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夏なので怖い話でも

稲川淳二さん風に読んでもらえると雰囲気が出るかも。

あんまり怖くなかったらすいません。


あれは僕がまだ中学生の頃です。

夏休みも中盤に差し掛かり、じめっとした暑い日が続いていました。

その日は隣の市で祭りがあるとのことで、当時仲の良かった友達3人と

自転車を漕いで向かいました。

夕方とはいえ、わざわざ着た甚平も汗でびっしょりに濡らしながら、

山道を立ち漕ぎし、「お前必死だなぁ」なんて真っ赤な顔して笑いあったのをいまでも覚えています。

神社の境内で行われていた祭りは、市民の盆踊りを中心に、屋台が10数店舗出ていて中々の賑わいをみせていました。

着物の女性に見惚れ、たむろするヤンキーに怯え、地元民のふりをして踊りに参加するなど、それなりに楽しみながら、なんだかんだで祭りが終わる夜10時までいました。

そして、最後のシメにと閉店間際のたこ焼き屋に行くと、最終日ということもあり、1箱おまけにもらいました。

分け合って食べようと神社の裏側にまわり、ぽつんとある街灯の、人通りの少ない場所に腰を下ろすことにしました。

いざ皆で食べ始めると、べちゃべちゃの生地にゴムのような味が口いっぱいに広がり、

ダメだ、と全員飲み込むこともできずに吐き出す始末。

屋台のオヤジとたこ焼きに向かって散々な悪態をついた後に、残りは全部捨ててしまうことにしました。

そこへ、少し離れたところに妙に痩せた三毛猫が暗闇をゆっくり横切っていくのが見えます。

僕らは顔を見合わせ、猫ならこんなクソ不味くても食べるだろう、とたこ焼きを1つ、猫の前に放り投げてやりました。

猫はこちらの方が訝しがるほどに、特に驚く様子もなく、こっちに目を向けもせずにたこ焼きに近づき、少し臭いを嗅いだ後に大口開けてかぶりつきました。

すると次の瞬間、


「う~わっ!!」


と大きな鳴き声をあげ、たこ焼きをペッと吐き出すと、逃げるように立ち去って行きました。

こんな顔で→ニャァァァ---╬╬(╬^ಠxಠ)♭

意地の悪い僕らは笑い転げ、これが一番面白かったとそれぞれ家に帰りました。

真夜中、僕はベッドに入ってからも寝苦しさになかなか熟睡することができず、うつらうつらと夢と現実の境をいったりきたりしている時です。

あの猫について、1つ不可思議な点があることに気が付きました。

もしかしたら、あの猫は地縛霊や浮遊霊、何らかの人間の霊に憑りつかれていたのではないか。

長い時間をかけてその考えに至ると、急に恐怖で身体が震えました。

猫の不可思議な点、それは、猫はふつう、「う~わっ」なんて言わないんです。

僕は青ざめた顔で翌朝になるまで合掌していました。

そして、早朝から例の友達2人を起こし、その話しをすると、顔がみるみる青ざめ、

「でも確かに俺たちはあの声を聞いたんだ」

と顔を歪めながらお互いに確かめ合いました。

そして、もう一度あの場所へ行ってみることにしました。

朝から一日中待ちましたが、なぜかあの猫が現れることはありませんでした。

昨日見た猫が今日はまったく姿が見えないなんてありえるのでしょうか。

他の猫はいました。

これはいよいよオカシイと、また次の日、あの神社の神主様に、懺悔と共に僕らが見たことを詳細に伝えることにしました。

すると、話しが進むにつれて神主様の顔には困惑の色が表れ、遠くを見つめるような目で、もう帰りなさい、とだけ答えられました。

おそらくあの猫には何らかの深い因縁や、容易に人に言えないような悲劇が隠されていたのでしょう。

それから再びあの猫を見ることは、ありませんでした。

未だに真相は藪の中です。

おーわーりー

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