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平熱の人と高熱の人、そして多様性

平熱の人=息子のことだ、と思っている。

よく泣き、よく怒り、よく暴れて、全く寝かしつけもできなかった娘と比べると、2人目として生まれた息子はかなり大人しい乳幼児だった。

とにかくよく寝た。

寝かしつけなくても寝ていることもあった。

1人目の娘の時との違いがはげしく「私こんなに楽でいいのかな」と思うことすらあった。

ベビーカーにもきちんと大人しく座り続けることができた。娘とのこの雲泥の差はなんだろう?とも思っていた。
娘はとにかくベビーカーからおりたい子で、おろしたら今度はどこかで1人で走り出してしまうような衝動性を持ち合わせていた。
それに比べると、自分で疲れたら自らベビーカーに乗ってお気に入りのトミカを持ってさえいれば満足している息子の姿が信じられなかった。

息子は成長した今でもフラットである。

平ら。

精神的にいつでも安定している。

基本的に笑顔だし、他者のことは滅多に否定しない。

そして、私と過しているとお互いがお互いに平らな人たちなので、波はなく風も凪になる。

そうなのだ。

私も比較的穏やかだと言われることが多い。

言われた時は「何も考えていないからだよ」と思ったりもする。

一方で自分を平らにする努力をそれなりにしていることにたまに気づくこともある。

なんでかというと私の中には怒りの感情があるからだ。

私は本当は高熱の人だ。

不条理に関する怒り。

どうしようもない事態へのかなしみ。

おそろしいくらいにここに書かれた時と私は変わっていない。

読んでいて身震いするぐらい、芯の部分は固く頑なだ。私の中に確かなものとして存在している。

そしてこれを読んであらためて気づいたこと。

やはり書くことは私にとって大切なことであること。

悪しきものでも人を救うようなものでも、ことばは強い力を持っていること。

しかし一方でこうも思っている。

ことばは全てではないこと。

ことばが格式を持ってしまっては危険であること。

ただそこにあるものの一つに過ぎない。

ことばはもっと....何かを排除し分断していくものではなく、限りなくみんなに開かれているものだ。


話は脱線したが……私の怒りの感情は、やはり人への期待が根付いている。
「私だったらこうするのに、あるいはこうしているのに、なんでこの人は同じようにしてくれないのだろう。同じことを思ってくれないんだろう。」
私の中に常にうずまいている。

でも、思う。

当たり前だがそれは私ではないのだ。


相手に怒りをぶつけても返って来るのは怒りだ。

自分が武器をかざしたら相手も武器をかざしてくるのだ。


世界中で1人っきりになって


まわりがみんな敵に思えても


それは果たしてそうなのだろうか。


「みんな」なんかいない


本当は一人一人だ。


自分が「みんな」と思っているものは


本当は一人一人なんだ。

それこそ自分がそう思った時点で分断は始まっている。

分断を....壁を作っているのは己である。


己を正義と信じてふるまうことは、反対側から見れば悪だ。

自分の中の悪を見つける勇気。


自分の中にも揺らぎを作る。


それが多様性だと私は思う。


多様性は決して生ぬるいものなんかじゃない。


仲良しごっこでもない。


もっともっとシビアでストイックなものだ。



私の中の「みんな」を崩して一人一人に向き合うこと。


一人一人を敵とみなさず、丁寧に捉える。


一人一人に自分なりに誠実に向き合う。


相手の表現をきちんと受け止め

決めつけない。


「この人はいつもこうだから」にとらわれない。

相手は、いつの日かの自分かもしれない。

目の前のこの人はもしかして自分だった可能性があるかもしれない。

口で言うのは簡単だがとても難しいことだと思う。


そしてたとえ怒りがあろうとも


それを相手にぶつけてはいけない。


怒りはどこから来ているのか


私は何を期待していたのか。


私が相手にどんな影響を及ぼしているのか。


お互い合わないなら離れればいい。


向き合うなら、生まれた怒りはどこから来るのか。

怒りをもたらすものは相手ではない。


怒りは自分自身の中から生まれてくることを忘れてはならない。


高熱の怒りで相手を焼き尽くしてしまうなら


私はその熱で己を燃やしたい。


それはエネルギーに転換されるものでもあり、冷えてしまった自分自身をあたためるものである。


高熱で燃え尽きて灰になってしまったとしても


煙は立ち上っていく。


煙は私。


私がここにいたこと。

いつか遠い国のあなたにも


空を見上げてみれば


きっと見えるはずだから。






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くま
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