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ある罪深き者の転生と贖罪
昔、舎衛国で突然、血のような雨が降り始め、縦横四十里に及んだ。王と群臣たちは非常に驚き、ただちに道術や占いの専門家を呼び、この出来事の吉凶を占わせた。占い師たちは、血の雨は人間界に「人蟒」」が生まれたためだと述べ、古い書物にもそのような記録があると告げた。そして、災いをもたらす者を国中から探し出すべきだと進言した。
王がどのようにして「人蟒」を特定すれば良いのかを問うと、占い師たちは次のように答えた。「全ての新生児を集めさせ、空の甕に唾を吐かせなさい。その唾が焔に変わる者こそ『人蟒』です」。王は指示通り行い、遂に「人蟒」の子を見つけ出した。その子は人里離れた場所に隔離され、国中の死刑囚が次々その子のもとに送られた。やがてその子は毒を吐き、七万二千人もの命を奪った。
しばらくして、国に一頭の獅子が現れた。その吠え声は四千里の範囲に響き渡り、人々や動物たちを怯えさせた。王は獅子を退治できる者を募り、成功者には金千斤と広い封土を与えると約束した。しかし、誰も名乗り出る者はいなかった。群臣たちは、人蟒の力を借りるべきだと提案した。王はその提案を受け入れ、人蟒を呼び出し、獅子に立ち向かわせた。人蟒は毒気を吹きかけ、獅子を倒した。こうして国には再び平和が訪れた。
時が経ち、人蟒は年老いて病に倒れ、死期が迫った。仏陀はその罪深さを憐れみ、悪道に堕ちることを防ぐため、弟子の舎利弗に救済を命じられた。舎利弗が人蟒のもとを訪ねると、人蟒は激怒し、毒気を放った。しかし、舎利弗の慈悲の心により毒気は効かず、人蟒の心は次第に和らいでいった、遂に人蟒は慈愛に満ちた眼差しで舎利弗を七度見回し、心を開いた。
その後、舎利弗が立ち去ると、人蟒はその日のうちに命を終え、天地が揺れ動いた。摩竭王が仏陀を訪れ、人蟒の死後の行方を問うた。仏陀は、「彼は第一天(四王天)に生まれ変わりました」と答えられた。王は驚き、これほど罪深い者が天上界に転生する理由を尋ねた。
仏は次のように説かれた。
「彼が舎利弗に会い、慈しむ心を取り戻したことで、その福徳により天上界に生まれ変わったのです。そして、第一天での寿命を終えると第二天(忉利天)に転生し、こうして七度天界に生まれ変わった後、辟支仏となり涅槃に至るでしょう。」
さらに王は問うた。
「では、七万二千人を殺した罪は償わなくて良いのですか?」
仏陀は答えられた。
「後に彼が辟支仏となる時、その肌は紫磨黄金のように輝くでしょう。ある日、道端の木陰で瞑想していると、七万余りの兵士が通りかかり、彼の姿を金塊だと勘違いして斬り裂き、体をバラバラにしてしまいます。しかし、手に取った瞬間、それが人間の肉であることに気づき、驚いて捨てて去っていくでしょう。この苦しみと償いを経て、彼は遂に涅槃に至るのです。この世での罪は、こうして消滅するのです。」