記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

三浦春馬 作品レビュー ドラマ「ダイイング・アイ」

東野圭吾のサスペンス小説のドラマ化、WOWOWで2019年3月~4月に放送された全6回。
WOWOWでの放送なので、どれだけの人がこの作品を観たかはわからない。
初めてこの作品に触れる方は、あらすじは番組のオフィシャルサイト内の「イントロダクション」と、春馬君を始めキャストが語る見どころ動画を見ていただくと良いかもしれない。

あとは原作を読んでみるのもアリだと思われる。
私は「ダイイング・アイ」は読んだことはなかったのだけど、他の東野圭吾作品は幾つか読んだことはあって、東野圭吾作品の世界に共通してある薄暗~い気味の悪さを引きずりながら、エンディングに向って謎が解き明かされていく疾走感みたいなイメージは、この作品でも壊されずに上手く表現されているのだろうと思った。
これも「コンフィデンスマンJP」みたいなものと同じで、謎が解けてからもう一度初めから見直したくなる、そういう作品。
あの時のあの表情は、そういう理由からだったのねと2度目なら合点がいくことがいっぱい。
例のごとく、春馬君以外のことは書いていない記事なので、そこのところどうぞ宜しく。

バーテンダーとしての所作の美しさ

このストーリーの中で、春馬君は主人公のバーテンダー・雨村慎介役を演じているのだが、シェイカーを振る姿勢、腕の動き、シェイカーからグラスに注ぐ所作がとにかく綺麗で見とれてしまう。
プロに習って、かなりの練習したのだろうと思う。
それから、至る所で言われる春馬くんの手の美しさだけど、この作品でも同様で、差し出すグラスを持つ白く長い指がセクシー。
手だけでセクシーってどういうことかとも思うが、その手の見た目の美しさだけのことを指すのではなく、彼のことだから、手にも細心の注意を払っているから、つまりは手も演技しているから、きれいに見えるのだろう。
さらに言うと、手だけでなく、シャワーを浴びるシーンとか、足に鎖を繋がれる(観てない人にはなんのこっちゃ)シーンで、春馬くんの素足がアップで映るのだけど、足の指も長くてきれいだったりする。
もうこの人、頭の天辺から足の爪先まで、もっと言ったら心の中もそうだけど、全部きれいなのね、はぁ~、と良い方の意味での感嘆のため息が出る。

テーマはやや難解、「贖罪と保身」

雨村は、雰囲気的には、「TWO WEEKS」の父性愛が芽生える前、ストーリー序盤の結城大地に似ているかもしれない。
人には言えない過去を抱えた、見た目の良い、ちょっと悪い男、みたいな。
ただ、結城は、最後は父性愛が溢れちゃって良い人感が滲み出てしまうのだが、雨村はストーリーの展開からしてそこまでの良い人要素は出てこない。
それよりも、このストーリーは春馬君がビデオの中で語るように「贖罪」とか「保身」とか、そういう主人公の気持ちの動きを見せる方にフォーカスされていて、演じる側としては、「父性愛」とかわかりやすいものでは決してない、それを表現するのは簡単ではない、難しいテーマだったのではないかと思う。

(ここからストーリーのネタバレが少し含まれる。)

心の機微を見事に表現する演技

全6回の中で、私が好きな春馬君のシーンが2つある。
どちらも、江島(生瀬勝久さん)と二人きりのシーンだ。
一つは、交通事故を起こしたときに、車を運転していた江島が、自分の身代わりになるよう雨村に頼むシーン。
雨村は、ここで自身の人生を大きく狂わす一つの決断をするのだが、そこには台詞があるわけではなく、春馬君のナレーションが付くだけだ。
春馬君は、息遣いと視線の持って行き方だけで、雨村の心の内の困惑、狡さ、それらの考えの間で揺れる葛藤、そして決意に至るまでを一瞬にして表現していく。
もう一つは、過去の事故の全貌を思い出した雨村が、また新たな取引を江島とするシーン。
特に、ここで雨村は、恋人だった成美(松本まりかさん)の死を二千万円というお金に換える。
成美の仇とも取れなくもないが、お金になれば、それは雨村のものになる。
ここも、恨み、憎しみ、怒り、悲しみ、欲、恐れと、心の内側にある幾つかの感情を一気にスイングしていく様を表情のみで見せていく。
う〜ん、巧い!
唸ってしまうほど巧い。

春馬君、貴方のこういう人の心の機微を繊細に表す演技、大好きだよ。
同年代の俳優で、こんな演技ができる人は他に思い浮かばない。

濡れ場がヤバい

この作品のもう一つの見どころは、春馬君のベッドシーンであろう。
これまでも色んなドラマでベッドシーンはあったけれども、少なくとも私が観たものは、大抵は、その…、あの…、営みとここでは表現しておこうか、その営みの始まりかけとか終わった後とかの描写だけだった。
例えば、「ラスト♡シンデレラ」の時なんて、観てて「はぁっ💕。」ってなる感じだったではないか。
しかし、この作品のはそういう感じではなく、「おっ!......っおぅ。」とこっちが驚くような、ぶっちゃけ、その営みの最中の描写が含まれているのだ。
あまり露骨に書いて18禁の記事になると面倒なので控えるが、引きの画(え)で撮っているので、全身の動きが映るわけだ。
さすがWOWOW、土曜夜10時の放送、普通の民放地上波と違ってかなり攻めている。
相手は、成美と、瑠璃子(高橋メアリージュンさん)の二人それぞれ。
どちらかと言えば、私にとっては、成美とのシーンの方が衝撃的か。
布団は掛かってるけども、とにかく動きがリアル。
瑠璃子とのシーンもそれはそれで凄いのだが、その描写は書きづらいので、代わりに、そのシーンを見始めてからの、私の頭の中の変遷を以下の通り記す。
「おぉっ!!」→「春馬君、そういう表情?」→「普段もそうなのかな。」→「…、春馬君、そこはもうちょっとこうした方が…。」→「だけど、それはテレビドラマとしてできる性描写の限界か。」→「ていうか、どうして私はここだけ演出の文句を言うのか。散々、演技だって言ってんのに、ここだけ素が出るわけないだろう。これも演出、演技だ!落ち着け、自分!」
素と演技を混同して考えてしまう位に、もう動揺。
営み自体はどうでもよいのだが、それを春馬君がするとなると心穏やかではいられない。
下品ではないし、長くもないのだが、まあリアルな感じに撮れてるわけだ。
こういうシーンのある役のオファーが来るほど、春馬君は大人の俳優になったということで喜ぶべきだし、よく受けたとも思う。
案外、本人はこれも演技だからと平気なのかもしれない。
役の幅がまた広がったのは確かだと思う。
観てる方はドキドキしてしまうけれども。
いや、ドキドキさせてくれてありがとう。

これまでに観たことのない春馬君の一面を見れたのは、今となっては貴重であったと思うので、この作品に春馬君が出てくれてよかった。
暫くは、あの残像だけで生きていけると思う。

いいなと思ったら応援しよう!

垣 公華子
もしサポートをいただけるのでしたら、自身の心を潤すような音楽や映画などなど、エンターテイメントのコンテンツ購入に充てさせていただこうと思います。