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ソーシャルワークの現状と課題(2)

社会福祉士のこと

前回,日本におけるソーシャルワークの問題点についてちょっとだけ指摘していたが,それは今後の課題として,とりあえず日本においては,いちおう社会福祉士が国家資格としてソーシャルワークを名乗っても良いと言うことになっている.そのことについて課題等を含みながら述べてみたいと思う.

社会福祉士とは何か

中央法規のサイトに「社会福祉士とは?」というサイトがあるが,社会福祉士とは何かを端的にまとめている.かいつまんで引用すると,

身体的・精神的・経済的なハンディキャップのある人から相談を受け,日常生活がスムーズに営めるように支援を行ったり,困っていることを解決できるように支えたりすること.また,他分野の専門職などと連携して包括的に支援を進めたり,社会資源を開発したりする役割なども求められる.
1987年の「社会福祉士及び介護福祉士法」制定と同時に誕生し、少子高齢社会がすすみ、さまざまな福祉的課題が注目される現在、社会福祉士への期待はますます高まってきています.

https://www.chuohoki.co.jp/skillup/toha/social.html

社会福祉士会では,倫理綱領として会員に対しての行動規範を定めている.その根幹にあるのが,ソーシャルワーク専門職のグローバル定義となっている.このグローバル定義の原理は,人間の尊厳,人権,社会正義,集団的責任,多様性の尊重,全人的存在を定めている.
このことから社会福祉士≒ソーシャルワーカーとして見なすことは妥当だと思う.

社会福祉士の人数など

社会福祉士は国家試験を受験し,合格後登録することで名乗ることができる.下の図は平成16年からの登録者数だが,後述する日本社会福祉士という職能団体の会員数が平成16年以前のデータが無く,整合性を図るためにそうした.平成16年に5千800人だが,毎年1万人から1万3千人程度の合格者が積み上がり令和3年で27万人程度の登録者がいる.

社会福祉士登録者数


社会福祉士会会員加入率

社会福祉士会会員数:割合

日本社会福祉士会は,社会福祉士登録者が任意で加入できる職能団体である.この団体に入ることで,例えば独立型社会福祉士の名簿に記載され仕事がしやすくなる.あるいは認定社会福祉士を取得するなどで生涯学習の継続性が図れる.成年後見制度のパートナー制度に加入することで仕事が斡旋されるなどのメリットがある.
しかし,平成16年は9345人が加入しているが,令和3年には1万9172人と7428人しか増えていない.そのため,社会福祉士登録者から社会福祉士会の会員の加入率を算出すると平成16年は28.7%だが令和3年には15.8%という組織としてもかなり縮小されているといえる.

社会福祉士と社会福祉士会会員の増減

社会福祉士/社会福祉士会/登録増加数

青い方が社会福祉士の登録者,オレンジ色が社会福祉士会の会員数の増加数となっている,この増加数は前年の登録者から引いた数字となっている.青色のほうが若干見にくいが平成16年と平成25年は1万人を切っているが,それ以外は1万人以上の数字となっている.
社会福祉士会はおおむね1000人前後で推移しているが,令和2年は34人しか増えておらず,令和3年は493人となっている.今後1000人をキープするのかそれとも500人を切るようになるのがスタンダードになるか予断を許さない.

おわりに

社会福祉士≒ソーシャルワーカーの需要は今後も増えていくことが確実であると思う.特に昨今は児童虐待にかかるソーシャルワーカーの期待は大きい.前提に社会福祉基礎構造改革などで権利擁護や人権意識の高まりとともにソーシャルワーク的な思考はますます重要視されるようになった.
そうした社会的要請に叶うように社会福祉士の登録者数はコンスタントに伸張し,令和3年には前年よりも2万人近く多くの登録者数となっている.今後も増加し続けることに変わりは無いと思われる.
その一方で,職能団体である日本社会福祉士会の加入者は少ない状況である.認定社会福祉士などの取り組みがイマイチ低調であり,会員からもあまり重要性が見いだされていない様子である.繰り返しになるが,ソーシャルワーカーの社会的要請は高まっている今,職能団体の存在意義をどう高めるか.少なくても会員の増加なくしてはあり得ないと言える.
いずれにしろ,ソーシャルワーカーはますます必要とされている今,そもそもソーシャルワークとは何かの考察が必要となると思う.
これらのことは次の論考に譲りたいと思う.

参考

認定社会福祉士に関する意識調査:日本社会福祉士会の調査(PDF) 
社会福祉士の倫理綱領(PDF)
石川時子(2021)「ソーシャルワーク倫理綱領の変遷と「社会変革」の一考察」『関東学院大学人文学会紀要』145,109-130.
三島亜紀子(2016)「ソーシャルワークのグローバル定義における「社会的結束(Social Cohesion)」に関する考察」『ソーシャルワーク学会誌』33,1−12.
藏野ともみ・古市孝義 ・朝倉, 由衣(2017)「認定社会福祉士制度の現状と課題」『人間関係学研究 : 社会学社会心理学人間福祉学 : 大妻女子大学人間関係学部紀要』19,175−18.


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