
施錠確認の呪い【エッセイ】
朝、鍵をかけて家を出る。
駐車場に着いて車に乗り込むと、いつもの疑念が頭をよぎる。
「あれ、鍵閉めたっけ?」
毎朝やってくる、この衝動。
仕方なく、車から降りて家に戻り、鍵が閉まっているか確認をする。
毎日必ず閉まっている。
そして次の日もまた「閉めたっけ?」のループが始まる。
まるで呪いのように。
ところが、ある日。
車で20分走ったところで、この衝動が遅れてやってきた。
もう約束まで時間がなく、確認に戻ることはできない。
この日に限って鍵が開けっぱなしになっていた。夕方、家に帰り玄関のドアを開けると、目の前には靴が乱雑に散らばっていた。一瞬で全てを察した。冷静さを失い、そのまま靴を脱ぐのも忘れ、廊下を進んだ。リビングのドアを開けた瞬間、頭に激痛が走った。何が起きたか分からず床に崩れ落ちた僕が、ぼんやり目を開けると、そこにはハンマーを持った見知らぬ男が立っていた。そして意識を失った。
僕はコンビニの駐車場に車を停め、友人に「ちょっと遅れる」と連絡を入れた。
そして20分の道のりをまた引き返すのであった。