「当たり前」の夢【エッセイ】
あなたという存在自体が、夢だったんじゃないかと思う瞬間がある。
今、僕はあなたとご飯を食べていた机で、パソコンを打っている。
あなたが座っていた椅子に僕は座っている。
あなたが見ていた景色を僕は見ている。
だが、その先に僕はいない。
そういえば、最後の話をしたのも、この机だった。
あの時、あなたの中に、僕は存在していたのだろうか。
「当たり前」というものは、いつの間にかその形を失い、それが新たな「当たり前」にすり替わっていく。
かつての「当たり前」は、時間に押し流され、やがて記憶の奥深くへと沈んでいく。遠い過去の「当たり前」は、今となってはただの幻のように思えてしまうのだ。
それが、あなたの存在を夢だと思ってしまう理由なのだろうか。
それとも、まだ受けいれることのできない自分の弱さなのだろうか。あなたがいないという現実を否定しようとする心が、僕の中に隠れているのだろうか。
今、この机に座り、この景色を眺めながら、あなたという存在の余韻を追い求めている。
それが今の僕にとっての「当たり前」になっている。