
伊原間 琉球石灰岩が生む絶景(石垣島)
石垣島の北東、玉取崎展望台の近くに訪れる人もまばらなビーチがある。
その昔、明和の大津波の際に流されてきたという『津波岩』を右手に見ながら歩いてゆくと、奥の方に琉球石灰岩が複雑に入り組んだ地形を形作っているのを見ることができる。
琉球石灰岩とはサンゴ礁が岩になったもので、沖縄では家の石垣からお墓などに広く使われている石材のひとつでもある。
サンゴ礁でできた琉球石灰岩は小さな穴が多くもろいので、波の侵食などを受けやすい。岩の上を歩くとよくわかるが、長年の浸食によって表面はギザギザと複雑に尖り、うっかり転ぼうものなら怪我は避けられないと思わせるに充分な鋭利さだ。
そのもろさゆえの絶景もある。
石垣島は風の強い島だ。止むことのない海風と波の浸食、この2つは常に琉球石灰岩を削り、芸術作品のような海岸線や奇岩たちを作り出す。そこへ波が打ち寄せ、新たに岩を削ってさらさらの砂を作る。
ここには打ち寄せる波の音と風の音、自分の足音しかない。
琉球石灰岩の上で、この島の成り立ちに思いを馳せる。そんな時間があってもいいかもしれない。