乳がん検診で引っかかった話
はじめに結論から申し上げると、精密検査の結果、悪性の所見は認められなかった。
書きたいときに書きたいことを書く、と私のnoteの趣きを変えての一発目がこんな話でアレなのだが、ここのところ、私の脳みその八割方を占めていた、このことを綴りたい。
きっかけは、年1回の乳がん検診
職場で義務付けられている年1回の健康診断を、外部の検診専門クリニックで人間ドックとして受けていた。
その際には、必ずオプションの婦人科検診(乳房・子宮)も付けていた。
乳がんは、日本では今や女性の11人に1人が罹患すると言われるほどだし、比較的なりやすいがんであること、また、私自身乳がんのリスク有りに分類される方だとの自認があることから、乳がんに対する恐怖が常にあり、20代後半ぐらいから、毎年、乳がん検診を受けるようにしていた。
▼ 乳がんのリスク要因 ▼
乳がん検診の時は、マンモグラフィーと超音波(いわゆるエコー)のどちらか一方だけではなく、必ず両方セット。
というのも、特に若いアジア人女性は、乳房内の組織が密なので、マンモグラフィーだけでは見づらい場合もある。
いわゆる、デンスブレストと言われるもの。
超音波検査だけでいいじゃないかって感じもするが、超音波検査では見つけられないものだってある。
どちらの検査にも、見え方に得手不得手のようなものがある。
ちなみに、乳がん検診における、検査の併用についての重要性については、ドラマ「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」の第3話(▼)を見てもらうと、分かりやすいと思う。
私の知る限り、テレビドラマでデンスブレストについて触れたのはこれが初めてなのではないだろうか。
幸いなことに、昔から、乳がん検診に関する知識を得やすい環境にいたこともあって、このドラマに出てくる葉山さん(内山理名)ように、私も乳がんに関しては、比較的「意識高い系」として、毎年、真面目に検査を受けてきたつもりだった。
今年もそうして人間ドックを受けて、いつもなら2週間程度で結果が来るところが、なかなか届かなかった。
何か引っかかったかな?と気にしながら更に数日が経った頃、ようやくクリニックからの封筒が届いた。
封筒の表には「CD-R在中」と書かれて。
CD-Rが入っているということは、つまり、そのCD-Rの中に画像診断の結果が入っていることを意味する。
これは「要精検」の項目が出たってことだ。
胸部?腹部?乳房?と人間ドックでやった画像診断系の検査項目が頭の中を高速回転で巡りながら、封筒をべりべり破いて中身を見ると、乳房での異常だとのこと。
紹介状も入っている。
乳房の検査結果を見てみると、超音波ではそれなりの所見が書かれてはいたが、それ自体は異常ではない。
一方、マンモグラフィーでは腫瘍(カテゴリー3)、石灰化(カテゴリー1)とある。
このカテゴリーというのは、がんのクラスとは別のもので、カテゴリー3は、「良性の可能性が高いが、悪性も否定できない所見」というもの。
ていうか、私、自分の胸にそんなのできてるって気づいていなかった。
こんな結果が出て、自分の胸をよくよく触ってみたら、何かそれっぽいのが確かにある。
昔、整形外科の先生に、指の関節のところが変で見てもらったときに、先生が「人間の体ってね、中に色んなものができるんですよ。」と言っていたのをふと思い出した。
先生の言うとおりだよ、私の体にも何かできているよ。
一応は、時々、胸のセルフチェックもしていたつもりで、その時も何かあるのはわかっていたような気もするが、この何かが、いわゆる「しこり」というのだと思っていなかった。
▼ マンモグラフィー検査結果のカテゴリー ▼
▼ カテゴリー別 がんの確率▼
カテゴリー3で、精密検査をした場合、悪性との結果が出るのは、そのうちの5~10%だそう。
ここからが根っからのネガティブ思考のワタクシ、その5~10%に自分が該当するんじゃないかと、前のめりの絶望感でいっぱい。
でも、同時にこうも思う、「私、今は死ねない。」と。
先述の通り、仮に乳がんの場合であっても、早期に対処すれば命を落とすことまでにはならないことが多いが、見つかった時点でもはや早期じゃなかったり、中には進行性の場合もあったりで、余命に限りが見えてしまうこともある。
現に、乳がんで亡くなっている著名人がいるじゃない?
私も死んじゃうかもしれないね。
でもね、家のこと、仕事のこと、今の私にはやらなければならないことがたくさんある。
これらを残して、私、死ねない。
自分ではあまり「生」に執着するタイプでもないと思っていたが、こういう局面に立たされると、本音が出るのだろう。
案外、私、生きたいんだな。
早く確かめて、必要ならば適切な医療を受けねばならない。
病院選び
次にやるべきことは、精密検査を受ける病院選び。
病院を選ぶにあたり、私が優先事項として挙げたのは以下のこと。
・乳腺専門医がいること(これは言うまでもなく。)
・複数の検査方法が可能であること(実際に自分にその検査が必要かどうかは別として、医療機関の設備として検査できる環境が整えられていること。侵襲度の低い検査でわかることがあるならば、それに越したことはないため。例えば、乳房MRIとか。)
・手術や、放射線治療・抗がん剤治療・ホルモン療法なども行えること(また別の病院に紹介されて行くのはちょっと面倒。)
・自宅から通いやすいこと(距離的なこともあるが、病院によっては乳腺外科は曜日限定の場合もあるので、時間的なことでも要配慮。仕事と両立させやすそうな観点から。)
人によっては、女医さんがいいとか、大学病院がいいとか、色々あるかもしれないが、私の場合はこんな感じ。
こうなると、ある程度の規模以上の病院に絞られる。
ある病院に目星をつけて、まずは診察を受けに行った。
初めて行った、乳腺外科
私が行った病院の乳腺外科は結構混んでいて、予約なしで行くとかなり待たされる。
というのも、患者さんが呼ばれて、診察室の中に一旦入ったら、どの人も20分から30分位は出てこない。
つまり、それぐらい一人に対して時間を割いているということ。
上で紹介した「ラジエーションハウス」第3話でも、一般的な診察時間は約3分とか言うし、他の乳腺外科の診察がどんなものかもしれないけど、この先生はそうではないということだ。
私の番が訪れ、診察室に入ると、まずは先生が待たせたことを詫びた。
確かに待たされるのは苦痛だが、ここまでで先生、好印象!
紹介状に書かれたことを確認し、検診クリニックに持たされたマンモや超音波の画像などを見て、その画像の解説を貰う。
マンモの画像を見ると、特定されても困るので詳細はここでは割愛する(以下同じ)が、素人目でもわかるぐらいに明らかに、何かがあるように写っている。
がんっぽいのは普通はどういう風に見えるかとか、それに比べて私のはどうだとか細かく説明を貰う。
これまでの既往歴や乳がんリスク要因に関連したこと、コロナのワクチンの接種状況についてもお話しし、この写ってる物の中身がどんなか、詳しくは超音波をもう1回やってみることに。
検診時の超音波検査と、次にやる超音波検査での位置づけも説明して貰って、検査の予約を入れてこの日は終わり。
とりあえず、先生の話を聞けて一安心。
最近は、画像診断の進歩もあるからか、むやみやたらに、胸を見たり触ったりしないらしい。
昨今の医療の進歩に、ちょっと感心して帰る。
悪性を否定できないから、マンモトーム生検へ
後日、超音波検査を受け、その検査で出たデータについて細かく説明を受けると、良性的な感じもするが、一部、悪性、つまりがんを否定できないところがあるとのこと。
「がんだけにガーン!」なんて、どうしようもない駄洒落が脳裏をよぎったが、口が裂けてもそんなことを先生には言えない。
「生検した方がいいね。」
生検てアレよ、超音波のガイド下で針をぶっ刺して細胞取るやつ。
どうするか尋ねられ、色々と選択肢を説明されるが、迷いが生じる。
でーもー、私、もうこれ以上、自分ががんかもしれないって不安なままでいたくない。
「今日、検査します。」
スパっと言い切ると、今度は、細い針と太い針のどっちにするかと、それぞれの良し悪しを説明される。
ここでも一瞬迷うが、傷口なんて小さいし、傷跡できても、もうこの年だし気にしないし、痛みは麻酔でわからないっていうし、一気に確定診断を受けたい一心で、太い針、いわゆるマンモトーム生検を選択する。
処置室に移動すると、ちゃちゃっと看護師さんが色々準備をしてくれて、ベッドに横になり、いざ麻酔へ。
ちくっと細い針で刺され、随分奥の方まで入れられたような気もするが、あんまりわからない。
その後、触られても何にも感じないことが確認されてから、胸の横の方をメスで切られたらしい。
そこに太い針を突っ込まれたようなのだが、これもまたよくわからない。
所々で押されている圧を感じたり、ゴゴゴゴって機械の音が聞こえたりもするのだが、痛くもなんともない。
細胞を採取するのは数分で終わり、傷口は縫うこともなく、圧迫止血。
止血されたら傷口の上に透明のテープが貼られ、さらにその上にガーゼを置かれて、がちがちにサージカルテープで押さえられた。
この日は傷口を濡らさないようにと言われたけど、翌日以降はこの透明テープを張ったままお風呂はOKとのこと。
化膿止めと痛み止めと、念の為の胃薬を貰って、この日は終了。
麻酔が切れた後も、幸い、さほど痛みはなく、痛み止めを飲む必要もなかった。
不安でたまらない、一週間
マンモトーム生検の結果が出るのが一週間後。
この一週間が、もう生きた心地がしないというか、不安で不安でたまらなかった。
悪性と言われるか、良性と言われるか。
考えても答えは自分ではわからないのだから、割り切ればいいのだけど、そうともいかない。
自分のマンモグラフィーや超音波の画像やその所見を見て、医師の執筆する文献調べて良性かな、悪性かなと素人ながらに思ったり、もし悪性だった場合に備えてのイメトレというか、シミュレーションを脳内で何度もしたりした。
悪性だったら手術は必須だろう。
どれだけを切り取ることになるだろう。
全摘の可能性もあるかな。
手術に向けての検査もするのだろうな。
職場には何て言おう。
他の人に乳がんだと伝えた方が仕事はうまく回るかな。
上司には仕事に穴をあけてしまうことになって申し訳ない。
手術には何日、入院が必要だろうか。
入院している間の家のことは誰かに頼んだ方がよいか。
手術するなら時期はいつ頃だろうか。
今はコロナ禍だから付き添いやお見舞いは受け付けていないかもな。
出来れば個室がいいな。
入院中にはさすがに仕事はできないかな。
暇なときに読めるようにこの本持っていきたいな。
職場の特別疾病休暇使うにはどういう手続きが必要か。
保険はどうやったら請求できるかな。
薬物療法はどうなるかな。
髪抜けるかな。
仕事と両立ができるだろうか。
などなどなど、調べ倒して考え倒した。
最悪のケースも想定してイメトレ積んで、わりと冷静にしていたつもりだったけど、さすがに検査結果を聞きに行く前夜、なかなか寝付けなかったし、寝付いても途中で目が覚めたし、予定よりも早く目が覚めた。
診察室前で自分が呼ばれるまでの間、すごい緊張してしまい、えずく寸前まで行った。
私ってば、デリケートにできてたのねって改めて感じた。
一言でいえば、心臓に悪い。
たぶん、これだけでかなりのストレスで、きっと白髪も増えた気がする。
結果、悪性のものは見られないということで、少しはほっとしたが、良性であっても経過観察は要するとのことだった。
自分がこれまで認識していた以上に、乳がんのリスクが人よりも高いことも説明され、これから先も要注意で生きていかねばならない。
悪性じゃないから即座にイエーイ!って感じでもない。
今は悪性ではないけど、半年後にはどうなっているかは、わからない。
10月は、乳がん啓発のためのピンクリボン月間
こんなこともあって、今年の10月は、いつもとはちょっと違う気持ちで受け止めている。
乳がんは、決して他人事ではない。
女性なら誰にでも起こりうる、切実なこと。
これを読んでいる女性の方は、なるべく機会を作って検診を受けに行ってほしいと思うし、男性の方はご家族の女性の方に検診を勧めてほしいと思う。
本当に、検査って大切。
先述の通り、私の場合、毎年定期的に検査しているから、前回との比較もできたし、それにマンモグラフィーと超音波の併用だったが故に功を奏したところもあって、これが「今年は乳がん検診はパスしとこう。」とか、「超音波だけでいいか。」なんてなっていたら、きっと私は今回のことに気づくことができなかったと思う。
気づかないまま過ごしていたとしたら、経過観察も何もなく、良性から悪性に変化して、来年あたりには手遅れの状態で見つかることも考えられる。
そう思うと、恐ろしい。
実際のところ、結果として悪性ではなかったわけだし、無駄に医療費が発生するとか、患者に要らぬ心理的負担をかけるとかいうご意見もあるだろうが、私自身は自分の体に起こった変化をこのタイミングで知ることができて良かった。
昨今、このコロナ禍での感染に対する不安から、受診控えが進んでいるとも聞く。
その不安はよくわかるが、健康に関することだけは優先させてほしいと思う。
乳がん検診を毎年受けていても、乳がんになるときはなる。
検診を受けたからと言って、乳がんにならないわけではない。
私が毎年、乳がん検診を受けていたのは、自分の変化を早く見つけてもらいたかったからに他ならない。
早期での気づきが、早期の治療に繋がり、それが命を救うことにも繋がると信じていたからで、今回はその通りに、早く見つけてもらえて、自分の体の中にできた物が何だったのか知ることができて、とりあえずはよかったと思っている。
画像診断の力、医療を信じよう。
最後に。
この記事が、私と同じように胸にしこりがあった方も自覚症状のない方も、乳がん検査のために病院へ向かおうとする、その後押しになることを願う。