北宋 仁宗皇帝の 「春夏秋冬四詞」
春
春風が柳を揺らし、
桃や李の花が咲き誇る。
草も芽吹き、木も芽吹く。
鞦韆で戯れる、
若い男女、
郊外で思い悩む、
庶民と農家。
よく考えてみれば、
喜ぶも他人、
悩むも他人。
これからは、
衣服を広く施し、
食事を分け与え、
静かに阿弥陀を念じながら、
自らの準備を整えよう。
浮き世を嘆くに、
あっても幻の花、
なくても幻の花。
ただひたすら願うのは、
早く阿弥陀仏の浄土に至ること。
極楽の蓮池では、
座れば蓮の花、
立てば蓮の花。
夏
薫風が青草をなで、
万物は潤い育つ。
蚕は繭を紡ぎ、
麦は実り始める。
高楼で騒ぐ
遊び人たち、
旅路で苦労する、
商人と旅行者。
よく考えてみれば、
楽しむも空しく、
苦しむも空しい。
これからは、
善行を広く積み、
未来の道を整え、
阿弥陀を勤しんで念じながら、
旅に備えよう。
浮き世を嘆くに、
あっても虚名、
なくても虚名。
ただひたすら願うのは、
早く阿弥陀仏の浄土に至ること。
極楽の蓮池では、
座れば心ゆくまま、
立てば心ゆくまま。
秋
金風が黄菊を吹き渡り、
皎月は満ちて円か。
花はすでに散り果て、
果実も尽き果てる。
東の壁際から、
婚礼の囃子、
西の壁際から、
鼓や鉦の音。
よくよく考えれば、
今あるものも徒然、
過ぎたものも徒然。
これからは、
広く方便を行い、
多くの善縁を結び、
急いで阿弥陀仏を念じて、
来世の準備をしよう。
浮き世を嘆くに、
有っても円満ならず、
無くても円満ならず。
ただひたすら願うのは、
早く阿弥陀仏の浄土に至ること。
極楽の蓮池では、
座れば安らか、
立てば安らか。
冬
朔風が松柏を吹き抜け、
雪が舞い降りる。
草はすべて枯れ果て、
木も萎れていく。
こちらの壁際では、
笑い合う紅炉暖閣の人々、
あちらの壁際では、
麻衣を纏う凍える姿。
よくよく考えれば、
富貴であろうと虚しく、
貧窮であろうと虚しい。
これからは、
堅く戒律を守り、
早く禅機を悟り、
熱心に阿弥陀仏を念じ、
無常の訪れに備えよう。
浮き世を嘆くに、
有っても悲しみ、
無くても悲しみ。
ただひたすら願うのは、
早く阿弥陀仏の浄土に至ること。
極楽の蓮池では、
朝も光に満ち、
夕暮れも光輝く。