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ラジオを聴きながら、500マイル

腹が減ってウロウロしていると、揚げ物のいい匂いがしてきて、少し歩いた先に惣菜屋を見つけた。てんこ盛りに並べられた惣菜たちはどれも茶色かったが、どれも本当に美味しそうで食欲をそそった。

見るからに優しそうな店主のおばちゃんは、優柔不断でいつまでもどれにするか決められない私のことを気にかけながら、次々と揚がる揚げ物たちを丁寧に並べていた。

私が注文を終える頃には少し行列ができていて、仕事帰りのサラリーマンや子供連れのお母さんらが後ろに並んでいた。

この人たちはこれからそれぞれの家に帰って、温かい部屋でテレビでも見ながらこの惣菜を食べるんだろうな、そんなことを考えながらコロッケとメンチカツと蓮根の炒め物、それから脂肪を燃焼しやすくすると謳うお茶を入れたビニール袋をさげて、近くの公園まで歩いた。

ひとつだけベンチが空いていたので、そこに座ってさっき買った惣菜を食べた。

平日の夜の公園には、奇声をあげながら滑り台をすべる小学生や、静かに寄り添う高校生のカップルがいた。私の左隣のベンチに座る女性は中指を立てて自撮りをしていたし、公園内で自転車を乗り回す制服を着た男子のうちの一人は煙草を吸っていた。

ライブが終わって、石畳でできた曲がり道をゆっくりと歩いて駅へ向かう。二人でわざわざお花茶屋で待ち合わせて、石畳のアパートに行ったことを思い出した。道のわきの花壇にはマリーゴールドが咲いていた。

百日紅が聴けて嬉しかったな。

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