スリープノーモアに代わるNYの新しい演目「Life And Trust」
NYの新しい演目Life And Trustの概要を少しだけネタバレありで楽しみたい!と思ってる方のお役に立てればという記事です。
NYのSleep No Moreが終わると聞いて
中国はいろんな密室や演劇があるけれど、やはりSleep No Moreは唯一無二のエンタメだと今でも思う。そのスリープノーモア(以下スリモア)のニューヨーク版が終わると聞いて、やっぱり一度見ておこうとNY行きを決意しました。
さらにNYスリモアをプロデュースしている団体Emursiveが新しい演目「Life And Trust」(以下ライトラ)を2024年6月からプレショーをスタートする(2024年8月から正式スタート)と聞いて、とても行きたいけれどどんな話なのか?どういう構成なのか?どこにあるのか?など楽しめるかどうか不安がぬぐえず、色々調べた内容&実際に行って分かったことを共有したいと思います。
Life And Trustの舞台「Conwell Tower」
スリモアの舞台が「マッキトリックホテル(The McKittrick Hotel)」であるのに対し、ライトラの舞台は「コンウェルタワー(Conwell Tower)」という59階建てのタワーです。金融界の巨人J.G.コンウェルの依頼で建てられたもので、20世紀初頭の金融界の豪華さと野心を示す不朽の証となっています。
建物内は歴史的な「ライフアンドトラストバンク(Life and Trust Bank)」と「コンウェルコーヒーホール(Conwell Coffee Hall)」があり、スリモアのマンダレイバーのような存在がコンウェルコーヒーホールにあたります。
上記は設定上の話ですが、Wikipediaを見ると元々はニューヨークの歴史ある銀行であるシティグループの前身であるシティバンクファーマーズトラストの本社だったようで、金融街であるウォール街近くに位置しているのも納得です。1929年に建築計画が提出されたときにはこの建物は世界一の高さになる予定だったようでして、このエピソードからも建物の豪華さや壮大さが伝わります。スリモアの開業しなかったホテルが舞台という話と似てて期待感上がりますね。
2015年に商業テナントが退去し、段階的に住宅に改装されたそうで居住者も結構いるようです(そのため入場前に建物の外で並んだりできず、時間ぴったりにならないと入れない)。スパイダーマンのロケ地だったり、ニューヨークで最も美しい建築物の一つでもあるようです。確かにスパイダーマンもバッドマンもいそう。
2024年9月13日追記
芸術監督が「銀行の建物としての機能的な歴史の亡霊、金庫室、壁の厚さすべてがエネルギーを発している」とコメントしている通り、実際銀行だったという事実がライトラの深みをかなり足していました。空間がすごい。
Conwell Towerの広さ
59階建てのうちライトラは6階分を使用しているのですが、その面積は10万平方フィートで、スリモアの2-3倍の広さに感じられるとレビューがありました。スリモアは6階は普通には入れず実際には5階建てのようなものなので6階分あるライトラが広く感じられるのはそうだろうと思うのですが、体感2-3倍となると相当広そうです。
2024年9月13日追記
天井も相当高く、スリモアよりかなり広く感じました。個人的にはまさにNYスリモアの2.5倍くらい(体感上海の2倍くらい)。スリモア以上に階段が多いので、裾を踏まない服やスニーカー必須かと思います。
Conwell Coffee Hallの概要
ライトラの待合場所として利用されているコンウェルコーヒーホール。
このホールにある大きな絵画に物語の内容が多々隠されており、ここで絵画に思いを馳せたり考察を重ねてもいいですし、友達と歓談してもいいし、自由にプレショーまでの時間を待つことが出来ます。プレショーカクテルアワーチケットを購入すると一口サイズのめちゃうま軽食も提供されます。
現在ライトラは昼公演がないため、昼は一般でコーヒーホールを利用することができます。当日公演を見れない場合はここでコーヒーを頼むだけでも雰囲気が味わえるかも?さらに当日券が出ていれば購入することが可能な上、手数料分安く購入することが出来ます。営業時間はこちらをご参照ください。
Life And Trustの時代設定とテーマ
物語の舞台は1929年の株式市場の大暴落前夜に悪魔と取引するところから始まり、取引完了後に1894年にタイムスリップするお話しです。
主なテーマはお金・セックス・権力で、ストーリーは、Faust(ファウスト)をベースにしており、欲望と誘惑が交錯する中で銀行としての「Life And Trust」が、どのようにして人々の夢を現実にしてきたのか、またその裏に潜む秘密を解き明かしていくというものです。
この記事はライトラがパンデミックからオープンに至るまでのストーリーを紹介してるのですが、「すべての時計が株価暴落の日である10時29分に設定されていること」というのにしびれました。そのあと1929年10月24日じゃなかったっけ?って思ったのは秘密です。(時計は確かに10:29になってました。なんでだろう・・・?)
Life And Trustの概要(少しネタバレあり)
ここまでの情報で、銀行を舞台に欲望が渦巻くストーリーなんだろうなぁと漠然と分かったけれど、ニューヨーク在住ではないので見れるチャンスは限られており、数回で楽しみ尽くしたい・・・「言語依存ないよ」「こういう流れで入場するよ」「マクベスは概要見といたほうがいいかも」とかスリモア初回の友達にアドバイスする項目くらいは知ってから行きたい・・・と思い、海外サイトをあさり、体験者に稚拙な英語で質問しを繰り返し、わかった内容をまとめました。英語圏ライトラ有識者たちはとてもやさしかったです。みんなありがとう!!!
言語依存はあるのか?
答えから言うと、「冒頭5分は完全に言語依存あり」です。そのあとも会話はあるけれど「冒頭5分とベースの物語が分かってれば英語があまり分からなくても行けると思う」と数名から教えてもらいました。
他にも英語以外の話者のためにサポートがあるはずって何人かから言われたので問い合わせたけど返ってきませんでした。期待せず現地で確認します。あと何人かから1on1は英語じゃない言語でわからなかったと聞きました。
2024年9月13日追記
言語依存については上記の通りだと思います。不安な方はプレショーの内容を頭に入れていけば大丈夫かと思います。
英語話者以外のサポートについてはコーヒーホールのバーエリアの南側、ソファーの近くに赤い「メニュー」フォルダーの中にプレショーの説明があるとの情報ありましたが、コーヒーホールでスタッフに声をかけて日本語見せてもらいました。内容としては「イマーシブをどう楽しむかの心得」みたいなものだったのでこの記事を読んでいれば不要かと思います。気になる方はこちらでご覧ください。
ベースの物語はあるの?
あります!何人かに聞いたところ、以下は確定の物語のようです。
スリモアよりストーリーラインが多く、登場人物も多いみたいです。成功のために悪魔に魂を売るというストーリーになぞらえて、以下の作品をベースにしているといわれています。ドリアングレイは割とそのままだったので、原作を知っているとより楽しめそうです。
ゲーテ『ファウスト』
ドイツの伝説で、知識と力を求めて悪魔と契約を結ぶ学者ファウストの物語。これがメインのベース。オスカー・ワイルド『ドリアン・グレイの肖像』
美青年ドリアン・グレイが快楽に耽って堕落し破滅するまでの過程をたどる。ライトラでは若さと美貌を保つために魂を売る男ドリアン・グレイが登場します。パウエル&プレスバーガーのバレエ映画『赤い靴』
赤い靴はバレエの主演に抜擢され一躍スターとなった若きバレリーナが、恋愛とバレエとの間で苦悩した末に悲劇的な最期を迎えるまでを描く物語。登場人物にバレリーナがいるのので、一部要素があるようです。イヴリン・ネスビット(Evelyn Nesbit)
米国でモデルとして時代のトップを走り、ヨーロッパでも人気を博した実在人物。イヴリンはいろんな男を手球にとって、もっとも金のある男と結婚した悪女とも言われている。アルコールとドラッグの依存症、自殺未遂、二度目の離婚など波乱万丈な女性だったよう。全然知らない方でした。
スタンフォード・ホワイト(Stanford White)
アメリカ合衆国の建築家。多くの市民、宗教の建物だけでなく、富裕層のために多くの家を設計したネスビットの夫で実在人物。1901年、ホワイトは酩酊状態になり、当時16歳のイヴリン・ネスビットをレイプ。彼女はその後、ピッツバーグの億万長者であるハリー・ソーと結婚した。ハリーはホワイトをライバルと見なした嫉妬深い夫であったようです。とネット記事を見たのですが、結局夫なのか?イヴリンと関係があったことは確か。E.L. ドクトロウ『ラグタイム』
人種差別や階級差別を描いたストーリーで史実とフィクションが見事に交錯する小説。今世紀初頭の躍動期のアメリカを浮き彫りにする小説らしい。日本でも石丸幹二さんらでミュージカル上演されていたようです。ここにもイヴリン・ネスビットがいる。
ループするの?
ループします。ただスリモアと違って2ループです。
1ループ目と2ループ目のラストは異なるため、各登場人物の1ループ目の最後を見逃すと、その公演では二度と見れない仕組みです。
スリモアの3ループ制のありがたさが身に沁みます。
入場の方法は?
スリモア同様、コンウェルコーヒーホールに入るときにセクション名が書かれたカードを渡されて、各セクションごとに呼ばれます。カードはスリモアのトランプの代わりと思ってもらえるとわかりやすいと思います。
セクションは「Mergers & Acquisitions(M&A)」「Stocks & Bonds(株式・債券)」「Wealth Management(資産運用)」という名前があり、どれから呼ばれるかはわかっていません。
各セクションごとに呼ばれたのちに各セクション部屋で待機&プレショーを見て、ショー会場へ入場となります。
スリモアと大きく違うのは、どのチケットを買ってもショー自体は2ループしか見れないことです。じゃあ時間が早いチケットって何なの?というと、ショー会場に入場してもショーが始まっていない状態を楽しめる時間が増えるということです。
大体19:30~ショーは始まるのですが、一番早い入場のチケットはプレショーへは19:10~入場で、ショーが始まるまで約15分ほどショー会場の散策時間が増えます。これは一体何がメリットかというと、追いたい人物のスタート位置が分かっていれば、ループ冒頭から追うことが可能ですし、誰もいない空間をゆっくり楽しむことが出来ます。15分って本当に短くてあっという間なんですけどね。。。
チケットの値段がどの時間も変わらないのはショーの体験時間自体は全員一緒だからみたいですね。
何階建てなの?
6階建て。基本的に自由に歩き回れるのは5階分です。ただ前述通りスリモアよりかなり広いです。有識者たちの叡智がまとまった図面を手に入れたので、見たい方は以下記事の最後をご覧ください。有識者本当にすごい。
まとめ
舞台は歴史ある建造物で、ウォールストリート近くに位置する。昔は本当に銀行だった建物。
1929年の恐慌前夜という時代設定からそれより前にタイムスリップするストーリー構成。
メインのベースになるのはファウスト。基本的に欲望と引き換えに何かを渡す物語。
言語依存はあり。
スリモア同様ループはあるが2ループ。ショー始まるまでの流れは若干異なるので注意。
どんな話なのかとキャラクターも詳細を見たり聞いたりしたので、こちらも併せてまとめました。また体験レポもネタバレOKな方はどうぞ。
また現在オーディションを行っているようで、これからも内容変更やフロー改善がなされると思います。この時はこうだったんだな~という形でご参考になれば幸いです。