大地の再生 #2風の草刈り
矢野智徳さん主催の「大地の再生」講座。
今回から実際の作業内容について記していく。
▼前回の記事
4月2日午前、作業は河原の草刈りから始まった。
鶴川の桜の花咲く河原、この日は花びらがはらはらと散り、川を流れていくようすがとてもきれいだった。
ここは数年前は薮だったと聞いたが、矢野さんらが手を入れたおかげで今は草原になっている。年に数回の手入れを続けているらしい。
大地の再生では、「風の草刈り」と呼ばれる草刈りを行なっている。
「風の草刈り」とは、風が行なう草刈りを手本とした草刈りである。強風が吹いて草をなぎ払った後の状態をつくるイメージだ。
そのため、草に対して水平方向に風の力がかかったときに、草が折れる場所に鎌をいれる。
すると、再生はゆっくりに、また背丈は低く育つようになるという。さらに、細根が発達して地中の空気の通りがよくなり、土はやわらかくなる。
逆に、多くの人がやるように地際から刈ってしまうと、反発するように根が強く伸び、背丈もかえって大きく育ってくる。
また、すべて刈ってしまうと、風が強く吹き抜けて、大地に空気が入っていかず、土はかたくなる。
風の草刈りでは、自然にある造形を利用しつつ、垂直にも水平にも流線型に植物を残すことで、風が吹き抜けすぎず、停滞もしない、気持ちよく風が通り抜けるような空間をつくる。
これにより空気の循環がスムーズに行なわれるようになる。
使う道具はノコギリガマ、あるいはナイロンコードを取り付けた刈り払い機。今回私はノコギリガマを使用した。
基本的に、片手で草を払うように、下から上に斜めにさっさっと刃を振って刈っていく。片手で刈り取れないものは、もう片方の手を添えてカマを引く。
草の先を少し払うだけで次の成長がぐっと抑えられ、だんだんと草はコンパクトになってくるとのこと。
今回はだいたい腰か膝くらいの高さに草を刈っていった。こんもりとした場所は、まったく同じ高さに刈り揃えるのではなく、風がなでるラインに沿って、流線形に、丸みを帯びた形に刈る。
また、草が密になって生えている場所は、カマを縦に振るってほどよく中をすいてやり、風通しをよくする。
この場所には、前回までにつくられていた水脈がある。それは幅15cm程度の細く長い溝で、河原全体に張り巡らされている。
水脈のつくり方は詳しく教わっていないが、地面の少し低いラインや、植物の密度の薄いラインにつくるようだ。
この溝は、水が通る(浸透する)ためだけではなく、空気が通るための溝でもある。この溝のラインは風が抜ける道であり、空気の循環の中心となる。
だから、この空気と水の「脈」たる溝周辺にはとくに風が通るよう、意識して草を刈っていく。
このようにして草を刈り、地表に適度に風が通るようになると、地中の空気も引っ張られて動きがよくなるという。
すると地上と地中で空気が循環し、植物は新鮮な空気を得て、息ができるようになる。
この場所は、そのようにして緑を取り戻した。
▼次回、コメの種まき。