【REPORT】晩秋の季語にふれて 村国座吟行句会
2023年10月1日。
かかみがはら未来文化財団さんとご一緒している文芸企画「こと、ばと、ことば。」の3つのイベントのなかのひとつ、「晩秋の季語にふれて 村国座吟行句会」を、各務原市にある「村国座」で開催しました。
「地歌舞伎」「村芝居」は俳句の季語です。
そんな地歌舞伎が今もおこなわれている、貴重な文化財「村国座」が、今日の会場です。
このワークショップは、世の中の記憶から薄れゆく季語の現場、貴重な文化財である村国座に足を踏み入れ、舞台裏まで巡りながら言葉を集めて俳句づくりにチャレンジする、吟行句会ワークショップ。
前日のトークイベント「幻の句にふれて 十六夜俳句サロン」につづき、今日も講師に、俳人の神野紗希さんをお招きして開催となりました。
今回は俳句が好きな方はもちろん、俳句にはじめてチャレンジするという方でも楽しんでもらえるよう、レクチャーを挟みながら吟行、その場で俳句をつくって句会に挑戦するところまで、たっぷり3時間のワークショップを企画しました。
国指定重要有形民俗文化財に腰をおろして
きょうは、国指定重要有形民俗文化財の「村国座」に足を踏み入れ、客席側に座布団を敷いてのワークショップ。
舞台に、講師の神野紗希さんが座ってお話をされつつ、進んでいきます。
まずは、はじめて俳句をつくる人でも句会に参加できるよう、俳句のつくり方をレクチャー。
「俳句に正解や不正解はない」「気持ちいいなと思う調べに整えて、季語を入れたらもうそれは立派な俳句ですよ」と、取り合わせの例句などを交えながら、俳句の基本についてお話しいただきました。
このあと、村国座の歴史や地歌舞伎に詳しい学芸員さんのお話があることをふまえ、紗希さんからは
「こうした場での吟行、俳句をつくることを考えながら聞くお話の中では、学芸員さんが話される用語を拾ってメモしていくと、それが俳句の種になりますよ」
と、アドバイスがありました。
学芸員さんによる、村国座の解説
ここからは学芸員の阪野さんにマイクをお渡しし、村国座の歴史や舞台装置、演目、当日の様子などを解説していただきます。
阪野さんも、先ほどの紗希さんのアドバイスを受けて、普段はあまり話さないという歌舞伎用語、舞台用語を多めに解説してくださいます。
過去の子供歌舞伎の映像も見せていただきつつ。
初めて聞く用語もたくさんあり、それらをメモしつつ、地歌舞伎について知り深めていくみなさん。
普段から俳句をされている参加者さんからは「句材が多すぎて何を使おうかしら」と嬉しい悲鳴も聞こえました。
村国座内を自由に見て回って、俳句をつくる
まだまだ聞いていたいお話ですが、早く作句に取り掛からないと句会まで到達できないので、名残惜しいですがこの辺りで…と、自由散策&作句の時間に入ります。
学芸員の阪野さんから、「足腰に自信がある方は、とても急な階段を降りることになりますが、奈落へご案内します」と。
多くの方が手を挙げ、階段を降りていきます。
舞台や花道の床下のスペース「奈落」。
昔ながらの手押しの廻り舞台も実際に見せていただきつつ、どう使われているかの解説、そしてこの建物を保存するためにどんな改修をしてきたかなど、普段はなかなか入れない場所で貴重なお話をしていただきました。
見たこと、感じたことをメモに取りながら、それぞれ俳句を考えます。
当日、みなさんには「五音の俳句歳時記」をお配りしました。
その中から季語を選んで取り合わせの俳句に挑戦してくださる方もいました。
村国座内を巡ったり、学芸員さんのお話をお聞きする時間も含め、作句時間は30分弱というとても限られた時間でしたが、メモを持って村国座の外へ出て、句材を拾ってくる人たちもいました。
短冊で出句、選句に挑戦します
投句は最大2句。
一句だけでもOKですよとアナウンスしましたが、ほんの20〜30分の作句時間にもかかわらず、たくさんの人が投句してくださいました。
選句一覧表が出揃うまで、紗希さんによるレクチャー。
句会の流れや、俳句の読み方、鑑賞のコツなどについてお話ししていただきます。
選句一覧表が揃ったら、いよいよ選句。
2句投句で、4句選(うち一句特選)です。
披講を終えて、いよいよ合評会へ
選句が出揃ったところで、運営側で披講(みなさんの選を読み上げる)。
そして合評会へと入ります。
冒頭に紗希さんからは「あんなに短い時間だったのに、いい句がたくさん出てきてとても迷いました」とコメントが。
高得点句から順に、選んだ方に選んだ理由を少しお話ししていただきつつ、進んでいきます。
句を取り上げ、その句を選んだ方のコメント、そして紗希さんからのコメントや解説のあと、「この素敵な句の作者はどなたですか?」と問いかけられ、会場から手があがります。
みなさんから出していただいた句に多かった季語は、「村芝居」「地歌舞伎」「秋祭」といった、今日の会場ならではの季語のほか、当日は雨上がりだったこともあり「秋湿」を選んだ方も多い印象でした。
また、解説してくださった阪野さんから出てきた用語、一緒に見て回った「奈落」「廻り舞台」「花道」「書割」といった用語や、印象的だった梁などを詠みこんだ俳句も多く、臨場感たっぷりの吟行句会となりました。
限られた時間ではありましたが、紗希さんにはほぼすべての方の句に触れていただきました。
詩を紡ぐような美しい言葉がさらさらと流れるように出てくる紗希さんの解説。聞いているだけで心地よく、そして学びも多く、作品をさらに深く読み解くことができました。
晩秋の季語「村芝居」「地歌舞伎」を肌で感じる、村国座吟行句会。
全部で50句が集まり、とても賑やかで楽しい、そして学びのある吟行句会ワークショップとなりました。
二日間参加してくださったみなさん、講師の神野紗希さん、夢のように楽しい二日間を、本当にありがとうございました。
▷前日9/30の「幻の句に溺れて 十六夜俳句サロン」のレポートはこちらから
▷7/1にvol.1を開催し、10/21にも第二回を開催予定の、こども向けワークショップ「森にもぐって言の葉採集」のレポートはこちらから