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写真に収めないのがもったいないです【エッセイ】
料理が出てくるたびに「写真に収めないのがもったいないです」と言って永遠に写真を撮らない女の人とご飯に行った。
確かに、そのお店で出てくる料理は、聞いたこともない謎の生命体みたいな名前のキノコなどが使われていて、物珍しいものだった。だから写真を撮りたい気持ちは、とても良くわかる。SNSに載せたら、いいねがたくさんつきそうな一皿だった。
でもその女の人は、「写真に収めないのがもったいないです」と言っておきながら、なぜかスマホを取り出さない。その代わり、目の前にある料理をすぐにバクバク食べ始めるのだ。「写真撮らんのかい」と、僕は心の中で何度もツッコミを入れた。だが、それを口に出す勇気はなかった。なぜなら、彼女はとても幸せそうに食べていたからだ。
しかし気になる。お店の中で写真を撮るのが失礼だと思ったのだろうか。それともスマホの電池が切れていたのか。あるいは、僕の「写真撮らんのかい」というツッコミを引き出すための高度な心理戦だったのだろうか。だとすると僕は、何ともつまらない男だと思われていたのかもしれない。
家に帰ってからも、この謎の行動について考え続けた。何かのポリシーだったのか、ただの気まぐれだったのか。やはり勇気を出して聞くべきだった。考えても答えは出ない。今年一番の後悔である。