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失井敗斗暗殺計画①
クロエ「いい加減、正妻を決めるべきだと思うのです」
メリア「せいさい?ってなんですかー?」
カナミ「一番立場が上の女ってことでしょ。ていうか、なんであたしまで呼び出されてんのよ」
遊部「それを言うなら、百合ちーこそ場違いだと思いますが……」
クロエ「誠に遺憾ながら、現時点で最もマスターと連絡頻度の高い女性は遊部さんです。カナミさんはついでです」
カナミ「ぶっ◯すわよ」
クロエ「のちにマスターの正妻となり、淫らで甘美な極楽浄土を築く予定である私からすれば、あなた方は邪魔なのです。今後、マスターに近寄らないと誓うなら、ここから退場して頂いても構いません」
メリア「えぅ!? ますたーと一緒にいられなくなるんですか!?」
遊部「百合ちーは全然困らないっスね……」
カナミ「あたしも困らない。ていうか、あいつはあたしの下僕でしょ?」
クロエ「ふふん。そんなことを言っていられるのも今のうちです。ここだけの話ですが、マスターは近々、引っ越しを考えています」
カナミ「んなっ……!? うそでしょ!?」
クロエ「本当です。そもそも、マスターほど経済力のあるお方が、こんなボロアパートに住んでいることの方が異常だったのです。次に引っ越し予定の物件は、タワーマンションの最上階だそうです」
カナミ「…………」
クロエ「ふふっ。あなた程度の女がマスターに強気に出られるのは、ひとえに『大家』という立場があればこそ。引っ越しさえすればその特権も消え、お互いに学校をサボりがちなあなたとマスターは、ほとんど会うことがなくなるでしょうね」
カナミ「……コロス」
遊部「あのー……どちらにせよ、百合ちーは関係ないんで帰っていいっスか……? お姉さま方と喧嘩する気は毛頭ありませんし……」
クロエ「正妻の特権は大きなものです。きっと、側室を交えた3Pも可能になると考えます」
遊部「死んでもここに居座るっス。(キリッ)」
メリア「え、えっと……それで、クロエさんは、なにをしようと思っていらっしゃるんですかー……?」
クロエ「良い質問です。ずばり、マスターの『ファーストキス』を奪った女性を正妻とすることに致しましょう!」
カナミ「んなっ――!?」
メリア「ええっ!?」
遊部「おえぇぇぇ……。(嘔吐)」
クロエ「だいたい、本編にキスシーンの一つもない方が間違っているのです。私とのお別れシーンとか、キスしてもよかったと思いませんか?」
メリア「あぅっ!? そ、それなら、わたしも――」
カナミ「あ。それで言うとあたし、あのバカに胸揉ませてやったし、あたしの勝ちじゃない?」
クロエ「痴女は黙っていなさい」
カナミ「瞬◯殺」
遊部「しょ、勝利条件が敗北条件なんスけど……」
白星勝子「はっはっは! 面白そーなことやってんじゃないか!」
少女たち「!!!!!」
勝子「あたしも混ぜろ」
クロエ「貴女……ラスボスの身分でよく顔が出せますね……」
勝子「そう言うなよ。本編があそこで終わっただけで、本当のラスボスは他にいたんだ」
カナミ「しね」
勝子「うぉぉいっ! なんつー攻撃してきやがる!? 一般人なら蒸発してたぞ!」
カナミ「ちっ……」
メリア「あのー……なんで勝子さんがここに……?」
勝子「ああ。ちょっとジョギングがてら日本一周してたら、たまたまな」
遊部「さすが『体は《資産》で出来ている』人っスね……」
勝子「面白そーじゃねぇか! 乗ったぜ! 誰があの敗者の唇を奪うかの勝負! 勝った奴が負けた奴らに命令できる!」
クロエ「勝手に仕切らないでください。まあ、負けるつもりはありませんが」
メリア「ま、ますたーと、キス……」
カナミ「……っ。や、やってやろうじゃないっ! そんで、勝ったらそこの赤い女に土下座させてやるわっ!」
遊部「……そんなわけで、敗斗さんの暗殺(ファーストキス奪取)が始まるらしいっス。……帰っていいっスか?」