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お涙頂戴にしてやろうかコラァの運動会

息子は生まれつき運動機能に問題がある。

おそらくその原因は、妊娠7ヶ月の時に超低体重の600g弱で生まれたからだ。

当時あらゆる困難を経たのち、生後数ヶ月で理学療法士さんと作業療法士さんにお世話になり始め、小学2年生までは定期的に病院のリハビリに通っていた。

首がすわるのも寝返りもつかまり立ちも全部遅かったし、歩いたり走ったりは3才から5才にかけて、のんびりなんとかできるようになった。

今もなお、手先の動きや全身運動がかなりぎこちない。


そんな息子の小学校最後の運動会があった。

運動会では毎年、学校側の配慮で走る距離を他の子よりも短く設定されている。

それでも競走では最下位になってしまうし、ダンスもみんなと同じ動きができなかったり、たくさん転んで膝が絆創膏だらけになったりする。

練習期間は息子本人もナーバスになるし、私も日々気が気じゃなくて、我が家にとっては、なかなか精神力のいる行事である。

それでも息子は、運動会について「出たくない」「休みたい」と言ったことは一度もない。

1学期の目標は毎年「運動会がんばる」だし、運動会当日にはやる気満々の笑顔で登校して、本番では本人なりの一生懸命な姿を見せてくれる。

先生方の配慮と理解してくれているクラスメイトの優しさのおかげだととても感謝している。

そして毎年、息子の強さに感動して、彼を尊敬する。


ただ、そんな気持ちを台無しにされることが過去に何度かあり、残念ながら今年もあった。

保護者観覧席の中に、息子を笑い者にする人がいるのだ。

「ちょwwwあの子どした?」
「めっちゃ抜かれてるwww」
「あぁ、あれは足がわりぃんじゃね?まぁ参加することに意義がある、みたいな?www」

これ、大人が人前で言うことか?

お茶の間でテレビ観て家族で好き勝手言ってるみたいなノリやめてよ。

その子の親がお前の隣でビデオ回してんだよ。

息子が小学校に入る前までは、運動会に毎年参加できる未来なんて想像してなかったし、そんなの期待しちゃいけないと思ってきた。

私たち夫婦は、奇跡を見ているような感動的な気持ちとどうか息子にとって辛い思い出にならないでと切に願う気持ちの両方を抱えて、頑張る息子を見守っている。

宝物になるはずだった動画には、微かにだけどその人たちの声が入ってしまった。

いっそのこと、うちの息子が走る前に生い立ちショートムービーを流して、走るときにはドラマティックに小田和正流して、会場中が応援せずにはいられない、うっかり酷いことを言った奴は罪悪感に苛まれるような、お涙頂戴演出してやろうかコラァ!と、つい考えてしまう。


今年も息子は、1位で受け取ったリレーのバトンを最下位にして次の走者に渡していたし、組体操では身体を先生に支えてもらっていたけど、帰宅した息子は充実した笑顔でキラキラしていた。

息子の満足そうな顔を見て、私の苛立ちとモヤモヤした悲しい気持ちも少し晴れた。

どうか、そのまま素直に、強く育っておくれ。

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