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忘れないうちに 語ったように書こう。映画「コンパーメントNO.6」が心に残る理由。
旅行の記憶は極めて個人的な景色の蓄積
この映画を上映する福島県内唯一の映画館、「フォーラム福島」で鑑賞。
主人公はモスクワに留学しているフィンランド人。恋人と古代彫刻を見に行く約束がひとり寝台列車で見に行くことになる。
寝台列車のコンパーメントNO.6室。同室の男はウオッカを飲み、テーブルを散らかし、絡んでくる。モスクワの生活では接することがない、粗野な男。
部屋の変更叶わず、食堂車で時間をつぶす。不愉快でたまらない。
停車駅の公衆電話で恋人に連絡するも冷たく・・・
やがて同室の男リョーハとポツポツと話すようになり、
一晩止まる駅では、祖母の家に熱心に誘われ――リョーハの別の顔を知るようになる――
列車の窓から見つめるのは、凍てつくようなロシアの冬景色
窓の水滴に滲んで映るライト、
旅で目にする景色は、風光明媚なものだけでなく、きわめて個人的な記憶として蓄積していく。破片のようなものも大事な記録だ。
野卑としか見えなかったリョーハの純真さが愛おしい。主人公のちょっとした気まぐれから起こる選択がリョーハを孤独にする場面はヒリヒリさせられる(そして、私もこうして人を無邪気に傷つけていたことだろうと思う)。
モスクワの留学生活に自分の居場所が見つからない主人公が本来の自分を取り戻すようにうれしそうに、北の果ての土地で凍った地面を走る。少々滑っても全く平気な本物の北国育ちの身のこなしは見ものだ。
生まれた環境も、今いる生活も違う二人が旅先で出会う。旅が終わってしまったらどうすればいいのだろう。
2021年公開 フィンランドでロシアが舞台の映画を作ることができたタイミングも奇跡的だ。
これはまるで私のことでは?「エブリシングエブリウエアオールアットワンス」
映画 「エブリシングエブリウエアオールアットワンス」のチケットを窓口で買う時に「エブエブ」と小声でチケットを購入(「アカデミー賞7部門受賞後に見に行ったので、「エブエブ」で通じた)
最初は混とんとしていている。何が起こっているのか容易につかめない。異様な展開に受け身になってカオスの海に身を沈めていると、この映画の中のマルチバースという概念が分かって来る。
主人公は自己の人生に様々な可能性を見出し、その都度頑張って何かを成し遂げようと習い事をしたり、時間もお金もかけてきた人だ。だから、コインランドリー経営なのに歌手でもあるためにカラオケ代の経費が紛れ込んでしまう。そして天敵である税務署の担当者に怒られる。
もしもあの時この道に進んでいたら、選んでいなかったら…身に覚えがありありなのである。
思ったようにならなかった人生から広がるマルチバースの世界から
一つの結論を見つける主人公。人生讃歌。映画を見終わると映画宣伝用ビジュアルの意味が初めて分かる。
この映画でアカデミー賞助演男優賞をとったキーフォイクワンの復活のストーリーも胸が熱くなる。
声を聞いたとき、インディージョーンズの男の子、ショートのハイトーンボイスの声のままで嬉しくなった。