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置き配から引きこもりにご注意/不思議の国の豊49

前回は

ここまで、そして、

2020年には新型コロナというウイルスが世界中の多くの人に恐怖を与え、外出や人との接触を控える人が増えたため、新しいビジネスやサービスが出てきている。

ネットでメニューを選び、クレジットカードなどで決済し、食べたい料理を注文すると、自宅のドアの前に、その料理を届けてくれる置き配が流行っているらしい。

つまり一人暮らしでそれを利用する人の中で、当面外に働きに出ないで済む人は、一日中生身の人とは誰とも会わず、触れ合わず、会話もせず、と言う状態がずっと続くことになる。

これを見て僕は20年近く昔を思い出した。

#ネット通販収入と自給自足の自由な時間

連れ合いと分かれ、娘たちもそれが連れて行き、僕は一人で家に住むようになっていた。

自分だけの生活だし農業だから、食べるものも自分で作れる。

何でも自分で賄う自給自足の生活を目指した。

それが一番美しい生き方だとも思った。

最低限の電気代と、インターネットにつなぐための通信費以外は、生活費がかからなくなった。

月に1万円弱の出費は、年収12万円で十分生活できる。

2000年からちょっと過ぎたこの時期でもネット通販ができる僕には、そこでの有機農産物販売だけで十分だった。

注文はネット上の販売システムから、パソコンに自動受注か、FAXで入るので、それに受注確認の返事をメールかFAXで出す。電話は受け付けない。

システムから打ち出された受注伝票を手に、畑に行き出荷に必要な野菜や果物を収穫し、箱に詰めて出荷伝票を張っておけば、宅配業者が定時に取りに来て持って行く。

自動化したシステムを組んであるから、鉛筆もボールペンも持たないだけでなく、

私は誰とも口も利かないし、車で畑に行くから、誰とも話さない。

商品在庫がある間は何日でも外に出ないでも済む。

そんなことが数か月続いたある日の朝。

#自由が多すぎて引きこもりに

早起きの私は、いつものように布団から起き上がった。

しかし普段と様子が違った。

突然、あおむけに布団にバタンと倒れ込んだ。

後頭部にまるで大きなゴムが取り付けてあって、その片方は布団の枕の辺りに取り付けてあるような感じで、

何度起き上がってもそのゴムで布団に引き倒されるのだ。

トイレに行くときと一日一度の食事は起き上がれるのに、

それ以外の前向きな何かをしようとすると、布団に引っ張り戻される。

何が起こったかわからなかった。

最低限の食事は何とかとれたが、そのほかのことは何もできない。

寝て、食べて、出す。

その繰り返しだった。

丁度農閑期だったから畑に行く必要もない。

加工品の注文が入るが在庫あるので、外に出る必要はない。

ノートパソコンを枕元に置き、受注確認をして注文が有れば出荷はするが、

ものの数分で終わる。

また布団に引き戻される。

そんな僕でも、週に一度、ある曜日の夕方になると、突然シャワーを浴びて、こぎれいに洗った服を着て、出かけた。

それは唯一の救いだった。

社交ダンスのサークルに入っていて、その曜日は練習のある日なのだ。

そんなことが3か月ほど続く間に、僕は、

「これは引きこもりではないのか?」

と思い始めた。

誰とも口を利かない完全に自由な生活。

収入も月1万円さえ稼いでいれば生活できる。

ほぼ世の中と切り離された宇宙に僕は生きていた。

僕には

「精神病と言うのは本人(の本能?)が自分を守るために

わざわざなるのだ」

との考えが以前からあった。

「この引きこもりは、僕の #自己防衛本能からの警告 ではないか?」

「人には  #一見自由に見える誰にも干渉されない生活 が、実は #生物として間違った生き方 なのかもしれない。」

#引きこもりからの脱出

引きこもり4か月目の終わりごろ、僕は就活を始めた。

#自由業自営業こそが自分に合った生き方 だと思い込んでいたが、

「人に使われることが、ある程度縛られることが、

人間には必要ではないか?」

との仮説を立て、職安(ハローワーク)に行き、就職先を探した。
勤務でつぶれても昼間の半日程度の仕事を探し、週休二日で、平日は半日農業ができる。

そんな条件の仕事(夜間とか早朝)を3つほど見つけ、内定が来た中から、ケールを使った青汁を作る工場に勤務することを決めた。

自転車で片道1時間弱の会社に4時過ぎに入り、昼過ぎに終わる仕事だった。

僕は救われた。

毎日きちんと起きられるようになり、引きこもりから卒業した。

#置き配は引きこもりを生む

ここまで読んでくれた方に言いたいのは、

「置き配に頼り切り、それにいくつかの条件が重なると、

引きこもりになって、

この世に戻ってこられない可能性もあるだろう。」

という事。

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