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㉒ 2024年1月 OTOKOMAEフェス「宝物」


2024年1月17日 国立代々木競技場第一体育館で開催されたOTOKOMAEフェスに出演した。


 「続いては、こちらのOTOKOMAEです。どうぞ!」
  スクリーンにアーティスト写真が映し出されると、女性ファンの声が響いた。
 「しょーご!」「しょーご!」
 金色の木漏れ日のような照明を浴びた彼が、全身全霊でアコースティックギターをかき鳴らし歌い始めた。

 
この日に歌った「宝物」という楽曲は、彼が10代の頃に大阪駅で路上ライブから音楽活動を開始して、初めてライブハウスで歌った「Treasure」という楽曲のアンサーソングである。

「Treasure」の歌詞 
ー 輝いた あの日々と 今 見比べ ー
 小学生で芸能デビューして、中学生でミュージカルの主演を務めた。その後上京してテレビドラマや舞台に次々と出演していた矢先、音楽がしたいという強い思いから芸能事務所を辞めた。
 その後、地元で音楽活動を始めたが、現実を目の当たりにして後悔する日々を数年過ごした。
 「Treasure」は、10代の彼が絶望しながら自分の音楽を探していた頃の楽曲だ。
 2012年12月にライブハウスのステージに立ってから、彼の音楽活動は大きく動き出す。2013年に自主制作CDをリリースしてワンマンライブを成功させる。2014年には東京でもワンマンライブをしている。

https://note.com/kujinote/n/nf61c6167930a

 2015年にアーティストとして活動するため上京した彼が、渋谷や原宿で路上ライブをしていたのは、2016年から2017年までの約二年間だった。
 路上ライブでは、ザ・ビートルズ、エド・シーラン、Mr.Children、ポルノグラフィティなどカバー曲もギター弾き語りしていた。
 メジャーデビュー直前、二年ぶりに 「Treasure」をアコースティックギターで弾き語りしたライブ映像が、彼のメジャーデビューシングル『鼻声/しょっぱい涙 初回限定盤(CD+DVD)』に収録されている。

 「宝物」は、2020年にリリースしたセカンドアルバム『=+』の最後に収録されている。旋律は「Treasure」とほぼ同じなのだが、歌詞はメジャーデビュー後の心境を表している。
 念願のメジャーデビューを果たしてから、2.5次元の舞台やアニメの声優など活躍の幅を広げたが、その代償として音楽と向き合う時間が少なくなってしまったのだろうか。ファーストアルバムをリリースして東名阪ライブツアーを開催したが、目標にしていた武道館ワンマンライブは実現していない。
 2020年のコロナ禍により、エンターテイメントは活動を大きく制限され、セカンドアルバムのリリースイベントやライブが今までのように出来なくなってしまった。
 やっと2023年から、声を出せるライブや握手会イベントが出来て、2024年1月OTOKOMAEフェスで選曲したのが「宝物」だった。ワンマンライブでは、感情が溢れて瞳を潤ませながら歌い終わることが多かったが、OTOKOMAEフェスでは少し違っていた。
 
  【 2022年~2023年に出演した舞台 】
 ・The View Upstairsー君がみた、あの日ー フレディ 役
 ・ミュージカル「刀剣乱舞祭」~真剣乱舞祭2022~ 堀川国広 役
 ・ワールドトリガー the stage 大規模侵攻編 ヒュース 役
 ・音楽劇「まほろばかなた」主演 高杉晋作 役
 ・演劇調異譚「xxxHOLiC」-續- 主演 四月一日君尋 役
 ・ミュージカル刀剣乱舞「すえひろがり 乱舞野外祭」堀川国広 役
 ・舞台「鬼滅の刃」其ノ肆 遊郭潜入 主演  竈門炭治郎 役

 舞台俳優として忙しい日々の中で、彼は音楽と向き合う時間を楽しんでいた。自宅の一室にホームレコーディング用の機材を揃えたり、一生物のエレキギターを手に入れたりし、FC限定配信で自宅スタジオの紹介をした。
 2022年から制作を始めたホームレコーディングCDは、2023年12月までに5枚リリースしており、作詞、作曲、アレンジ、歌唱、ギター演奏、ピアノ演奏、ジャケットデザインすべてを彼自身が手掛けている。 
 OTOKOMAEフェスで「宝物」の次に歌った「忘却ダンス」は、2022年10月リリース『HOME RECORDING 3』に収録されている楽曲だ。
 
「宝物」歌詞の最後
ー 心を燃やせば 輝くんだ ー
ー もう一度 ほら ポッケの奥で ー
ー 握りしめてみよう 情熱という宝物 ー
 
 ホームレコーディングCDを制作しながら自信を取り戻して、心から音楽を楽しむことが出来るようになったのだろう。この日の彼は、やり遂げたような表情で歌い終わると微笑み、深々と頭を下げた。

 MC抜粋
「皆さん!阪本奨悟です!こんばんは!」
「OKOTOMAEフェス、楽しんでますかー?」
「実は僕、前に、かなり昔なんですけど、この会場を出たすぐそこで、路上ライブをしてた時期がありまして、アンプ転がしてそこでやってました。こんな時はすごく路上ライブ寒かったんですけど」
笑顔で右腕をまっすぐ挙げて、前に歩み出ながら
「今日は、やっと、中に入れてもらえましたぁー!」
温かい拍手と歓声を受けて、嬉しそうな表情をみせる
「あったかいね、暖房がきいてるって凄くいいですね。」
「皆さんの熱気もすごく温まっていると思います!ほんとにありがとうございます!」
満面の笑みを浮かべて、大きく手を振った。