【作品No.5, 10, 12, 13】 上野千蔵 × 京谷友明
作品No.5, 10, 12, 13
上野千蔵 × 京谷友明
ひとみる山
インクジェットプリント、和紙
展示場所:吉野勝造商店、紀伊國屋旅館、西浦清六本舗、上辻
一から始めない 好きから始める
僕はこの言葉から「分けるのではなく、心奪われるものと重なり合う」というメッセージを受けとりました。人は無数の命と記憶が幾重にも重るモンタージュだと思います。過去と今、見るものと見られるもの、視えるものと視えないもの。 そんなあわいに一つの線を引くのではなく、互いに重なり合いたい。だから山伏たちは無言で山を歩き続けるのではないだろうか。
山に詳しい、とも兄こと京谷友明さんから教えていただいた修験道体験を通し、大峰山を一人歩きました。その道中、何かに心を奪われる時、僕が山をみてるのか、山が僕をみてるのか曖昧になる時があります。そんな景色を写し、多重に重ね合わせる事で、心と山が重なり合う景色を現しました。
左右に並んだ2枚の写真は、全く同じ組み合わせの写真の明部だけを重ねたものと、暗部だけを重ねたものです。陽がさせば美しい場所も、陰に覆われると畏れを感じる様に、一つに見えるものの中には無数のものが同時に重なり合っています。
その昔、山から降りてくるとされていた鬼もまた、災いだけでなく恵みももたらす両儀的な存在と考えられていました。それはまさに自然であり、山そのものと言えるのではないかと思います。(上野千蔵)
不定休
作品No.5
吉野勝造商店
作品No.10
紀の国屋甚八
作品No.12
西浦清六本舗
作品No.13
上辻
とも兄こと京谷友明さんは洞川で生まれ、この地でご自身が生まれ育った家で民宿を営んでいます。他の多くの洞川人と同じように鬼を先祖にもつ方で、この土地の歴史に非常に詳しく、山登りが大好きな方です。若い時から身体があまり強い方ではなかったそうですが、山登りをする時だけは身体が軽くなるそうです。ご高齢のため最近は厳しい山に登る事は難しくなっているそうですが、今でも近場の山に登り、山の四季の移ろいや、鳥の声を記録しては送ってくれたりする優しい方です。
そんなとも兄との会話から本来の修験道とは歩く禅のようなものだと教わりました。 周りにあるものに感謝をし、孤独に自然と向き合い、言葉を忘れ、無心に歩く事で自然と自分を繋ぐ修行なのではないかと思います。言い方を変えれば自然と自分の間にある境界線を取り払う修行とも言えます。
協力:吉野勝造商店、紀の国屋甚八、西浦清六本舗、洞川財産区、林敬庸、仲子竣祐、松尾淳平
撮影:上野千蔵