銀が死んだ日
今日(2020年9月2日)私が羽化した
烏骨鶏のひよこ、銀が死んだ。
私がチョットでも外部環境に馴染ませようと
普段は室内に留め
外敵に襲われないようにとしていた。
其れには伏線があって、
10日前ほどに、
銀と同じ時期に羽化した他のひよこたちが、
外の環境に慣らそうと焦った私が、
庭に放ししていたら、
気が付くと、全滅。
否、銀だけは生き残っていた。
多分、キツネなどの小動物か、
カラスなどの大きな鳥に襲われたのだ、
羽数が多いことから、蛇ではないと思う。
あるはずのひよこの鳴き声がないので、
必死に探して、
見つかったのが、烏骨鶏の銀だった。
他の烏骨鶏も死体で見つかり、
他の地鶏は、死骸さえ見つからなかった。
未だにどこかの木陰から出てくるんじゃないかと期待する。
それを生き抜いた銀が
パタリロ(赤毛の猟犬)に噛まれた。
パタリロは急所を一挙に噛み
イノシシも倒す猟犬としては優秀な犬だ。
銀は私を追いかけてきた。
普段のそのルートの近くに
パタリロはいるが、
そのリードは短く、
銀は、距離を保って、パタリロを回避していた。
しかし今回は事情が違った。
パタリロの飼い主が、暑い日刺しや雨を避けて
違う場所につなぎ、
それだけならまだしも
リードが普段の倍の長さになっていたのだ。
銀はいつものコースを通り、
私に近づこうとした。
しかし、パタリロはそれを逃がさなかった。
一挙にかみついた。
私は、パタリロを知っている。
パタリロは急所をとらえるのが得意なのだ。
銀は急所を噛まれ死んだと思った。
私はパタリロを拘束し、銀を逃がした。
私は「銀は逃げはしたが、既に死んでいたのだ。
反射神経で、最後のエネルギーで
加害者から遠くへ行ったのだ」と思った。
世間の言う下等動物では、よくあることなのだ。
死んだと思った銀は最後の力を振り絞って逃げた。
私はパタリの頭を殴り、
(彼女は本能だから、悪意はないが、私は思わずそうした)
次いで、排水溝のほうに逃げた銀を
そこら辺の物をひっくり返して、必死に探した。
「銀、どこだ?」
「銀、返事せえ」
「銀、来い」
何度も何度も何度も
何度も何度も何度も何度も何度も何度も呼んだ。
ちなみに「銀、来い」は私が「銀恋」と言うほど、
いつも銀に呼びかけ、一番反応のある言葉だ。
頭に流れる、銀恋のメロディーとは裏腹に、
銀は何処にもいない。
小一時間、「銀、来い」と言いながら、
居そうなところを何度も何度も何度も何度も探し回った。
そのたびに、弱弱しいが
銀の鳴き声が聞こえる。
正確には、銀に似た鳴き声が聞こえる。
でも銀はいない。
結果、床下で死んでいるかもしれないと、
床下に潜った。
似たような白い塊に「居た」と思う。
しかしそれは別の物体だった。
私は、諦め、床下でほこりまみれ、蜘蛛の巣まみれになった
体を、シャワーで洗い流し。
もう銀は戻ってこないのだと思った。
シャワーの前に、「せめて、遺体でも」と思った。
私は、「せめて遺体でも」と言う言葉を、いろいろの事件報道で聞くが、
無意味な発言と思っていた。
しかし、今日は、その気持ちがわかった、
せめて、「銀の遺体だけでも」と、本気で思った。
風呂から上がって、
台所に入ると、やはり銀が泣いているが気がする。
何度も見た台所、
椅子を動かし、棚のカーテンを何度もめくり、
何度も何度も確かめた、銀が昼間の大半いる場所。
「耳が、頭が、銀の声を聴きたいだけだ」と言い聞かせる。
居た。
銀は、私のスツールの下にうずくまっていた。
「銀、生きちょったか?!!
ありがとう。」
と思わず言ってしまった。
銀はびっこを引いていたが、生きていた。
でも、好みの蜂に似た生き物を私がが与えても、
見向きもしない。
『痛いんだ。それどころではないんだ』
と思うが、少しでも体力回復には
タンパク質は有効だ、
銀はそれが大好物で育ってきたんじゃないか。
と思う。
でも食べない。
死ぬのか?
パタリロは、内臓の急所を噛み砕いているかもしれない。
私は銀が体力を消耗しないように、
孵卵器に戻した。
ここは37.6度、湿度60-70%
銀の羽化した環境だ。
そこに入れると、銀は寝始めた。
私も寝ることにした。
私が目が覚めた時、
銀が死んでいるかもしれないし、
銀が前と同じように元気になっているかもしれない。
私は遅い昼寝をした。
いろいろの夢を見たが、目が覚めて、
すぐに銀を見に行った。
銀は生きていた。
そして、21日前に、孵卵器に入れて、
6時間ごとに転卵していた、
土佐地鶏の卵に、
中から嘴が出ていた。
銀の後輩たちだ。
どうあがいたって、
銀は生きるしかない。
同じ孵卵器に中でこの世に生まれた
最初の大先輩なのだから。
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