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「ある日夫が亡くなる」-住民主体生活支援型地区サロンと多職種連携(3)

【前回までの振り返り】
 佐藤さんは、ある日突然夫を亡くした。
 夫から久しぶりに食べたいと頼まれた「サンドイッチ」を近所のスーパーに買いに行って戻るという10分足らずの時間のうちにである。
 それから、気持ちは沈み、誰にも何も話したくない日々が続き、「一人でいる時間」に恐怖心さえ抱くようになっていた。

 3か月ほど過ぎた頃から、「一人でいる時間」を短くするために、地域の図書館、家の近くにある「住民主体生活支援型地区サロン(以降、地区サロンとする)」に参加するなど1週間のスケジュールを沢山入れるようにして生活を続ける。

 元々血圧が高く病院に通っている佐藤さん。ある朝地区サロンに来ないため、サロン仲間が心配し、地域包括支援センターに連絡し、近くの訪問看護師と訪問すると熱中症になりかけ、倒れていた。

 その後も、血圧コントロールがうまくいかないことによる健康不安が続き、訪問看護利用を薦めるも「元気な私が利用するのは申し訳ない」と断る日々。だが、具合が悪くなると救急車を呼ぶという事態が数回続いたため、説得を重ね、訪問看護を導入。「不安」になって「救急車を呼び」、そして「断る」という悪循環のサイクルがなくなった。

 住民主体生活支援型地区サロンなどに通う、介護予防レベルの利用者も、健康面で心配をされている方は多い。
 訪問看護として、定期的に月に1、2回ほど地区サロン等に行き、サロンが行っている色々なプログラムに入るなど日常的な関わり、お話をするなかで、心配事を聴き、健康相談をする一方、地域包括支援センター等と連携を深め、地域に住む高齢者が安心して暮らせるシステムが今求められている。

「2025年に向けての看護ビジョン」を達成するにあたって

 厚生労働省の介護給付費等実態統計月報によると、介護予防訪問看護の利用は、昨今、多くなってきている。

訪問通所における介護予防訪問看護利用率

 介護予防訪問看護とは、要支援1、要支援2に認定された方を対象に、訪問看護ステーションや病院・診療所から保健師、看護師、准看護師が、生活の場である家庭に出向き、介護予防を目的とした療養上の世話や、診療の補助を行い、要支援者の心身の特性を踏まえ、日常生活全般にわたる支援を図るとともに、生活の質の確保を重視した在宅医療が継続できるように支援することである。
  
 あくまでも「自宅での療養生活を支えるサービス」である。

 だが、地域の地区サロン等に通う、まだ、「要支援1」にも「要支援2」にも認定されない段階から、訪問看護の支援が必要となっていることを、今、問うている。

 つまり、「自宅」ではない「地区サロン」のような場所への訪問が必要となっているということだ。

 保健・医療・福祉の人的資源と財源が限界を迎えている中で、人々の医療・介護ニーズは増大し、多様化・複雑化している。「地域包括ケアシステム」 のもと、従来の病院完結型から、医療・ケアと生活が一体化した地域完結型の体制への転換が求められ、医療機関に入院し受療していた人々の多くが、住み慣れた地域において受療しつつ療養する機会が増えている。

 健康の維持・増進、疾病の予防から始まり、疾病・障がいを抱えながらの療養生活の継続、そして人生を全うするまでを、地域で支えることが求められている今、看護は、対象となる人々を、どのような健康状態であっても、人生を生きる一人の個人として総合的に看る。

 つまり看護は“疾病”をみる「医療」の視点だけではなく、生きていく営みである「生活」の視点をも持って“人”をみる専門職であることに価値がおかれていると言っても過言ではない。

 以上から、日本看護協会では、人々の生涯にわたり、生活と保健・医療・福祉をつなぐ2025年に向けての看護ビジョンとして以下の6項目の支援の視点1)を明らかにしている。

①健やかに生まれ育つことへの支援
②健康に暮らすことへの支援
③緊急・重症な状態から回復することへの支援
④住み慣れた地域に戻ることへの支援
⑤疾病・障がいとともに暮らすことへの支援
⑥穏やかに死を迎えることへの支援

 暮らしの場における看護機能の強化のため、24時間365日ケアを継続する看護の拠点としての訪問看護ステーションは重要である。

 利用者の増加に伴うニーズの増大、複雑化、多様化に的確に対応するために2014(平成26)年度診療報酬改定にて、人員、体制を整備し、24時間対応や重症者、看取りへの対応、他機関・多職種との調整・連携などを行い、地域における看護の拠点としての役割を担うべく創設された機能強化型訪問看護ステーションを設置すること。

 また、さらに、相談受入型サービスを加え、住民の健康不安に対応し、医療へのかかり方、重症化予防などを支援する機能を併せ持つことを進めることも検討されている。

 要介護度が高く、医療ニーズの高い高齢者に対応するため、小規模多機能型居宅介護のサービスに加え、必要に応じて訪問看護を提供できる仕組みをもつ「看護小規模多機能型居宅介護」 の複合型サービス事業所の増設も推進することとしており、そのために、安定的に継続して運営されるよう、組織・体制の整備、効率的な運営、経営力の強化を図ることも謳われている。

 だが、検討すべくは、訪問看護利用料である。

訪問看護療養費①

訪問看護療養費(診療報酬改定内容)

 上記資料は、令和元年8月、令和元年 10 月の消費税率 10%への引き上げに伴う介護報酬改定の内容から訪問看護費、訪問看護療養費についての引用だが、30分未満の予防訪問看護で行われる「健康に暮らすことの支援としてのバイタルサインのチェック等」、「病状・障害の観察と判断、健康管理」、「療養生活、看護・介護方法に関する相談・助言」、「家族の悩みの相談等」の 30分未満:449単位 と、30分以上60分未満:790単位の費用の違い、訪問看護費の30分未満:469単位と、30分以上60分未満:819単位の費用の違いなどに注目してほしい。

 月2回ほど30分未満での訪問看護の希望も実際増えているが、30分未満の相談レベルの訪問看護では、「数をこなす」つまり、訪問件数を増やさなければ、訪問看護事業所としては苦しくなる。また、30分未満の訪問が、事業所から遠ければ遠いほど、訪問に時間がかかり、効率的に利用者様宅を訪問し辛くなるなどの課題がすでに出ている。

居宅サービス等支給限度基準額

 また、居宅サービス等支給限度基準額及び介護予防サービス費等区分支給限度基準額があるので、他のサービスと比しコストを占める訪問看護は、利用者にとってできれば避けたい(できるなら、他のサービスを使いたい)と考えてしまう理由にもなるようだ。
 その点についての検討も今後必要といえよう。
1)公益社団法人 日本看護協会(2015)2025年に向けた看護の挑戦 看護の将来ビジョン ~いのち・暮らし・尊厳を まもり支える看護~

https://www.nurse.or.jp/home/about/vision/pdf/vision-4C.pdf


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