わたしにできること、できないこと、やりたくないこと。

「できる・できない」と言うのは学校、職場、自宅など日常生活のあらゆるところで問われる二択なんですが、この二択は二択のように見えて実はとても複雑な選択なんです。

・できるけど疲れる

発達障害者は『できる』と『できない』の間に、『できるけど疲れる』がある

これは、1年ほど前に話題になった「発達障害ってなんだろう」というテレビ番組での言葉。
これは、一般的な「疲れるからやりたくない」の感覚とは違って「周囲が苦もなくできていることを同じように行うのに発達障害の方は多大な労力を必要とする」と言う意味なんですが、この感覚は少なからず誰にでも有り得るものだと思うんです。

例えば職場で、「昼休憩の後はどうしても作業スピードが遅くなっちゃうから、少し無理してでも午前中に時間かかるものは終わらせちゃおう」って頑張っているとします。そうしたら、そこに上司が来て「休憩の後、この書類まとめておいて。いつも午前中あれだけ終わらせてるんだからできるよね?」と。

もちろん、午前中にできていることなんですから「できる」か「できない」かで問われれば「できる」と答えるしかありません。
しかしそれは午後に関しては、もっと言えば一日中同じスピードで終わらせることは難しい。これが『できるけど疲れる』という感覚です。
これが1日だけの話ならば、できないこともないでしょう。でも、人によってはこの「書類」が「通勤」に置き換わるかもしれませんし、「他人との会話」かもしれませんし、はたまた「この世に存在すること」の可能性もあるんです。

さらにこの感覚の難しいところは、自分が必死になって終わらせたことを、なんでもないかのようにできてしまう人がいることです。
そんな人から見れば、「そんなこともできないなんて」と思うことでしょうし、しかも普段は(無理をして)できていることなので、この括弧の中が見えない人はいつもできているのにサボっていると感じるわけです。

これが『できる』と『できない』の間にある『できるけど疲れる』です。


・わかるけどできない

簡単に言ってしまえば、得意不得意の延長のようなものです。
不得意、苦手なことであれば、繰り返し行ったり詳しく教わることでできることがほとんどです。子供の頃苦手だったピーマンが今では食べられるように、時間の経過で克服できる苦手もあります。

この『わかるけどできない』というのは、自分一人ではどうしようもないような苦手のことを指します。苦手、というと語弊があるかもしれません、不可に近い苦手と言えばいいでしょうか。
さっきのピーマンの例で言うと、ピーマンアレルギーの人がそれに当たります。ピーマンが食べ物であると言うことはわかる、口に運んで噛み砕いて飲み込めばいいと言うこともわかる。でも食べられないんです。食べることができないんです。

これはわたしの体験談になりますが、わたしはADHDという障害で複数のことを同時に行う、いわゆるマルチタスクがとても苦手です。片端から終わらせていく分には問題ないのですが、「あれやって、これやって、その間にこれやらなくちゃ」としているとものすごく疲れますし、ほぼ確実に失敗します。

もちろん仕事内容がわからない訳ではないですし、どう動けば効率がいいかとか、次何をやらなきゃいけないとかは頭では理解しています。でも、できないんです。なぜできないのかと問われてもわたしにはよくわからない、障害だからとしか答えることができないんです。
アレルギーの人にフォークとナイフの使い方をいくら教えても食材を食べられる訳ではないように、プリンターの使い方やファイリングの仕方をいくら教えても「この書類はあそこのファイルに、これはコピーして〇〇さんと〇〇さんに渡して、これはあのファイルに...」と言われるとできなくなってしまうんです。

そんなこと人生で起きたことない、そんな感覚知らないと言う人もいると思いますが、周囲には一人くらいいるんじゃないでしょうか。何度説明してもできない人、いつも同じようなことでミスをする人が。

先ほど、「自分一人ではどうしようもないような苦手」と言いました。実はこれ、周囲が少し寄り添うだけで解決することが多いんです。
わたしのようにマルチタスクが苦手な人には、やることを一枚の紙や一通のメールにまとめたらすぐにできるようになったと言う話をよく聞きます。
一枚の紙にまとめることで、「あれもこれも」から「ここに書いてあることをやる」という切り替えができるようになるんです(これは個人的な感覚の話なので当てはまらない人も多くいます)。
どうしてできないかわからない人がいたら、できるようになる方法を考えるといいかもしれません。


「努力が足りない」は他人が言うことじゃない


人それぞれ、努力してもできないことがあったりするんです。自分ができるから、周りができることをできないからって、なんでも一括りにして「努力が足りない」とか「もっと努力しろ」とか言わないで。
それじゃあ仕事をしていない奴が増長するだけだ、と言う人がいますが、ふつう、仕事をしていない人に「努力が足りない」とは言いませんよね?サボるなとか、仕事をしろとか言うはずです。
やってもできていないなら、教えてあげてください。見てあげてください。その上で、教えているあなたでさえなぜできないのかわからなかったら、助けてあげてください。

努力しているかしていないかは他人が判断する。それはわかります。
ですが、努力が足りないかどうかは他人が決めることじゃないんです。自分ができること、できないことを勝手に決めないでください。お願いします。



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