「ある日夫が亡くなる」-住民主体生活支援型地区サロンと多職種連携(1)
「あなたは『長生き』したいですか?」
講義や講演におけるこの質問に、生き生きと真っ直ぐに手を挙げる人は少なくなっているように思う。
令和元年7月30日、厚生労働省が公表した、わが国の平均寿命は
女性が87.32歳、男性が81.25歳で、ともに過去最高を更新した。
「平均」の寿命が女性は87歳、男性81歳なのだ。
ゆえに、「母は70歳台です」というと「まあ!まだまだお若いわね♪」という会話になる。
引用 厚生労働省 平成30年簡易生命表の概況https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life18/index.html
佐藤さんは、ある日、本当に突然夫を亡くした。
その日、夫は妻に話しかけた。
「ねぇ、本当に久しぶりだと思わない?サンドイッチ食べたいな。買ってきてよ」と。
夏の暑さで食欲が落ちている夫が「サンドイッチが食べたい」というのだ。
訳無いことだ。
ベランダの花の手入れをしていた手を止め、少しだけ身支度を整え、
「ちょっと待っててね」と声をかけ、近くのスーパーに買い物に出かけた。
そして、二人で食べるには十分すぎるサンドイッチを買って家に戻ったとき・・・
すでに夫は亡くなっていた。
近いスーパーだったのだ。10分足らずの間の突然の死だった。
気持ちが沈む日々が続いた。
誰にも何も話したくない日々が続いた。
「ちょっと待っててね」と言った時、彼はどんな顔をしていたのか・・・
よく覚えていない。すでに苦しい表情をしていたのか。
もう少しお花の手入れをしてから、サンドイッチを買いに行っていたら、
具合が悪くなったときそばにいられたのではないか。
3か月が過ぎ、親しい友人にだけは会うことができるようになると、
その時のことを泣きながら話す・・ ということが続いていた。
夫を亡くしてから、「一人でいる時間」に恐怖心さえ抱くようになる。
「一人でいる時間」を短くするために、朝食を済ませたら図書館に行く。
図書館で午前中を過ごしたら、お昼を食べに家に戻り、そして、家の近くにある
「住民主体生活支援型地区サロン(以降、地区サロンとする)」に通い、気の合った友人らと過ごし、
夕方買い物をして・・・というように、1週間のスケジュールを沢山入れるようにしていた。
佐藤さんは血圧が高く、病院にも通っており、健康不安もあった。
そのため、毎日お風呂に入るときは、友達に電話をし、
「これからお風呂に入るからね。鍵を開けておくから、1時間以内に『出たよ』という電話がかかってこなかったら見に来てね」
とお願いをしてお風呂に入り、そして、何事もなくお風呂から出ることができると、またあらためて友達に電話をし、お互いの無事を確認する毎日を送っていた。
ある日のことである。
朝、地区サロンに来るはずの佐藤さんと連絡がとれなくなった。
サロン仲間の友達は心配になり、サロンのすぐ近くにある地域包括支援センターに相談した。
地域包括支援センターの職員は、近くの訪問看護師とお家にかけつけると、熱中症になりかけ、倒れていたのだった。
次週に続きます。
素敵なイラストを描いてくれているのは、社会福祉子ども学科1年生鮎川さんです(ありがとう!)
今日、明日のセンター試験のお教室の準備をしてきました。
受験生の皆さん、明日、一緒に頑張りましょう!
今週も皆様、お疲れさまでした。
#地区サロン #多職種連携#平均寿命#地域包括支援センター#訪問看護