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【作品No.4】 国本泰英 × 小野田阿紗

作品No.4
国本泰英 × 小野田阿紗


波と表面

インク
展示場所:丸谷家


山々から放たれた「蒸気」が洞川のまちをゆっくりと包み込んでいく。きっと長い間繰り返されてきたこの現象を、苔生した倒木の森に比喩したのが、2021年「MIND TRAIL」で制作した作品「奥の稜線」だ。 しかし、谷川俊太郎さんの詩は見透かすように「まだ早い。焦らなくていい。」とささやきかけてくる。そう受け取った私は、もう一度「蒸気」の揺れるあの眺めを思い出しながら“抱きしめる”方法を探し始めた。

今年、初めて洞川の山に登った。道中、木立の間から刺す朝の光に、木、苔、石、土など、辺りを囲む住人たちは「蒸気」で応じる。その光景を傍らに歩を進めるうち、今度は自分からも同じものが立ち上がってきた。どうやら私たち自身も“あの眺め”を形作る一員だったらしい。

創作パートナーの小野田さんは対話の中で、空気は水分を「波」のように震わせながら肌に触れてくる。そうやってわたしは自分が立っている場所を認識するのだと教えてくれた。私にとってその言葉は、“あの眺め”をより理解するための手引きのように思えた。
よし、その方法で“抱きしめ”てみよう。そう思って描いた「波」は、洞川の山々を示す等高線である。(国本泰英)



協力:丸谷家、増谷英樹、中谷信也、松尾淳平、仲子竣祐、金子未弥


国本泰英 × 小野田阿紗

撮影:上野千蔵

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