【名言】人生は短いんだ。(映画『パレードへようこそ』)
『パレードへようこそ』は1980年代のイギリスで、同性愛者の団体(LGSM)が炭鉱労働者組合へ寄付をするという、実話を基にしたイギリスの映画。
冒頭のフレーズは、本映画に出てくる団体のリーダー、マークのセリフである。
マークは実在の人物で、同性愛者や炭鉱労働者をはじめ、様々な市民の権利を主張する活動を推進し、26歳の若さでこの世を去った。
『パレードへようこそ』は明るく楽しいコメディのため、それだけでも大変お勧めできる映画であるのだが、さらに面白いのは、同性愛者の団体が自身と同じく弱い立場の炭鉱労働者を支援するという点である。
こういった話でよくある流れは
「弱い立場の人々が立ち上がり、様々な困難を乗り越えながら、誇りを取り戻していく、あるいは希望を見つける」
といったものだろう。
一方で、『パレードへようこそ』は
「弱い立場の人々が、別の弱い立場の人々を「支援」する」
という構造なのである。
ここが面白い。
さらに映画では
同性愛者による炭鉱労働者支援団体(LGSM)は
真っ当な団体であるにもかかわらず
多くの炭鉱労働者組合から支援を拒否される。
「同性愛者」と付くだけで支援を拒まれるとは驚きである。
炭鉱労働者への支援なのだから、真っ当な手段で得たお金を寄付する行為のどこに拒否する理由があるのか不思議だ。
劇中、同性愛者からの寄付を頑なに拒む女性が登場する。
彼女が拒む理由は、「同性愛者から支援を受けたならば新聞記事で面白おかしく書かれ、世間から自分達の村や炭鉱が嘲笑されるだろう。そんなことは断じてならない。自分達に誇りを持つべきだ。」ということである。
彼女は夫を若くして炭鉱の事故で亡くしている。
亡き夫の分まで自分が炭鉱を守っていくのだというプライドを持っていると、こういうことなのだろう。
しかし、炭鉱の人々と同性愛者団体が上手く関係を構築した矢先、
彼女はなんと自ら新聞社へ村が同性愛者からの支援を受けているニュースを売り込むのである。
案の定、新聞にはひどい記事が掲載され、人々は嘲笑の的となった。
彼女が最も嫌がったのはこのような記事が出ること、世間から嘲笑されることではなかったのか。
それを自分以外の村人が同性愛者たちと仲良くし、誰も自分の意見を聞いてくれないことに腹を立てて、
自身の主張と矛盾する行動を起こしたのである。
不思議なもので、
ひとつの物事に集中してばかりいると、
そしてそれが上手く行かないと、
人は自身が望んでもいない行動を起こしてしまうらしい。
勉強になった。
だが、とにもかくにも、『パレードへようこそ』は明るく楽しく、たまに影もありながら、前向きに生きていく映画であるので、おすすめである。
ぜひご覧になってほしい。