📝【樹木たちの知られざる生活】

📖【樹木たちの知られざる生活　
　 　森林管理官が聴いた森の声】
著　ペーター  ヴォールレーベン
訳　長谷川 圭

要約

■友情

木の根と根が直接繋がったり栄養の交換を手伝う
森がなければ天候の変化から
自分を守ることもできない
自分のことばかり考えていたら
多くの木が大木になる前に朽ちていく

■木の言葉

木も自分を表現する手段を持っている
芳香物質、香りだ
アカシアはキリンがやってくると
葉の中に有毒物質を集め食べられないようにし
仲間に知らせるエチレン警報ガスを発散する

■社会福祉

木々は互いに補い合っている
ブナは密集している方が生産性が高い事が分かった
人間が手助けのつもりで邪魔者を取り除くと
残された木は孤独になり長生きはできない

■愛の営み

春に愛が実を結ぶかどうかは種属によって違う
樹木はどうやってほかの木の花粉を区別しているか
はっきりと分かっていない
花粉の違いを感じ取る、としか言いようがない
人間と同じで樹木の愛も謎に包まれている

■木の宝くじ

一本のブナは5年ごとに少なくとも3万の実を落とす
寿命を400年とした場合、
60回ほど受精し180万個の実をつける計算だ
そのうち成熟した木に育つのはたった一本
宝くじの一等を当てたようなものといえる

■ゆっくりゆったり

木はゆっくりと成長する
ゆっくりと成長するおかげで
内部の細胞が細かく空気を殆ど含まない
柔軟性が高くなり嵐が来ても折れにくい
傷がついても皮がすぐに塞いで腐らない

■木の作法

森の樹木には守るべきマナーがある
原生林のメンバーとして身だしなみを整え、
きちんと行動しなければならない
素直に成長した広葉樹は幹がまっすぐで、
繊維も均等に走っている

■木の学校

ブナの成木は毎日500リットルを超える水が
枝や葉を駆け巡る
夏は水分の補充が追いつかない
だから森は冬のうちに水を蓄えておく
自然は厳しい先生だ

■力を合わせて

樹木は助け合いが大好きで社会をとても大切にする
樹木は菌類と同盟を結ぶ
菌糸は周りの土の中にも広がっていき、
木の根の範囲を超えほかの木や菌糸とも結びつく
こうして、ネットワークが形成される

■謎めいた水輸送

木の内側の水圧が高くなるのは春芽が出る直前で、
聴診器を使えば私たちにも聞こえるほどの勢いで
水が幹に流れ込んでいる
実際、サトウカエデに聴診器をあてて
メープルシロップの収穫時期を決めている

■年をとるのは恥ずかしい？

樹皮は皮膚と同じで、
内部器官を外界の攻撃から保護している
樹皮の一番外側の層は人間のしわみたいなもの
粗皮に現れる模様は成長によって生じたひび割れで
歳を重ねるにつれ深くなる

■ナラはひ弱？

つらそうにしているナラに出会うことが多い
こんなに弱々しいのに、
ナラの木は強さや忍耐力のシンボルとされている
森の外では類まれな粘り強さをみせるのだ
ナラは農場や牧草地では500歳を超えることもある

■スペシャリスト

樹木はさまざまな場所で育つことができる
むしろ、育たなければならない
イチイは、とても謙虚で我慢強い植物だ
ブナにはかなわないとよく理解している
暗い森のなかでスペシャリストになる道を選んだ

■木なの？木じゃないの？

切り倒された木は死んだとみなされるか？
すべての基本は根にある
根に脳があると考えられるからだ
学習して経験を記憶できるなら、
記憶を貯めておく場所があるはずだ

■闇の世界

森林のバイオマス全体を見ると、
半分は地面の下に含まれている
樹木にとっては、
地中で生活する小さな彼らは重要な存在だ
多様な生物種を含む原生林の土壌が源となる

■二酸化炭素の掃除機

森は巨大な掃除機のようなもので、
二酸化炭素を吸い込み内部にため込む
若い木よりも老木のほうが生産的である
私たち人間が気候の変動に対抗するとき、
頼りになるのは年とった木だと示してる

■木製のエアコン

木質の総量が多ければ土壌の腐植土の層が厚くなり水分が蓄えられ、その水分が蒸発することで
温度が下がり温度が下がることで蒸発量が減る
健全な森林は夏になると汗をかき体温を調節する

■ポンプとしての森

森の土壌は、巨大な貯蔵庫となって雨水を蓄える
樹木が根を張る地層が水で満たされたら、
何年もかけてゆっくりと深く沈んでいく
貯め込まれた水は一定の水量で湧き出てくる

■君のものは僕のもの

キツツキは幹や枝に小さな穴を開け液を舐める
アブラムシは葉脈にぶら下がり樹液を頂戴する
蝶や蛾の幼虫は葉そのものに狙いを定めている
大型の草食動物はもっと手荒だ
シカからはやすりとしても利用される

■住宅供給サービス

大きな木は住宅として大人気だ
木が嵐などで倒れた場合にも役に立ち続ける
倒木にたくさんの生き物がやってきて棲家とする
こうして森に棲む種が多様になる
多様性が高まれば生態系はより安定する

■さまざまな生き物の母艦

すべての動植物種の五分の一は朽木に依存している
朽木に群がる生き物が森林を脅かすのでは？と、
森の外へ運び出す森林所有者もいるが
貴重な生活空間を壊すだけだ

■冬眠

体内の水が凍ってしまうと破裂してしまう為
多くの樹種では7月頃から活動を弱める
木が一本だと強風で倒れてしまうだろうが
森ではそうはならない
枝同士がぶつかり揺れにブレーキがかかる
個体として自立しながら社会としても機能している

■時間感覚

冬が寒ければ寒いほど、
新芽が生じる時期が早くなる
暖かい年の秋に高い気温が続くと、
樹木といえども混乱する

■性格の問題

どの木にとっても環境は同じで
差があるとも思えない
それなのにどの木も自分なりの成長を遂げている
その理由は“個性”にあるとしか考えられない

■病気の木

見た目は健康そうな数本のマツが、
30年以上年輪を作っていないことが分かった
形成層が死んでいるなら
樹皮も死んでいることになる
周りの木々が仲間を助けていたに違いない

■光

森林にとって日光はとても大切だ
しかし、私たちは水分や養分のことばかり考える
光は何もしなくても太陽が届けてくれるので
ほとんど意識しないのだ
光が何よりも大切だということを見落としてしまう

■ストリートチルドレン

ほとんどの公園では
土壌が樹木の生長にまったく適していない
公園や並木道の木は見た目をキレイにするために
手入れ(実際には暴力)が行われている
サポートしてくれる協力者も街にはいない

■燃え尽き症候群

急速な成長は犠牲が伴う
疲労が始まり樹冠の芽が減ってゆく
先駆種のあとからやってきた樹木が成長する
そこからの成長競争で先駆種に勝ち目はない
先駆種は完全に力尽きまるで燃え尽き症候群だ

■北へ！

ポプラやヤナギの種子は何キロも飛ぶことができる
針葉樹の種子は少し重い
だから落下スピードを遅くするために
回転体で種子を包んでいる
重い種子は動物の力を借りる

■進化

気候が暖かくて乾燥しているならそれに適した遺伝子を
活性化させなければならない
ブナは同じ森にあるものでも、
遺伝情報には大きな差がある
それぞれの木がそれぞれの特徴を持っている

■災害

雪の塊がのしかかれば、
生長期を待つ彼らは折れてしまうか
直立できないほど曲がってしまう
雷の威力が特に強いときには、
火災というさらなる災害の危険が高まる

■新参者

危険な外来種として話題となった典型例は
ジャイアントホグウィードだろう
19世紀に中央ヨーロッパに輸入され
いつしか植物園から逃げ出し草原へ広まった
樹液が肌につき紫外線が当たると
火傷のような症状になるため危険な植物だ

■森の空気は健康？

森の空気を吸うことは健康に良いと誰もが考える
樹木がフィルターの役割を果たしてくれるので
森の空気は澄んでいる
針葉樹は空気中の菌量を大きく減らすので
アレルギーに苦しむ人に嬉しいことだろう

■森はどうして緑色？

葉緑素は光に含まれる緑の色範囲を利用できない
そのため、緑色光をそのまま反射してしまう
この光合成の残り物が私達の目に入るため
ほとんど植物が緑色に見える
緑色は樹木が使わずに捨てた光のゴミだ

■はずれた鎖

環境の劇的な変化を前にして、
純粋な自然を求める声は増え続けている
森林こそが人々の心を癒やす自然とみなされている
”何もしないこと“　が保護活動だ

■有機林業？

暖炉の中で弾けるのはブナやナラの死体だ
あなたが手に取ったこの本も、
切り倒された(殺された)体を削った紙でできている
私たち自身が自然の一部であり
他の命を利用しないと命を維持できない

森には私たちが守るべき謎と奇跡がある

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橋渡しになれれば幸いです