銀行を取り巻くリスクとシャドーバンキングの台頭
銀行は、「短期に借り、長期に貸す」というビジネスモデルであり、これは本質的な脆弱性を生み出す。
平常時、つまり人々が信頼しているときには問題ないが、信頼が失われたとき、すなわち1つ以上の銀行が支払能力を喪失したときに問題となる。(取り付け騒ぎとか)
→それゆえに、銀行のリスク管理が重要となる。今回は、銀行を取り巻くリスクとシャドーバンキングシステムを扱う。
銀行で重要な情報は何か
銀行は、一般的に以下の3つの情報をベースにマネジメント・評価されている。
貸借対照表:銀行の資産と負債の一覧表、総資産=負債+資本
銀行の資金源:負債、資本金(株主資本+利益剰余金)
資金使途:資金
銀行は負債(預金など)を売却し、その代金で資産(住宅ローンなど)を購入することにより利益を得る、つまり資産変換を行う。
銀行が望ましいサービスを低コストで生産し、その資産から多額の収入を得れば利益を得るが、そうでなければ銀行は損失を被るということになる。
銀行の資本構成
銀行の資本構成は一般の企業と異なるため、資本構成についても確認する。
株主の資金で銀行を設立する - 株主資本
i. 普通株式と優先株式は額面で表示され、剰余金勘定は額面を超える収益を表す。
ii. 利益剰余金は、累積当期純利益から株主への配当金を差し引いたものです。
iii. その他の資本は、通常、資本準備金を表しています。
iv. 少数株主持分は、少数株主に対する非支配持分です。預金預け入れ
Core deposit
i. 普通預金 (Demand deposits)
ii. 譲渡性預金(Negotiable Orders of Withdrawal, NOW)
iii. 貯蓄金自動振替(Automatic Transfers from Savings, ATS)
iv. マネーマーケット預金口座(Money Market Deposit Account, MMDA)
v. 定期預金 (Time deposit)
→通常は短期間に引き出されることのない安定した預金であり、金融機関の最も貴重で安定した資金調達源となっている。
Non-core deposit
i. 中央銀行が購入した資金および現先取引で売却した有価証券
ii. ブローカー預金
iii. 海外店預け金
iv. 連邦住宅貸付銀行の借入金(米国のみ)
v. 劣後債および社債法定準備金の保有、貸付、投資、銀行資産
i. 貸付金
ii. 投資有価証券
iii. 無利息現金預け金
iv. その他の資産
銀行の抱えるリスクとその管理
ここまで、銀行のマネジメントに重要な主要データ、資本構成から、銀行のリスクは何なのか、またそれをどのように管理するのか。
本題はここから。
流動性リスク
銀行が適時に支払いや義務を果たせないことによる、収益や資本に対するリスク。
i. 資金流動性リスクとは、資産の流動化や必要な資金調達ができなくなるリスクを指す。
ii. 市場流動性リスクとは、市場の混乱から重大な損失を被ることなく、特定のエクスポージャーを容易に解消または相殺できないリスクを指す。
流動性資産(現金等)は、金利が非常に低いため、保有するにはコストがかかる。(預金として預かった現金をそのまま銀行の金庫に入れておくのは、ムダ!)
そのため、銀行はこの保有コストの面から現金の保有を最小限に抑えようとします。
流動資産は、売却可能有価証券に分類される質権のない市場性のある短期有価証券と、売却した連邦預金および再販契約の下で購入した有価証券で構成されています。担保付有価証券は解除されない限り売却することはできません。そのため、コア預金から多額の資金を調達している銀行は、そうでない銀行よりも流動性が高くなる傾向にある。
信用リスク
ローンの不払いや支払い遅延による純利益の潜在的な変動。
このリスクのコントロールが最も難しく、重要となる。
純損失 = 総損失 - 回収額
将来予想される損失は以下の通り。
延滞債権は、まだ利息が発生し続けるもの。
不良債権は、90日以上支払期日が経過しているもの。
未収利息不計上貸付金は、現在利息が発生していない貸付金。
貸出条件緩和債権は、支払いまたは利息が変更されたもの。
(分類された貸付金には、認識された損失に対する引当金がある)
マーケットリスク
市場金利や価格の不利な動きにより、収益や資本に影響を及ぼすリスク。
このマーケットリスクには、以下の3つのリスクが関係している。
金利リスク:
市場金利の変動により、金融機関の純利息収益および株式の市場価値が変動する可能性。
株式および証券価格リスク:
トレーディング勘定ポートフォリオに関連する潜在的な損失リスク。
外国為替リスク:
外国為替レートの不利な動きにより金融機関が被るリスク。
資本リスク・ソルベンシー(支払能力)リスク
ソルベンシーリスクは少し特殊で、他のすべてのリスクが銀行の資本と支払能力に影響を与えるため、このリスクは個別リスクと考えることができない。
資本リスクとは、資産の市場価値が負債の市場価値を下回る潜在的な減少を指す。
企業が形式的に債務超過になるのは、その純資産がマイナスになったときである。基本的に銀行が破綻するのは、キャッシュ・インフローが必須キャッシュ・アウトフローを満たすのに不十分な場合である。
オフバランスシートリスク
オフバランスシートの負債に起因する予期せぬ損失により、収益や株式の市場価値が変動することを指す。
リスクベースの資本要件は、オフバランスシートの活動を「オンバランス」シートの同等物に変換し、それに対して資本を保有することを銀行に義務付けている。
(Tier1(またはコア)資本は、普通資本に非累積型優先株式を加え、非連結子会社の少数株主持分を控除したもので、無形資産に該当するものはない。リスクアセットとは、リスク調整後資産の合計。)
オペレーショナル・リスク
ここでは、営業費用が予想と大きく異なる可能性を指す。
以下の結果として発生する可能性がある。
業務の中断
取引処理
不適切な情報システム - 内部統制の違反
顧客責任
法的リスク
強制力のない契約、訴訟または不利な判決により、金融機関の業務、収益性、状態または支払能力が中断または悪影響を受けるリスク。
レピュテーション・リスク
事実であるか否かにかかわらず、ネガティブな評判が銀行の顧客基盤に悪影響を及ぼすリスク、または費用のかかる訴訟を引き起こし、銀行に悪影響を及ぼすリスク。
シャドーバンキングシステム
近年では、預金を原資に融資を行う伝統的な銀行業は衰退したと言われており、銀行融資は、多くの異なる金融機関が関与する証券市場経由の融資に取って代わられている。
証券化 (Securitization)
小口で流動性の低い金融資産(住宅ローン、自動車ローン、クレジットカード債権など)を束ねて、市場性のある証券にするプロセス。
シャドーバンキングシステムの基本的な構成要素。
伝統的な銀行業では、一企業が資産の変換プロセス(預金→銀行→貸出金)に携わっていたが、証券化では多くの異なる金融機関が協力している。これらの金融機関が、シャドーバンキングシステムを構成している。
資産の返還プロセスは、
(i)ローン生成 → (ii)収納代行 → (iii)組み立て → (iv)分散
(i) ブローカーが銀行による住宅ローン融資を手配する
(ii) 金融機関Aによって利息・元本の回収される
(iii) 金融機関Bが多数の住宅ローンを束ね、元本・利息を第三者に渡す
(iv) 投資銀行が元利金の債権を有価証券として証券化し、投資信託や年金基金といった他の金融仲介機関に売却する
サブプライムローン
2000年代に証券化によって進展した重要な金融革新は、サブプライムローンのブームと関連している。サブプライムローンとは、信用度がそれほど高くない債務者を対象に提供される住宅ローンの一種である。
サブプライムローンの爆発的な増加は、2007年〜2009年の世界金融危機を招いた重要な要因とされている。
この時の問題を簡単に説明すると、
住宅市場バブルで毎年住宅の値段が上がっているという背景で、住宅投資ブームが加熱し、購入者は、ローンで購入した住宅を数年後に売却することで、ローンを返済しかつ利益が出るので更に新たに住宅をローンで購入し、、、という構造が出来上がっていた。
金融機関はより多く儲けるために、本来はローンを組むことができない低所得者層にも住宅ローンを販売し、その高リスクな債権(住宅元本と利息を受け取る権利)を他の低リスク債権と混ぜてリスクをならすことで証券化することで、証券市場でも多く売買がされた。
こうして知らずの間に世界中にアメリカの住宅ローンリスクがばら撒かれたのである。
先日ブリストルに行ってきた。
街中にバンクシーのストリートアートが点在しているため、スタンプラリーのような感覚で街中を回れるので、旅行しやすい。
そして、バンクシーの作品は社会風刺等、内容がわかりやすいので知らない人でも楽しめるのがいい。
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