いつかの景色と明日の自分③
みなさん、こんばんは。
遠藤果林です。
本日も昨日の続きです。
自分の身に起こったことを書いているので、ある意味自伝のようになっていますが、少しでも自然の恐ろしさや儚さを感じていただければ幸いです。
何もわからなかった、わかりたくなかった
父親があわてて帰ったきて、「津波だ!」と大声を発する中、私は疑心暗鬼でした。
確かに津波警報は出るかもしれないけれど、そんなに大げさなことだろうか?
でも、もし大きな津波が来たとしても、少し高台にある家は大丈夫だろう。
そう高をくくっていたのです。
そんなまさかと思いつつ庭に出た私。
家は坂の中腹にあって、その下には団地、そして防波堤、石の浜、その先に海がありました。
少しくぼんだ場所にある家は、1階では海は見えず、2階からなら海が見えます。
庭からの景色は少し高い位置にある線路の丘、小さな林、隣の家。
線路向こうは特に見えるものがなく、あっても木が見えるくらいでした。
いつもと変わらない…そんな時です。
「あそこ!木が倒れたぞ!」
父が線路向こうを指さして叫びました。
木が倒れるなんて、そうそうあることではありません。
まさか、見間違いではないか?
そう思って父の指さす方向を向いた、その時です。
あるはずのないものが、線路向こうに見えました。
それは————赤い家の屋根でした。
…屋根?なんで?
目を疑ったとき、その屋根らしきものはスゥ————っと右へ動いていったのです。
まるで滑るように、きれいに真横に進み、そしてある程度動いた後、またスゥ————っと左へ動きました。
なに、あれ?
そして気づくとその屋根は見えなくなくなっていました。
どういうこと?
思わず絶句していた私は、その真実を確かめようと線路の近くへ駆け寄りました。
父親が先に動いていたので、そのあとを追う形でしたが、そのあたりから心臓が嫌な音を立て始めていました。
ドク、ドク、と。
何が何だかよくわからない状態でした。
ちょうど線路近くまで来たとき、私たちの家の近くまで坂の下から何人かの人が上ってきました。
その顔は動揺しており、とある近所のおばあちゃんは太ももまで濡れて「だめだ、浸かってしまった。」と言いながら坂の下の方を振り返りました。
私もその方角を見ると…違和感を覚えます。
————いつも見ている景色と、違う。
そのときはまだすべてを理解しきれていませんでした。
本能的に、知りたくない、という気持ちもあった気がします。
しかし、何が起こったのか…この後、十分に思い知らされることになるのです。
以上、本日はここまで。
お読みいただきありがとうございました。
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