ姿。
どうでもいい話をすると最近ウェブショップを始めました、バンドの物販とか僕の作ったものが買えます。

さて今回は何故かペダルエフェクター業界において嫌われがちな「面実装部品」「チップ部品」の話をします。


1.そもそも表面部品ってなんぞ?

ざっくりした話ですが面実装部品とは、穴に部品の脚(リード)を通して半田し固定するのではなく、基板表面に貼り付けるようにハンダする部品を言います。
1960年代にその基本は確立され、80年代以降はスタンダードな部品実装方法となりました。
チップタイプの抵抗器やセラミックコンデンサを始め、トランジスタ、集積回路IC、コイル、電解コンデンサなど近年ではほぼ全ての部品品目に対して表面実装が可能になっています。

実装方法は至って簡単、ステンシル上の金属板を用いて基板にクリーム状のハンダを塗布し、チップマウンターと呼ばれる全自動チップマウントマシンで部品を仮置きします。
あとは窯に入れて焼けば表面張力も働いて自動的に半田付けが完了、少数の人数で維持管理ができ、ハンダ不良や手作業によるミスも大幅に少なくなり、より小型で安定した品質を提供することができるようになりました。

2.何故表面実装が急激に増えているのか

エフェクター業界においてはここ10年劇的に表面実装が増えました。
理由は幾つか考えられます。

部品供給問題

その一つが部品供給の問題です。

今まで数多く普及していた挿入タイプの部品がディスコン(終売)になり、新製品のICやトランジスタを中心に表面実装のみの供給が当たり前になってきました。
この波は現在電解コンデンサにまで及んでおり、国内大手数社は小径小型品の電解コンデンサの供給を数年以内に打ち切る方針を打ち出しています。

当然新しいICにインスパイアされ革新的な設計を行う場合、表面実装は避けては通れない道となっているのは勿論のこと、終売になった部品の代替で高騰している挿入部品より、新たに基板をデザイン、表面実装化した方が中期的コストからメリットがあり、それ以降の対応も容易になるわけです。

製造コストが下がり品質が安定する

前述した通り、機械さえあれば少人数で大量生産を安定して行うことができるのが表面実装の大きな特徴です。
また、基板の設計やサイズにもメリットが生まれます。

これまでの挿入部品では、部品の脚を曲げて挿入し、さらに脚を曲げて傾きを抑えたのち、基板を少し温めながらハンダの噴水の上を走らせます。
当然ながら、定番の部品では自動機による曲げとマウント、部品の脚カットを行いますが工数が多くかかります。
同時に脚の曲げ方向など基板の設計においての制約も少なくはないため、デザインスキルと人員も多く必要でした。
また自動機に通らない部品は当然ながら手作業による挿入工程が発生します。
どれだけミスを減らしてもハンダの具合など品質の安定は難しく、部品の管理なども含めるとかなりの手間がかかってしまうのです。

複合的要因

前述のように部品選定と製造工程の簡略化が容易となれば、当然「安い部品を選びやすい」「小さい部品を選びやすい」「運送コスト、管理コストが下げやすい」というメリットを生み、結果的に大幅なコストメリットと不具合率の改善を産むことができます。
当然ながらそれはサウンドが安定することにも繋がり、消費者にもメリットとなります。

3.モディファイに関して

表面実装化はある種の時代の必然と言えます。
その一方でモディファイ対策と呼ばれることがあります。

正直にいって1608サイズ(16mm×0.8mm)サイズ程度までであればモディファイは挿入部品を外しての改造より基板を痛めずに改造できると個人的には考えています。
それは穴を通っていない、部品をクリンチ(脚を曲げてからげる行為)がないため、ハンダを加熱すればポロッと取れてしまうからです。

1005サイズ以下超小型化している場合ではそれなり以上のスキルを要求されるため、素人レベルでは難しく、内容もによっては基板そのものへのアプローチ(レジストを剥がすなど)が必要になるでしょう。
しかし、やろうと思えばできるだけに、これをモディファイ対策が主のアップデートだとはメーカーも考えていないでしょう。
高騰する物価に対してはとても有効なアプローチであることは間違いないですが。

4.実際のところ

表面実装最高だぜ!的に読み取れる文章になったかと思いますが、実際は表面実装の割合が増えているだけで、表面実装一発の基板よりも、一部をDIP工程(挿入部品)で行っている場合も多いです。
これらはリフロー(クリームはんだを焼く工程)の後、部品を手作業ないし自動機にて挿入しハンダします。
結局は表面実装の部品点数、手挿入部品の部品点数、自動挿入の部品点数で実装の値段が決まるため、結局は表面実装の割合を増やせば増やすほど当然安くなるわけですが、できるところと出来ないところがあるのが現実問題でしょう。

また、別の部分でデジタル系のペダル等で極端に部品が小さい場合においては、修理などが難しく、修理見積もりが即基板交換で補償期間を外れると割と高額な見積もりがくることがあります。
これはデジタル製品の処理を行うマイコンなどの故障では故障の特定をして、その関連部品を総入れ替え、ソフトを書き直すなどの工程を踏むことを考えると、そもそも基板ごと交換した方が確実かつその後の耐久性なども担保される為です。

5.まとめ

正直な話、エフェクターにおける電子部品の話の大半は「ハッタリ」「個人ビルダーの聴覚に依存した自己研究」「誰かが言ってた話」とそのの延長としての情報が多分に含まれてます。
確かに表面実装のコンデンサの主となるセラミックコンデンサよりフィルムコンデンサが優る電気的な特性や、オペアンプの構造…言い出せばキリはないですし、音には影響することもあります。
ただ、表面実装だから〜な音がすると比較データを元に主張している人間がいるわけでもなく、なんとなく「部品の種類がわかる」ことが「わからない」になった為嫌悪感を抱く人間が増えたのかなと思います。
要するにロマンでしょう。

今回はざっくりと表面実装をメーカーが選ぶことのetcを書きました。
個人的には中規模程度の個人ビルダーでも採用する例が増えればいいのにな…くらいに思っています。

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