言ってしまった「お気に入り」の理由。
20代の頃、世間では絵本が流行りだした。
大人の絵本。大人が読む絵本。
流行りに乗っかろうと本屋を漁ってたら見つけた。昔、仕事と農作業で忙しかった母が初めて買ってくれた絵本。
「だるまちゃんとかみなりちゃん」
大好きな絵本だった。買ってもらってから何回も見た。
そう、読まずに見た。繰り返し繰り返し。
とにかく、絵が大好きだったのだ。
ぷらりと寄り道した本屋で立ち読み。大人になって物語の内容を初めて知った。内容はシンプルなものだけど、嫌いじゃない。
でも、それを読み終わったとき思い出したことがある。忙しい母に「この本大好き!」って伝えた時、母が「どんな内容だった?」て聞いてきて。
私は黙ってしまった。読んでないから内容なんかわからない。「読んでないの?」て言われて「うん、絵が好きだから」と、正直に伝えてしまった。
母は「読まないなら、もう買わない」と言っていた。
思い返すと、その後から絵本を買ってもらった記憶がほとんどない…。
忙しい中、わざわざ本屋に立ち寄り絵本を選んで買ってくれた母には、嫌な思いをさせてしまったのかも。
だけど、あの頃の私には確かに「お気に入り」であったことは間違いない。
大人になり、読んでみてわかったこと。
それは、やっぱり絵が大好きだと思ったこと。
今度、実家に戻ったとき
母に「今も昔もお気に入り」だと言うことを
伝えてみようと思う。